btraxが「DESIGN for Innovation 2016」を開催——イノベーションに対するデザインの重要性を徹底討論

本稿は、THE BRIDGE 英語版で翻訳・校正などを担当する “Tex” Pomeroy 氏の寄稿を翻訳したものです。オリジナルはこちら


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左から:John Creson 氏(Principal, DesignStudio San Francisco)、Jason DePerro 氏(Sr. Manager Product Design, Capital One)、Brandon K. Hill 氏(CEO, btrax)
Image credit: btrax

異文化に特化したブランディングとマーケティングを行う btrax は17日、イノベーションでデザインが担う役割を検証するイベント「DESIGN for Innovation 2016」を、東京のマイクロソフト本社で開催した。2004年に Brandon Katayama Hill 氏が設立した btrax はカリフォルニアを拠点とするエージェンシーで、日本・中国・韓国市場でのオペレーションにスコープを絞っている。イベントで Hill 氏らは、サンフランシスコ・ベイエリア、シリコンバレー、北米全域の最新のデザイントレンドについて語った。

午前の部では、イノベーションを生み出すデザインコンセプトや UX デザインを探求するワークショップが、また午後には、ネットワーキングに先立って、さまざまなテーマを網羅したパネルディスカッション形式のセッションが開かれた。デザインに関わるプロフェッショナルや学生だけでなく、(PricewaterHouse のような)会計事務所や(デザイン関連の知的所有権を扱う)法律事務所はもとより、デザインに関連する事業や活動を行うサポーターも顔を揃えた。

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Image credit: “Tex” Pomeroy

THE BRIDGE の読者にとって興味がありそうなのは、「Startups and Design」と「The Design for Stoeies」という2つのトピックのセッションだった。このセッションでは、アメリカとヨーロッパそれぞれにおける、デザインの使われ方について議論された。「Startups and Design」では、Design Studio のプリンシパル John Creson 氏が Airbnb のリブランディングなどの実例を紹介し、CapitalOne のプロダクトデザイン担当シニアマネージャー Jason Deperro 氏は、ユーザエクスペリエンスを追求する観点から、銀行業にとおいてもデザインの重要性が増していることについて触れ、CapitalOne がデザイン強化している事例を紹介した。

Airbnb のリブランディングでは、パッと見でシンプルであり、シリコンバレーのモチーフカラーである青色を避ける結果となった。「belong anywhere(どこにでも所属する——日本語では、「暮らすように旅しよう」と訳されている)」が実現できる、Airbnb ユーザのイメージに基づくものだ。ビジュアルを活用したブランディング戦略は、Airbnb による「Belo」ブランディングの誕生につながった。この新しいロゴは、Airbnb が掲げる人々・場所・愛について投影したものだ。

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Jason DePerro 氏は、「maker」に始まり現在では「banker」となったこれまでのキャリアを振り返った。多くのスタートアップの人が考えるように、ファイナンスは成功するのに重要な課題だからだ。「デザイン力は、どう未来を作るか」というイベントのサブテーマにならい、DePerro 氏は、今日、ユーザを獲得し留めておく上でデザインが果たす役割を、あらゆる組織が検証するようになっていることを指摘した。

その傾向を象徴するかのように、CapitalOne が最近、UX デザイン会社である Adaptive Path を買収したことも特筆すべきだろう。Storymaker の Managing Partner である Bjoern Eichstaedt 氏や、Pinterest のデザイン責任者 Katie Barcelona 氏による「The Design for Stories」のセッションでも示唆があったが、ストーリーにもデザインの重要性は適用される。Eichstaedt 氏はこのセッションで、ヨーロッパから発信される見方を披露した。一言で言えば、うまくデザインされたストーリーとストーリーマーケティングは、クライアントを惹きつけ続けるということだ。

後半のセッションでは、オーストラリア人の起業家で、Moneytree を創業した Paul Chapman 氏が、デザインとデータの役割を強調した。今回のイベントになぞらえデータについて話すなら、フランスの IP SaaS/データベースプロバイダ Questel の Charles Besson 氏(映画監督の Luc Besson 氏とは無関係)が、中国や韓国だけでなく日本にも顧客を増やしたいと考えていたことを述べておきたい。Questel のデザインデータベースは、この分野では最も情報が包括されており、自社のデザイン資産が十分かつ有効に活用されているかどうかを確かめたい企業には重要な存在だ。

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左から:伊藤英太郎氏(日立製作所 研究開発本部 東京社会イノベーション協創センタ リーダ主任デザイナー)、目黒友佳氏(NEC 事業イノベーション戦略本部 ビジネスモデルイノベーション室主任)、モデレータ:多田亮彦氏(btrax Japan ジェネラルマネージャー)
Image credit: btrax

今回のイベントでは、インフォバーンやマイクロソフトといった多国籍 ICT 企業に加え、電通、日立、NEC など大手日本企業からも登壇者が迎えられ、海外のみならず、大阪や京都はもとより、沖縄や北海道といった遠方からも参加者を集め、最高潮で幕を閉じた。(オリンピックやパラリンピックのロゴがようやく最近になって決まった)東京が2020年のランドマークとなる年を迎えるのを前に、デザイン業界が未来に目を向けるようになっているのは自然の流れと言えるかもしれない。

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Image credit: “Tex” Pomeroy

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