セッション時間は10〜20分、雑誌感覚で楽しめる占いアプリ「Rint」に聞く女性向けサービスを作る極意

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Rintのチームのみなさん
Rintのチームのみなさん(下の段:一番左が野村さん、中央が角方さん)

セッション時間は10〜20分、雑誌感覚で楽しむ占い

4月頭にリリースされた、3,000以上の占いが使い放題のサブスクリプション型占いサービス「Rint」。まだリリースから間もないものの、セッションの平均時間は10分〜20分と長く、雑誌を読む感覚で占いが楽しまれていることを物語っています。また、その日の運勢を教えてくれる「日運」のプッシュ通知を全ユーザの90%が受け取るなど、早くも高いエンゲージメントが見られます。

運営会社のザッパラスといえば、2015年5月に別の占いアプリ「Chapli」をリリースしています。Chapliは、プロの占い師さんと10分間のチャットでやり取りできるサービス。占いというコンテンツ以外に2つのアプリに共通するのが、明るい色を用いたポップなデザインです。寒色系が多い従来の占いサービスとは一線を画す親しみやすいデザインが、サービスの人気に貢献しています。

「女性にとって占いをもっと身近にする」という思いで立ち上げられたというRint。今回は、そのデザインについて、ザッパラスの執行役員でRintのプロジェクトオーナーでもある野村亮介さんと、デザイナーの角方えりさんにお話を伺いました。

まずは Lean Canvas で意識合わせ

Rintのビジョンは、「自分なりの人生の幸せを見つけられるヒントや方法を提案し続けたい」というもの。このビジョンをベースにしたデザインプロセスとして、まず、チーム全員でサービスの目的やビジネスモデルなどを明確にする「Lean Canvas」を書き出しました。他にも、年齢や職業などターゲットをより具体化したペルソナの設定や 「Value Proposition Canvas」などを作成します。

さまざまなプロジェクトシートの作成を通して、ユーザに与えたい顧客体験やサービスの成長仮説、また強み弱みなどを検討し、チーム内でのプロダクトの理解を深めていきました。その後、ユーザーストーリーを作成し、さらに具体的な機能やデザインに落とし込みます。使用感は、「Prott」を使ったプロトタイプで確認する流れ。

「Rint の プロトタイプFIXまでには、2ヶ月ほどを要しました。実際には開発しながら臨機応変に最適な形を追求していきますが、開発途中でつまずいたり迷ったりした際には、必ずLean Canvasや設定したペルソナに立ち返ります。そうすることで、目指すビジョンからブレないサービスが出来上がると思っています」(野村亮介さん)

占いを身近に

占いをカジュアルに楽しんでもらうため、Rintのデザインはいくつかのことを意識して作られています。それは、「無尽蔵感と連続性」「軽快さ、明快さ」、そして「没入感」です。

無尽蔵感と連続性

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数千を超える占いメニューを扱うRint。これらの占いをUIの縦横移動だけで次々に見ることができるため、アプリを少し使うだけでメニューの豊富さが伝わります。また、気になったジャンルの占いを次々に試せる連続性がユーザを飽きさせず、占いを雑誌のように楽しむことに繋がっています。

「女性は、ケーキ屋さんに色々なケーキが並んでいるのを見てかわいい!と思ったり嬉しくなったりすると思います。Rintでも、このバラエティがある感じを最初に見せてあげることを大切にしています。またイメージ画像にも力を入れることで、ずらっと並んだメニューから好きな占いを直感的に選ぶことができます」(角方えりさん)

軽快さ、明快さ

ビタミンカラーを採用
ビタミンカラーを採用

一般的な占い系サービスでは、紫や青などの寒色系の色が多くなってしまいがち。ただ、この場合、占った結果が良くないといっそう気分が落ち込んでしまうことも。占いを使うことで明るい気持ちになってもらうため、Rintではイエローなど元気が出るような「ビタミンカラー」を採用。女性ファッション誌のような明るさを出しつつも、占い結果の説得性を保つためにポップになり過ぎない色味を活用しています。

「没入感」で体験をパーソナルに

没入感の例
没入感の例

女性にとって、占いは悩みや将来について知りたいことがある時に頼る、とてもパーソナルなものです。アプリの没入感を高めることで、そこが自分のための空間であることを認識してもらう工夫が大切です。例えば、占い結果には必ずユーザー名を表示しています。その占い結果が、「あなた」に向けたものであることを強調するためです。

また、Rintはユーザが占いを能動的に探すだけに留まりません。独自のアルゴリズムを用いて、ユーザ一人ひとりに最適化された占いを提案しているのです。具体的には、前日のデータを次の日の占いに反映することで、ユーザのその時々の気分や状況に合ったタイムリーな占いを見せています。

「普段使っている占いのメニューを見ていると、特定のユーザに彼氏がいるのかどうかの検討がつきます。また、仕事関連の占いが多くなっている時は、きっと仕事で何か悩みがあるんだろうなという予測がつきます。こうして、一人ひとりの心に響く「one to one」の占いの提案を心がけています。」(野村亮介さん)

女性向けサービスのデザインで心がけたい3つのこと

Rint-iphone Rint-iPhone-2

他にもRintでは、フォントスタイルや行間など細かい部分にもこだわることで全体的に柔らかい印象を与える工夫をしているとのこと。そんなザッパラスが考える「女性向けサービスをデザインする際に大切にしたいこと」について、角方えりさんに教えてもらいました。

1. 親近感を出すこと

可能な限り、無機質なアプリにならないように注意すること。文言一つ一つに気を配ることも当然ながら、「あなたは」といった形ではなく「◯◯さんは」といったユーザー一人ひとりに向けたメッセージであることが伝わるように。

2. ビュッフェスタイル

女性はモノがたくさん集まった状態を見ると、ワクワクしたり、かわいく思えたりする。コンテンツを見せる時には網羅的に広げて見せてあげるほうが良い。ケーキが並んでいる様子を見て気分が上がるといった女性ならではの感覚に着目し、それに応えてあげること。

3. 「かわいい」の共通理解

「かわいい」という感覚をどう捉えるかを言語化することは難しい。だからこそ、チームにおける共通理解が必要不可欠。Rintの場合、チーム全員でPinterestのボードを活用。各自がどんな雰囲気を「かわいい」と定義しているかを理解し合うために役立てた。共通理解が前提にあることが、デザインや開発のスムーズな進行に繋がる。

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従来の占いの概念を覆すコンセプトを持つRint。何かを占うとなると、ちょっぴり構えてしまうようなところがある気がしますが、雑誌感覚でさまざまな占いを楽しめるRintがそれを変えてくれるかもしれません。Rintの今後の成長が楽しみです。

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