3500人を集めた #SlushAsia16 ーー300人の学生たちが生み出したアジア・スタートアップエコシステムの「芽生え」

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作るところから全部学生で本当にやりたかった。学生だから出来ない、そう言わせたくなかったーー

2016年5月13日から2日間に渡って開催されているフィンランド発祥の国際的スタートアップ・カンファレンス「SLUSH」のアジア開催版「SLUSH ASIA」は大盛況となった。最終的な主催発表はまだだが、関係者の話によれば2日間でのべ3500人以上が会場にやってきたそうだ。

多彩なスピーカー陣、目を引く新しいプロダクト、華やかなスタートアップ・ピッチステージ。

これらももちろん素晴らしいプログラムだったが、それよりも私が注目していたのは「このイベントを誰がやったのか」という点だった。

その結果はいい意味で予想を裏切るものだった。

学生によるスタートアップ・ムーブメントの芽生え

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「フィンランドに留学している時にSLUSHに参加したんです。ミーティングエリアの手伝いをしていた時に声をかけてくれたのがアンティ(ソンニネン氏、SLUSH ASIA CEO)でした」(田口さん)。

こう振り返ってくれたのは田口佳之さん。大手人材会社に就職を控えた彼は、昨年からこのSLUSH ASIAのプロジェクトに参加してきた。

SLUSHは最初から学生主体のイベントだったと聞いている。フィンランドの学生が作ったコミュニティ「スタートアップ・サウナ」が1年の総まとめのようなイベントを開催したのが始まりなのだそうだ。

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スタートアップ・サウナはアクセラレーション・プログラムを運営しており、運営に関わる学生はイベントの調整などで各国企業のトップと触れる機会が多くなり、自然と起業へと結びつくようになる。

初回に200名ほどだった参加者は7年で1万5000人を集めるまでになり、参加者も企業トップやスタートアップのみならず、フィンランド首相や各国の首脳陣など幅広い交流の場に成長した。

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「これを支えるのが1500人の学生ボランティアなんです。代表も学生で、卒業すると同時に起業したりします。彼らを応援しているのもスピーカーとして登壇している起業家の方々で、こうやってエコシステムが出来上がっているんです」(田口さん)。

例えばごみステーションにセンサーをつけてゴミの収集を効率化するEnevoはこのSLUSH・コミュニティ出身なのだそうだ。昨年には1580万ドルの大型調達に成功している。

Image Credit : SLUSH Web Site
Image Credit : SLUSH Web Site / Enevo

SLUSH本体がこういう成り立ちで始まった一方で、SLUSH ASIAは少し様子が違う。田口さん自身も「(2015年の初回は)学生主体って言ってましたが、やはりそこは際どかった」と漏らしていたように、学生たちが活躍したのはどちらかというとイベント当日だった。立ち上げ作業はいわゆる「大人たち」の手によらざるをえない状況が多かったように思う。

今年は学生たちが本当に生き生きと活躍しているのだろうか?

ーーこの私の「もやもや」は会場で綺麗に晴れることとなる。

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関係者に話を聞いたところ、今回参加した学生ボランティアの数は300名ほどだそうだ。中心になっているグループは大きく2組ほどあり、装飾から協賛広告の交渉まで全てを取り仕切った。支援してくれる大人たちを集める過程で人数はどんどん増えていった。

「本当に?」という人も多いし、確かに彼らも全く後ろ盾がないわけではなく、例えばスタートアップ・スタジオを運営するMistletoeが運営チームに場所を無償で提供したり、困った時に助言するなどのサポートはあったという。

1番大きな課題となる資金についてもSLUSH本体がサポートしたという話も聞いている。

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でもやはり、話を統合すると学生が本当に頑張ったのだと思う。同時に日本でも若い力が集まってこういうムーブメントを生み出せるのだと改めて感心した。こういう動きは2000年の頃にあった国内テクノロジー系・学生起業の原点とも言える渋谷ビットバレー に通じるものがあるかもしれない。

あのムーブメントから始まった企業や起業家たちが今、どうなっているかご存知の方も多いだろう。会場で出会ったとある投資家は彼らの今後についてこんな考えを持ってると教えてくれた。

「学生の起業コミュニティはやはり最終的にスタートアップしなければ徐々に衰退してしまうと思っています。こういう場所で彼らと出会い、どんどん起業してもらいたいと思ってます」。

次稿ではイベントで注目したプロダクトについてまとめをお送りしよう。

 

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