両親の不安を取り除くーーLINEやテレビ電話などで小児科医に気軽に遠隔相談できる「小児科オンライン」

by Yukari Mitsuhashi Yukari Mitsuhashi on 2016.5.30

海外では、数年前からスマホを使った遠隔相談や遠隔診療のサービスが登場しています。医療全般を扱う「HealthTap」や「First Opinion」、また皮膚科に特化した「First Derm」など、チャットや写真を使って医者とやり取りすることで、不必要に病院に出向く手間を防いでくれます。目の前の不安をすぐに解消したい人、近隣に病院がない人など、さまざまなニーズに応えているようです。

小児科に特化した遠隔相談「小児科オンライン」

Shounika-online

そんな遠隔相談を、日本で小児科に特化して提供するのが「小児科オンライン」です。数ヶ月間のβ運用期間を経て本日正式にサービスを開始しました。病院が閉まってしまう平日の夜18〜22時の間、両親は子どもに関する質問や悩みをLINEや電話、Skypeなどで小児科医に気軽に相談できます。初月の利用料は無料で、2ヶ月目以降は月額980円で何度でも利用することが可能です。

一回の相談時間は15分。同日や即日予約にも対応した事前予約制で、先生の時間をしっかり確保。現在は、予約の大半を当日または前日予約が占めているそう。今はまだ先生の人数に限りがあるため指名はできませんが、予約確定メールに担当医の紹介ページへのリンクがあります。また、都度の相談内容を電子カルテに記録していくことで、先生陣による継続的なサポートを可能にしています。

相談する際に使うツールで人気なのは、全体の約6割が使うLINEです。LINE、Facebookメッセンジャーなどの「テキストチャット」が相談の約半数を占め、残り30%が電話、20%がSkypeやLINEを含むテレビ電話です。あらゆるツールに対応することで、例えば、子どもの胸の呼吸状態を診て欲しいという時はテレビ電話を使い、アレルギーの質問はテキストチャットで行うなど状況に応じて使い分けることができます。

100件ほどの相談が集まったというβ運用期間中に実施した利用者へのアンケートには、全体の85%が回答。そのうち98%が、「また診てもらいたい」と回答しました。「病院に行ったのと同じくらいのレベルの話が聞くことができた」と両親の高い満足度が確認されています。

両親の不安を取り除き、寄り添うサービス

小児科オンラインは、限られた相談時間を最大限有効に使えるようにと、事前の問診段階で両親に必要事項をネット入力してもらう仕組みです。例えば、発熱の場合は、「発熱して何日目ですか?」「水分はとれていますか?」など症状に応じてポイントを絞って事前にヒヤリング。こうすることで、貴重な時間内にすぐに本題に入ることができます。

大人の場合、風邪を引いた程度なら、病院にすぐに行くべきなのか様子見でいいのかの判断がつくもの。でも、子どもが熱を出しているとなると、子ども自身がうまく言葉にして説明できないため、自分のこと以上に不安が伴います。小児科医の役割の一つが、「両親の不安を取り除いてあげる」こと。小児科オンラインなら、わざわざ病院に出向くことなくそれを提供することができます。

小児科オンラインに集まる相談内容は、「赤ちゃんが離乳食を食べてくれない」といった育児の悩みから救急相談まで多岐に渡ります。あくまで遠隔「相談」であって遠隔診療ではないため、診断書を書いたり、お薬を出したりといった一般的な診察行為は行いません。どちらかといえば健康相談に近く、小児科へのアクセスがなくて困っていたり、普段から抱えている悩みへのセカンドピニオン的に活用したりされています。

また、病院がやっていない18時〜22時までの間、小児科オンラインが「今すぐ病院に行くべきなのか」という緊急性の判断を下してくれることも両親にとっては心強い味方です。ただ、実際そこまで緊急性が高いことは稀で、β運用期間中に関しては「今すぐにでも病院に行くべき」というケースは100人中 数名に留まりました。

ミッションに共感して参加する小児科の専門家たち

小児科オンラインを運営するKids Publicの代表 橋下直也さん
小児科オンラインを運営するKids Publicの代表 橋下直也さん

現在は、11名の小児科医が参加する小児科オンライン。小児科を専門としていること、また小児科医として3年目以上であることが条件です。創業者である橋本直也さん自身にも、小児科医として8年の経験が。小児科医たちは、日中は病院で診療をしながら、夕方から夜の時間帯だけ自宅で相談を受けています。育児中の女医さんなどにとっては、小児科オンラインが新しい働き方の提案にもなっています。

長年、小児科の現場にある課題を解決したいと立ち上がった橋本さん。病院が閉まった17時以降、子どもの救急外来は非常に混雑します。ところが、病院に訪れる8割が、急いで病院に来る必要がない子どもたちなのだと言います。核家族が進み、周囲に気軽に相談できる祖父母の存在がなく、またインターネットを見れば見るほど不安が煽られてしまうため、両親は病院に頼るしかない現状があります。

「夜遅くに子どもを病院に連れてくることは、親御さんにとっても負担ですし、また本当に診察や治療を必要とする重い病気に苦しむ子どもに時間を割くことができないという問題にも繋がっています。小児科オンラインでは、自宅にいながらにして少しでも親御さんの不安に寄り添うことができるのではないかと考えています」

橋本さんは、現在もベンチャーを経営しながら、週2日間は外来非常勤として現場で活躍しています。結果として起業という形を選びましたが、これまで起業を考えたことはなかったと言います。

「医師として働いてきたので、ビジネスへのイメージは全くありませんでした。しかし、ある出会いをきっかけに社会的意義を理由に起業する人がいることを知りました。医療や研究は人の命が関わるため慎重にならざるを得ませんが、ビジネスの現場に見られるフットワークの軽さや仮説検証を活かすことで、そもそも「子どもが病院に行かなくて済む」という僕が目指す社会を作れるのではないかと考えました」

利用者が無料で使えるサービスを

日本で毎年100万人生まれると言われる子どもたち。小児科オンラインは、子どもがいるすべての家庭で当たり前に使われるサービスを目指しています。現在は月額980円の利用料がかかりますが、将来的にはこれを無償で提供したいと話す橋本さん。まずは実績をつくることで、自治体などと協力し、無償提供を実現できるのではないかと考えています。

「日本は、小さいお子さんの医療費が無料のところが多いです。そのため、何かあるとすぐにクリニックに行く文化が形成されています。同様に、クリニックに行く前段階のステップとして小児科オンラインを社会に認めてもらいたいと思っています。まだハードルを感じる親御さんが多いテレビ電話の利便性をうまく伝え、またサービスとしての信用を高めていきます」

リアルな病院との連携も構想しているとのこと。小児科オンラインで活用する電子カルテを共有し、お互いに補完しあうようなことが可能かもしれません。また、例えば、アメリカでは、医師と患者が一度も対面することなく遠隔地から薬を処方することができるのだそうです。まずは、小児科オンラインが遠隔相談の形で実績をつくることで、日本でも同様の処置を実現する規制緩和が進むかもしれません。

「熱冷ましやアトピーの軟膏など、子どもの慢性的な病気に対してだけでも遠隔地から薬が処方できれば、病院と親御さん双方の負担がだいぶ軽減されます。当事者としてデータを出しながら前例をつくることで規制緩和の促進に貢献して、小児科オンラインのサービスの質を向上させていきたいです」

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