世界各国のECサイトが導入、身近なものとサイズ比較できるビジュアルソリューション「Tangiblee」

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Tangiblee-website
サイズ比較のビジュアルソリューション「Tangiblee」

【この記事の目次】

年々普及を見せるオンラインショッピングですが、相変わらずサイズ感がわからないことから購入時には不安がつきまといます。ここ数年でフィッティングのソリューションも登場していますが、自分で手持ちの服のサイズを測って登録する必要があったり、大雑把なサイズ比較しかできなかったり、その多くにはまだ改善の余地が残されています。

そんな中、シカゴとイスラエルの2拠点で運営されるのが「Tangiblee」です。Tangibleeは、サイズ比較のビジュアルソリューション。他のモノと比較することで、アイテムの相対的な大きさを視覚的に教えてくれます。自分の身体に対するバッグの大きさはもちろん、例えば、バッグに雑誌「ELLE」やMacBookが入るのかなどをドラッグするだけで把握できます。

ラグジュアリーウォッチの「Ashford」やインド大手コマースの「Titan」、アパレルブランドの「Rebecca Minkoff」など世界中のブランドがそのECサイトに導入しています。もともとイスラエルで立ち上げられたTangiblee。2014年5月にアクセラレーター「Techstars」のサマークラスに参加するために渡米し、そのままシカゴに拠点を構えました。Tangiblee 創業者の Eliad Inbar さんにお話を伺いました。

言語の壁がない視覚的なソリューション

聞き手の三橋
Tangiblee を導入しているサイトを試してみました。何かモノと比較することで視覚的にサイズが把握できるのはすごくわかりやすいですね。
Eliad
そうですね。視覚的なソリューションなので言語の壁がなく、オーストラリア・インド・シンガポール・イギリス・米国など導入クライアントは世界中にいます。
聞き手の三橋
なるほど。では、ローカライズも少なく済むのでしょうか。
Eliad
Tangibleは、身近なモノとサイズ比較することができます。ですから、例えば、インドのECサイトに導入するならインド人が知っているペットボトルや雑誌を使うなどの細かいローカライズを行います。サイズ比較を紙幣と行う場合は、もちろん現地の紙幣と比較できる必要があります。
聞き手の三橋
たしかに日本のサイトなら海外の雑誌ではなく日本の雑誌で比較したいですね。Tangibleeのポートフォリオを見る限り、ファッション系ECへの導入が多いようです。アイテムのカテゴリーという意味で、特にフォーカスしている分野はありますか?
Eliad
将来的にはあらゆるアイテムに対応する予定ですが、現在は洋服・サングラス・靴以外のものにフォーカスしています。クライアントには、時計、アクセサリーといったファッション小物を扱うところから、インテリア家具を扱うECサイトまで幅広いです。ECサイトにとっては、Tangibleeというサイズソリューションを導入することがユーザー体験の差別化に繋がります。
聞き手の三橋
たしかにそうですね。

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導入はスニペットを追加するだけ

聞き手の三橋
TangibleeをECサイトに導入するプロセスを教えてください。
Eliad
自社ECサイトにスニペットを追加するだけです。現在ではタグマネージャー(Webサイトにサードパーティのサービスを追加・削除するために使うサービス)を使う企業も多いため、標準的なタグマネージャーは全てサポートしています。クライアントの開発リソースを極力使わないように設計しています。タグさえ追加してもらえれば、あとは私たちが対応します。
聞き手の三橋
その他に、導入企業にとってTangibleeが他のサイズ比較ソリューションと大きく違う点はありますか?
Eliad
アイテムの大きさを基準にしたサービスなので、1日に何千というアイテムを追加できます。小売店が既に持っているサイズのデータを使いますし、アイテムをTangibleeのために再度撮影する必要もありません。データを特定のフォーマットにして出す必要すらありません。
聞き手の三橋
具体的には、データをECサイトからクロールしたりしてくるのでしょうか?
Eliad
その通りです。ブランドのECサイトの構造を理解した上でそこをクロールします。洗練されたアルゴリズムを使うことで、欲しいデータがある適切なページから適切な画像や情報をとってきます。全自動です。この部分の効率を実現するために裏側のテクノロジーを開発しているため、処理できる量が多いのです。

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訪問者あたりの売り上げが10.3%UP

TangibleeのWebサイトより
TangibleeのWebサイトより
聞き手の三橋
やっぱり気になるのが、Tangibleeを導入する効果です。
Eliad
その点については、最近のものだと2016年3月末に「Shop Direct」がブログ記事にまとめています。
聞き手の三橋
Shop Directは、イギリスでも最大手のオンライン小売業者ですね。A/Bテストですか?
Eliad
はい。同社が運営する複数のECサイトで、複数の商品ジャンルにまたがって実験を行いました。Tangibleeを使うことができたのはモバイルユーザの半数で、残り半数は使えない状態でした。その結果、Tangibleeを使った場合、訪問者あたりの売り上げが最大10.3%上昇しました。訪問者あたりの購入コンバージョンも7.2%上がりました。
聞き手の三橋
ちなみに、Tangibleeが使えるモバイルサイトを訪問した人のうち、どれだけがサイズ比較をしましたか?
Eliad
ツールがあることに気がついたユーザの17.1%が実際にそれを使い、平均すると28.6秒間ツールを使ったことがわかりました。Tangibleeを導入することの効果がわかった今、Shop Directでは次に時計とジュエリーの商品ジャンルへの拡大を予定しています。
聞き手の三橋
導入効果を測りながら段階的に導入していけるのは企業にとっても良いですね。
Eliad
返品率が4.4%下がるなど、その他の導入サイトでも同様の結果が出ています。

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チュートリアルが不要なツール

聞き手の三橋
数字で結果を出すためには、ツールの利用体験が優れている必要があると思います。Tangibleeを実際にいじってみて感じたのは、無駄な要素がなくて、初めて使う人でも迷うことなく使えそうだなということです。これってすごく大事なことですよね。
Eliad
ですね。Tangibleeでは、最初にツールを使うユーザに対してもチュートリアルを見せません。プロダクトの取扱説明書を読んだり、何かの使い方のチュートリアルを見ることに時間を使いたい人なんていませんから。学んでしか使えないツールではいけないと思っています。
聞き手の三橋
具体的に、Tangibleeではどんな点に気をつけていますか?
Eliad
Tangibleeのオンボーディング(新規ユーザーにサービスの価値を伝えて適用させるプロセス)は、2秒以内を目指しています。
聞き手の三橋
2秒とはまた最速ですね。
Eliad
実際にそれが実現できているかは、ユーザーテストを実施して、ユーザがツールを使う様子を録画したりしています。例えば、ユーザがどれだけ早くボタンを押しているか、どれくらいで離脱しているかをみれば、オンボーディングのユーザー体験の良し悪しを測ることができます。
聞き手の三橋
なかなか新しいツールを使う時って迷ってしまうものだと思うんですが、迷っているユーザに対してはどんな風にヒントを出してあげていますか?
Eliad
言葉で説明したり、長い動画を見せたりするのではなく、カーソルやホバリング、時には簡単なアニメーションを見せるなど、些細で邪魔にならないキューを使っています。オンボーディングがスムーズに行く時、ユーザには自分がオンボーディングしているという感覚すらありません。それを目指しています。
聞き手の三橋
Tangibleeは、ユーザ側の労力が最小限に留められている印象がありますね。例えば、バッグを持たせようとすると、手の付近にドラッグして落とすだけで手元にきちんとバッグが吸い寄せられるようになっていますよね。すごく細かい要素ですが、こういう些細なことで優れたユーザー体験が生まれると思います。
Eliad
僕たちもそう思っています。また、Tangibleeを導入するサイトを2回目以降訪問すると履歴もあるので、過去にサイズ比較をしたものの一覧から簡単に見ることができます。

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賭けてみたいと思えるアイディアが見つかるか

聞き手の三橋
Tangibleeがどのように生まれたのかを聞かせてください。
Eliad
僕は、妻の誕生日にイヤリングを買ってあげようと思っていました。それをオンラインで購入したんですが、届いたものは思ったよりもずっと大きいものでした。
聞き手の三橋
あるあるですね。
Eliad
届いたのが誕生日の前日だったので、結局、僕は店舗に行って買い物をすることになりました。その時に思ったんです。僕がイヤリングを購入したECサイトはこれで僕という顧客を失いました。商品について、彼らがもう少し上手くコミュニケーションできていれば大きなチャンスになるのに、と。
聞き手の三橋
そうですね。その一度限りではなく、将来的にもサイズ感の不安が付きまとってしまいますよね。
Eliad
サイズ比較は洋服や小物だけでなく、例えば、家具などにも当てはめることのできる、バーチカルに広げられる分野だなと思いました。それまでは受託開発会社を経営していましたが、ここで初めて自社サービスを開発することにしました。
聞き手の三橋
不快だったり不便な思いをすると、その体験のインパクトが大きいので印象には残ります。でも、だからといって、その解決策を自ら作ろうとする人は一部です。当時、Eliadさんは事業のアイディアを探していたんでしょうか?
Eliad
アイディアは、いつでも探してています。みんな、そうじゃないでしょうか。アイディア自体はいくらでもあります。難しいのは、「よし、これだ!これに賭けてみよう」と思えるアイディアを見つけることです。そのアイディアに賭けたいと思えるだけの繋がりが感じられるかどうかです。
聞き手の三橋
なるほど。

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人が絶対に解決したい課題を見つけられるか

聞き手の三橋
最初はイスラエルで立ち上げたんですよね?
Eliad
そうです。Tangibleeを母国で立ち上げた後に、Techstarsのサマープログラムに参加するためにシカゴに来ました。
聞き手の三橋
Techstarsはどうでしたか?
Eliad
プログラムに参加したことは、これまでの僕たちの意思決定の中でも最高のものだったと思っています。素晴らしいプログラムです。プロダクトをどう売るのか、どうマーケティングするのか、資金調達をどう行うのか、アイディアをどう商品化するのかについて多くを学びました。素晴らしい人的ネットワークを築くことができたので、シカゴに拠点を構えることにしたんです。
聞き手の三橋
シカゴとテルアビブのオフィスでは、何がどう違うのですか?
Eliad
現在、僕の創業パートナーはテルアビブに戻って開発チームを指揮しています。僕はシカゴで営業やマーケティング、ビジネス開発を担当しています。ロシア・ユクレーン・ベロルースなど20人弱の遠隔なチームです。
聞き手の三橋
Eliadさんは、15年間開発畑にいらしたと聞きました。でも、Tangibleeを機に営業に転換されたんですね。
Eliad
そうですね。僕のコムフォートゾーン(居心地が良い場所)は、テクノロジーの分野でした。でも、営業をしてクライアント企業とコミュニケーションをしてわかったのは、世間は誰も僕たちのテクノロジーのことなど気にしてないということです。彼らが関心を持っているのは、自分たちが抱える解決しなければいけない課題です。どんなテクノロジーを使うかは二の次で、まずは人が絶対解決したいと考えている課題を見つけることが先決です。課題ありきなのです。

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Tangibleeの今後の取り組み

聞き手の三橋
さまざまな企業への導入が順調に進んでいますが、Tangibleeの今後の予定について聞かせてください。
Eliad
僕たちは常にR&Dに力を入れています。その一つが、Tangibleeにとって優良顧客のひとつの「Living Spaces」と共に取り組む新機能「Room View」です。
聞き手の三橋
Living SpacesはアメリカでもよくCMを見ますが、家具のオンラインストアですね。
Eliad
Room Viewで、Tangibleeのサイズ比較のソリューションを生活空間に持ち込みます。現在、Living Spacesの半数のユーザを対象に試験運用中です。自分の部屋のサイズを設定したら、ソファ・フロアランプ・カーペットといった家具を選んだり動かしたりして、自分の生活空間をオンラインに再現できます。
聞き手の三橋
たしかに大きな買い物ですし、入らないと悲惨ですから家具の購入は一番慎重になりますね。メジャーを取り出して寸法を測ったことが何度もあります。
Eliad
アメリカでは送料が無料の家具のオンラインストアなども登場していますし、これからは家具もオンラインで購入する時代です。特定のサイトには既に同様のことを目指すツールが存在しますが、残念ながら誰も使っていません。だって、そのツールを使うために30分も試行錯誤したくないですから。
聞き手の三橋
Tangibleeのツールなら、すごく簡単に自分の部屋を再現できて、いろんなアイテムを置いてみることで部屋の雰囲気まで知ることができるんですね。このソファをここに置いた場合に、このサイドテーブルは入るのかとか、一目でわかっていいです。Tangibleeに日本進出の予定はありますか?
Eliad
日本市場には注目しています。特に家具などは、そもそも土地が少ないことから生活空間が小さいため、ニーズもあるのではないかと思っています。文化的な違いなど乗り越えなければいけないハードルはあると思いますが、将来的にはぜひ日本に進出したいです。
聞き手の三橋
今日は興味深いお話をどうもありがとうございました。今後も応援しています。
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