個人だけが楽しそうなコンテンツは嫉妬の対象になって見られないーー。
各種ソーシャルメディア・プラットフォームが成長し、テレビの独占物だった動画がインターネットの世界にやってきた今、メディアはいかにして読者の心を掴み、ブランドはどうやってコミュニケーションを構築すべきなのだろうか。
特に中高生などのスマホネイティヴ世代の動向は年代の違う「オジサン」がいくら頭をひねっても理解は難しい。
この難題に対し、アジア初上陸となったAdvertising Weekの壇上で語られた内容は大変具体的で役立つものが多かった。ご紹介したい。
C Channelは開始約1年で動画再生数1億2000万回まで成長
壇上に上がったのは女性向けのスマホメディア「C Channel」と中高生に絶大な人気を誇る「MixChannel(ミクチャ)」の2社で、スマホに最適化した動画広告を展開するFIVEがこのステージをモデレートした。
まず、各社のステータスとしてC Chennel代表取締役の森川亮氏は、現在の動画再生数が3月に1億回を突破、5月時点で1億2000万回再生に到達する見込みと明かし、年内に5億回再生を目指すとした。
「動画ブログ的なアプローチで開始していち早く縦動画に対応しました。現在は自社制作を強化してメイクやヘア、料理にネイル、占いも始めています」(森川氏)。
またMixChannelのプロデュースを務めるドーナツの福山誠氏もサービスの好調ぶりを強調する。
「MixChannelは動画を見るメディアというより投稿して共有するコミュニティサービスと位置付けてます。ただ撮影できるだけじゃなく、編集までスマホで完結しているのが特徴です。開始2年半で500万ダウンロード、1日3万件の投稿が発生しています」(福山氏)。
ユーザーの間で「ミクチャ」と呼ばれるこのコミュニティには中高生のカップル動画やおもしろ系、踊ってみたなどのコンテンツがずらりと並ぶ。8割が女子というのも他には無い大きな特徴だ。
スマホネイティヴ世代の動画視聴スタイル

さて、両社の紹介はそれぐらいにしておいて、気になるのは読者の反応だ。女性、中高生は動画にどう反応しているのか?森川氏は全般的なネットユーザーの視聴スタイルの変化をこう語る。
「受ける情報の量が多く、例えばニュースもタイトルしか見なかったり、動画も頭と終わりしか見ない。3分クッキングなんていうものもありましたが、今の人は3分も待てない。どんどんせっかちになってる」(森川氏)。
例えば映画なども冒頭を見てその後はずっとスマホをいじってエンディングを確認する。映画を見ることよりも「見た事実」の方が重要な人たちがいるというエピソードは大変興味深かった。
「平均して30秒ぐらいですね。当初1分としてましたが、あんまり見てくれませんでした。40秒ぐらいでテンポよくして明るくすると持続するんですよね」(森川氏)。

また福山氏は冒頭に刺激的な情報を持ってくるいわゆる「出落ち」感があるものが人気と語り、サービス開始当初と比べて渋谷の女子高生たちの動画に対する変化をこのように語っていた。
「面白いものが最初にある方が完全視聴率を見ても高いんです。スキップしちゃう癖がついてるんでしょうね。3年前なんて渋谷の女子高生に聞いても動画なんてカメラロールにほとんどなかったです。けど今では彼女たちの中で動画を作るというのはもう当然になっています。その作り方をシェアしたりフォーマットを発明してるんです」(福山氏)。
中には画像2000枚を張り合わせて動画を作ったら猛者もいるらしい。
スマホ時代の動画コンテンツはどう作る?
今回のセッションで1番面白かったのがこのテーマトークだった。ターゲットユーザーは何を視聴し、何を見ないのか。森川氏はC Channelの視聴者動向をこう振り返る。
「当初グルメレポートや旅行レポートを配信したんですが、なぜか見られなかったんですね。それでユーザーにヒアリングすると自慢をする人が嫌いだと(笑。嫉妬の対象になっちゃってたんでしょうね。個人だけが楽しそうなものより見てる側も役立つ、それでいて楽しいもの。メイクで綺麗になっても『それはあなただから綺麗なの』と思わせてしまってはシェアされない。可愛くても綺麗すぎず共感を生むもの。あと汚いのもダメ(笑」(森川氏)。
MixChannelも同じくこの「共感部分」が重要なキーになっており、自分でも真似できるんじゃないかというラインをうまく広告キャンペーンに取り入れたコンテスト企画が高いパフォーマンスを出しているという。
「ユーザーに広告クリエイティブを作ってもらうんです。商品に関連したダンス動画を作ってもらってシェアしてもらう。自分でも作れるんじゃないか、そういう気持ちで広告も見てもらえるので視聴完了率は普通のキャンペーンに比較して2倍ぐらいになりますね」(福山氏)。
配信プラットフォームが自社ウェブではなく、YouTube、Facebook、InstagramにTwitterと分散化が進む中、各プラットフォームにあった効果的な広告キャンペーンを作るコツは、各メディアのコンテンツを視聴しているユーザーの動き、共感を細かく掘り下げることで見ててくるのかもしれない。
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