前回の記事では「忙しさ」について話しました。私が常日頃何かしながら忙しくしているのは、忙しさのための忙しさを避けるためです。もしEメールリストに登録されたばかりなら、ぜひ最初にこの記事をお読みください。
私は退屈であったり怠けたりするのは、それを受け入れている限り全く問題ないと説明しました。忙しいふりをしても滅多に幸せにはなれません。むしろ消耗したり、果ては鬱になりさえします。
職場で1日に8時間忙しいふりをするのは、実際に仕事をするのよりも消耗するものです。おそらくあなた自身も経験されたことがあるでしょう。大したことは何もしていないのに、1日の仕事終わりに疲れきってしまったことが。
自分を忙しくしていると言いましたが、同時に私はとても怠け者だとも言えます。信じない人もいるかもしれませんが間違いなく私は怠け者です。
思い返してみると学生時代には、学年の終わりに成績のついたレポートを返却されたものです。その1番下には、いつも担任の先生のコメントが1行書かれていました。
どの学年でも、どの先生でも、私へのコメントはいつも同じでした。それはこうです。
「トビアスは優秀な生徒ですが、残念ながらひどく怠け者です。」
当時はそれを自分への批判と受け取っていましたが、後になると実際には褒め言葉だと分かりました。
思い返してみると、私は滅多に自分から宿題をやろうとしませんでした。出来なかったからではなく、やりたくなかったのです。その意味で私は確かに怠け者でした。
私にとってはシンプルだったのです。一旦宿題を出されれば、やるべきタスクはそれを提出することと定まります。どんな方法でやろうが関係ありません。私はこれをチャレンジとみなし、宿題を代わりにやってくれる人をいつも「雇い」ました。先生たちは生徒にありとあらゆる要求をしてきますが、少なくともこれはオートメーション化できました。
私はいつも学校ではトラブルメーカーでした。ドイツではクラスでトラブルを起こすと、先生たちは罰として放課後に「校則」を書き写しさせます。「校則」は10ページにも及ぶので、手書きだと写すのに猛烈に時間がかかります。
ところが、私はいつもバッグに「校則」を少なくとも5部は持ち歩いていました。前もって私のために書いてくれる人を雇ったのです。その当時はあまり見かけなかったコピー機を使って彼らと実験したりもしました。より本物っぽく見せるために、わざと間違いを加えたりインクの染みを付けたり。
何年にもわたって何ダースもの「校則」を先生に手渡してきましたが、私は滅多に自分では書きませんでした。もちろん、先生に手渡すためにいつも2〜3日待ちましたし、より真実らしくするために提出期限を延ばしてくれるように頼むこともありました。
私は「怠惰」が悪いことだと教えられ、そんなものかと思っていたのですが、当時はその恩恵がまだ分かっていなかっただけなのです。
自分のプロジェクトを振り返ってみると、「怠惰」のおかげでより良いアイデアやデザイン、そしてソリューションが浮かんできたと信じています。
「怠惰」はイノベーションの原動力です。時に最も偉大なアイデアやイノヴェイションは、怠け者すぎて普通の仕事ができないような人々から生まれてくるのです。
ただし、この場合の「怠惰」というものは、テレビを見ながらダラダラしたりFacebookを眺めて何もしないことではありません。社会のルールのショートカットを探すことなのです。
「怠惰」を原動力とすることで、最小限の努力や犠牲で生産性を最大限まで高めることができます。
固定電話が不便だったから携帯電話が発明されたわけですし、階段を昇るのが面倒だったのでエレベーターやエスカレーターが発明されたわけです。また、肩に荷を乗せて運ぶのが大変だったので車輪が生まれたとも言えます(荷を運ぶヤギもどうしようもない怠け者だったせいもあるかもしれませんが)。
リモコンが発明されたのも、私たちが毎回毎回チャンネルを変えにテレビまで歩くのを面倒くさがるほど怠け者だったせいです。
救急救命に関わるワクチンや治療薬等を除いたほぼ全てのものが「怠惰」から生まれたと言えるでしょう。
ビル・ゲイツはかつて言いました:
困難な仕事には間違いなく怠け者を選ぶ。なぜなら上手いやり方を心得ているからだ。
「必要は発明の母」と言われてきました。しかし、21世紀では「怠惰は発明の母」と言えるでしょう。
幸い、怠けるのは人間らしさでもあります。私たちみんながそうです。問題は「怠惰」をどう活用するかです。
私は怠け者です。しかし、車輪と自転車を発明したのは、歩いたり物を運ぶのを嫌がった怠け者なのです。
– レフ・ヴァウェンサ(注 日本では「ワレサ大統領」で知られるポーランドの大統領。ノーベル平和賞受賞者。)
ここでお話ししたことを心に留めて、素晴らしい1週間をお過ごしください。怠け者であれ、しかし、忙しくあれ。
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心を込めて
トビアス
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TobiasはSemplice(デザイナーのための新しいポートフォリオ・プラットフォーム)のCo-Founderです。また、NTMYというショーのホストをしています。ー また、かつてSpotifyのデザイン・リードとAIGA New Yorkの重役でもありました。
Translated from original by Ray Yamazaki, with thanks to Medium Japan.
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