東京/シンガポールなどを拠点とするビットコイン・スタートアップの Quoine(コイン)は、ジャフコ(東証:8595)、VC1社、機関投資家らから総額1,600万ドルを調達したことを明らかにした。今回の調達はシリーズBラウンドで、2014年12月に実施した、主にエンジェル投資家から200万ドルを調達したシリーズAラウンドに続くものだ。なお、今回のラウンドに参加した、ジャフコ以外のVCや機関投資家の名前は明らかにされていない。シリーズBラウンドはクローズしておらず、さらに戦略的提携関係を組める機関投資家から、最大で400万ドルを調達する可能性があるとのことだ。

今回の調達は、先月の日本の国会における仮想通貨法案の可決を受け、日本でのビットコイン需要が大幅に高まるとの観測を受けてのものだ。Quoine では、創業当初 CEO を務めていた Mario Gomez-Lozada 氏は CTO となってシステム開発に特化し、CEO にはソフトバンクや三菱商事で事業開発に従事してきた栢森加里矢氏が就任している。栢森氏と Gomez-Lozada 氏は、共に Quoine の創業メンバーだ。また、日本での事業展開を強化するため、当初、シンガポール法人を親会社、日本法人をその子会社としていたストラクチャーを逆転させ、日本法人を親会社、シンガポール法人をその子会社という形に変更している。
仮想通貨のリアルタイム市場ポータル「Coinhills」が公開している、ビットコイン取引所の取扱高ランキング(下図)を見てみると、上位6社は投機熱が冷めやらない中国の取引所によって占められているが、Quoine は7位の座につけている。BtcBox や bitFlyer をしのいで日本のビットコイン取引所として取引高最大であるだけでなく、世界的に見ても既に上位にいることが明らかだ。栢森氏は、日本の FX 取引金額が5,000兆円の規模に達していることをふまえ、将来的にはその10%程度が仮想通貨に置き換わっていくのではないか、と語っている。Quoine の現在のビットコイン取扱高は、1日あたり日本円換算で約50億円程度だが、この規模も今後100倍程度まで成長できる伸びしろがあるのではないか、というのが栢森氏の読みだ。

日本のビットコイン取引所の中では Quoine の知名度が必ずしも高くないのに、仮想通貨取引高で上位にある理由は、同社の B2B2C 的なビジネスの展開手法にあるだろう。既に稼働しているいくつかのビットコイン取引所のバックエンドは Quoine によって提供されているし、今後稼働するビットコイン取引所の運用を Quoine がまるごと OEM で運用代行するケースもあり得る。
日本では、多くのインターネット・サービスプロバイダやオンライン・ポータルなどが株式や FX のオンライントレードを提供しているが、金融システムに求められる堅牢性・安定性の確保やコストの理由から、他の証券会社などからシステムを OEM 供給してもらっているケースは少なくない。ビットコイン取引所の世界においても、今後同じようなことが起こると考えられており、Quoine はその需要を取りにいこうとしている。栢森氏の言葉を借りるなら、「仮想通貨取引所の取引所、いわば、仮想通貨における〝東証〟の存在を目指したい」とのことだ。
Quoine は2014年10月に、インドネシア最大の決済代行サービス会社 INDOMOG と提携し、インドネシアでビットコイン取引所を開設しているほか、アジア各国への進出に乗り出している。今後のビジネスフォーカスもやはり日本とアジアで、アジア各国の仮想通貨取引所や仮想通貨の潜在ユーザを多数抱えるサービスプロバイダなどと提携し、アジア最大の仮想通貨取引所になるべくサービス展開を拡大していくとしている。

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