ソーシャルメディアが発達し、スマホネイティヴと言われる世代が日本でも成長している。総務省の調査では実に20代の約94%がスマートフォンを所有しているそうだ。
この予備軍となるのがティーン世代だ。多くのソーシャルメディア発祥の地となっている米国ではSnapchatやInstagramなど主力以外のメディアも台頭しており、多感な時期特有の「ダサくならない」独特な使い方も編み出されている。
コミュニケーションが便利になる一方、もちろん問題も発生しやすい。わかりやすいのは出会い系サイトなどの安易な利用だろう。見ず知らずの人物に情報を提供することでいらぬ危険を招くこともある。
こういった自由なインターネット特有の課題に「禁止」ではなく、積極的な教育現場での利用で応えようという動きがあった。
ビジネス向けのコミュニケーションツール「Talknote」を運営するトークノートは、聖徳学園中学・高等学校を対象にICT教育推進の一環として同校へのサービス提供を開始した。聖徳学園は、東京私学教育研究所の参加校として「アクティブ・ラーニングを実践するタブレット端末活用授業」の研究を実施している。
この研究では全クラスに電子黒板を設置したり、中学1・2年生全生徒に対してiPadを導入するなど、教育環境のデジタル化、クラウドツールの活用による教育現場の情報化を推進しているという。Talknoteもその一環で導入されている。
具体的な利用方法として、教員間や教員と生徒、生徒同士で発生する情報共有に同社のビジネスSNSが利用される。この内容は他のビジネス利用同様、インターネット上に公開されることはなく、アカウントを持っているユーザーのみが閲覧できるようになる。
同校でICT教育を推進している横濱友一先生によると、現在利用が可能になっている生徒数は200名〜300名ほどが対象で、アクティブに利用している率については具体的な数値はないものの、通知を受ける側にいる横濱先生のスマートフォンが鳴りっぱなしになるような状況なのだそうだ。今後、順次高校の生徒などに利用範囲が拡大していくという。
「学校教育においてSNSは悪だろうとか、好ましく思われていない状況はあります。しかしもう(各種メッセンジャーやソーシャルメディアは)日常のツール化しています。ビジネスでもメールからチャットに移行しているし、ならばきちんと使えるように教育した方がいいんです」(横濱先生)。
例えば先生が日記を配信して生徒がコメントしたりいいねをつけたりする。普段喋らないようなクラスメートともTalknote上ではコミュニケーションを取ったりする生徒もいるそうだ。この情報は全て学校側で閲覧ができるようになっているそうで、いわばネット社会に出る前の教習所のような役割になりつつあるのだろう。(ちなみに、個人のメッセージのやり取りはできないようになっているとのこと)
同校の校長、伊藤正徳氏も敢えてビジネスツールを選ぶことで、彼らが社会に出た後に役立つ取り組みにしたかったと語る。
「これまで日本の教育の現場は外と関わらせないようにしていました。しかしこれからは現場を知ることが重要なのです。ビジネスで使われているツールを若いうちから使うことが将来に役立つと考えています」(伊藤校長)。
なかなか興味深い取り組みである一方、当然ながら彼らはスマホさえ持っていれば、いつでも教習所の外に飛び出すことができる。国内にはティーンに絶大な人気を誇るMixchannelもあるし、FacebookにTwitter、Instagram、LINEといくらでも出てくる。
こういうソーシャルメディアの利用についてはどのように教えているのだろうか?
「特定のソーシャルメディアについて個別に指導することはありません。個人ごとにリテラシーを育めるような方向性で教えていきたいとは考えています。ただ、やはり出会い系に繋がるような場合には指導することもあります」(横濱先生)。
何を持って不適切というかは大変難しい。
この点は今回の発表の論点ではなかったのでこれ以上の質問は避けたが、多感な時代にどのようにインターネットと接するかは、彼らの今後を考える上でも非常に重要な視点だ。
また、今回の導入はトークノートの今後の成長を占う上でも大切なポイントになる。トークノート代表取締役の小池温男氏によれば同社サービスは現在2万2000社が利用しており、継続して成長過程にあるものの、グラフを見ると伸びはやはり若干落ち着きつつあるようにも見える。
小池氏の話では全国に中学校・高校は約1万6000校ほどあるそうで、全てではないものの、聖徳学園のように教育現場をICT化しようという流れがもっと加速すればこれはよい先行例になるかもしれない。
学校教育向けの専門サービスもある中、Talknoteがどこまでここに食い込むのか、今後の経過を興味深く注視してみたい。
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