子どもが嫌がる歯磨きを心待ちにする時間にーー手持ちの歯ブラシで使えるスマホ連携デバイス「シャカシャカぶらし」

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一般的に子どもが2〜3歳になると訪れるという「いやいや期」。その中でも、子どもが最も嫌がる日常的な行為の一つに歯磨きがあると言います。ベネッセによる調査でも、育児の中で保護者が習慣づけに一番苦労するのが歯磨きであることがわかっています。そんな敬遠される歯磨きを楽しい習慣に変えてくれるiPhone/iPad連携デバイス が「シャカシャカぶらし」です( Androidも展開予定)。

両親が子どもの習慣化に手こずる「歯磨き」に着目

シャカシャカはぶらしは、歯ブラシにクリップで挟んで使えるクマさんの形をした直径約4cmの小型デバイス。基本的にどんな形状の歯ブラシにも取り付けられるため、子どもが普段気に入って使っている歯ブラシに取り付けることができます。専用アプリと連動させることで、ゲームをしながら歯磨きをしたり、スタンプをコレクションしたりするなどして歯磨きを楽しくしてくれます。

歯科医師と発達心理学の教授のアドバイスのもとに開発される連動コンテンツ。歯磨きの磨き方の順番や口からバイキンを取り除くための指導などを、わかりやすく視覚的に表現しています。随時アップデートされていくコンテンツ以外にも、子どもの達成がSNSやメールで届くフィードバック機能、プッシュ通知で歯磨きの時間をリマインドする機能などを搭載。また、アプリにリアルタイムに磨き場所(磨き足りてない場所)が表示され、磨きの細かさや頻度、時間を計測してくれます。

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今年の8月に出荷を予定するシャカシャカぶらし。現在は、クラウドファンディングの Makuake で先行予約を受付中。シャカシャカぶらしが1本届くプランを、5,490円(税込)から支援することができます(2016年6月14日の記事執筆時点)。

医療や健康の分野を身近に

歯磨きをゲーム化するようなIoT製品の代表格には、本媒体でも取材したことがあるフランス発の「Kolibree」があります。Kolibreeは自社製造の電動歯ブラシのみに対応する形ですが、シャカシャカぶらしは市販のどんな歯ブラシにも対応しています。

また、シャカシャカぶらしは、加速度センサーやジャイロセンサーなど6軸以上のセンサーを搭載することでより細かくデータを取得。こうして取得したデータは、大学との産学連携によってアルゴリズム研究開発に活かされ、歯磨きの出来を採点する仕組みなどに反映されています。(評価などより詳細な分析も将来的に開発中)

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Temari の代表取締役 歌野真里さん

シャカシャカぶらしを手がけるのは、女性起業家の歌野真理さんが創業したTemariです。歌野さんは人材や旅行関連の仕事に携わっていましたが、次第に自分の一生をかけてやりたい仕事について考えるように。

生きていれば誰でも世話にならざるを得ない医療。冷たく重いイメージがつきまとう医療の分野に、デザイン性や家族とのコミュニケーションといった視点を取り入れることでもっと身近なものにできないかと考えるようになりました。

「私には医療のバックグラウンドがないため、医療の分野にいきなり参入するのは難しいだろうと考えました。医療ではなく広く健康と考えた時に、日々の生活において軽視されがちな歯科の領域にたどり着きました。何を解決すべきかを考えて、課題のある子ども向け歯ブラシに着目しました」。(歌野真理さん)

ハードを開発することの難しさ

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「Engadget電子工作部」のイベントで作成したプロトタイプを持参して「Maker Faire Tokyo」で展示したところ、子どもから大きな反響が集まりました。その後もシャカシャカぶらしを知り合いや甥っ子などに使ってもらう中で、子どもが自分で何度もアプリを立ち上げて歯磨きをする姿が確認されるなど手応えを感じています。その一方で、ハードを作ることの難しさを実感する日々が続きます。

「量産用のハードを作るには、最初から量産を前提に設計ができる、昔から製造を担ってきたような人材が必要です。現状ではまだ3Dプリンターは量産向けではなく、量産の金型代はまだ高額です。また、防水試験から在庫管理までやるべきことが多岐に渡ります。面白さがある一方で、ひとつひとつを丁寧に失敗しない慎重さが大切だと感じます」。(歌野真理さん)

現在、Temariのメンバーは主には歌野さんだけですが、家電製品の量産実績のある製造会社 HOKUTOや、ドコモのキャラクターなどを手がけるキャラクターデザイナーの吉井宏さん、精密なプロダクトデザインを得意とするファクタスデザイン社、バネ作りに特化した五光発社など心強い協力者に支えられています。全く製造の知見がない若い人が新しいことを興そうと奮闘する姿に共感とサポートが集まっています。

「習慣を改善して病気を未然に防ぐような製品を手がけていきたいです。今後は、歯科領域にとどまらず、将来的には幅広い「家庭の中のセンシング」を視野に。例えば、女性向けの製品や、高齢者が家庭や福祉施設で使うような製品なども考えられると思っています」。(歌野真理さん)

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