本稿は、「東京スタートアップ・オフィスツアー」シリーズの一部だ。
今月1日、東京・大手町にグローバルビジネスハブ東京(GBHT)が正式にオープンした。EGG JAPAN、FINOLAB、3×3 Lab Future など多くのコワーキングスペースやイベントスペースがひしめくエリアに、また新たなスタートアップハブがお目見えしたことになる。500 Startups の日本市場向けマイクロファンド「500 Startups Japan」もここ GBHT に拠点を置くことになり、GBHT の売りの一つである公開スペースを活用し、起業家とのオフィスアワーやミートアップなどを頻繁に開催することになるだろう。
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500 Startups Japan が昨年9月にローンチした3,000万ドル規模の第1号ファンドには、ミクシィ、みずほ銀行、Mistletoe、エンジェル投資家の千葉功太郎氏らが LP に名を連ねるほか、先ごろには EGG JAPAN や GBHT の運営母体でもある三菱地所が LP に加わったことが明らかにされた。500 Startups Japan はシリコンバレーにルーツを持つファンドでありつつ、出資者である LP もほとんどが日本企業や日本の投資家で構成される〝和製スタートアップファンド〟としての顔を併せ持つ。
500 Startups Japan は昨秋のファンド組成以降、会議室シェアサービスの「スペイシー」を皮切りに(シードラウンド)、レストラン向け O2O(online-to-offline)サービス「ポケットコンシェルジュ」を運営するポケットメニュー(シリーズAラウンド)、バーチャルリアリティ制作ソフトウェアを開発する DVERSE(シードラウンド)、TECH LAB PAAK 第3期から輩出された MagicPrice を運営する空(シードラウンド)に出資していることを明らかにしている。
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500 Startups Japan のパートナーを務める、James Riney 氏と澤山陽平氏によれば、資金面やメンターネットワーク以外に 500 Startups Japan を差別化できる要素として、彼らが投資を実行する際の2つの戦略が上げられる。
一つはタイムマシンビジネス。彼らのポートフォリオの中では、スペイシーやポケットメニューがそれに当たるが、既に同業を営むスタートアップがアメリカの 500 Startups のポートフォリオの中にいて、彼らと何らかの事業シナジーを模索するケースだ。アメリカのスタートアップが日本に進出する際に、日本市場で先行する同業スタートアップと協業・合併・買収をすることもあるだろう。「時間を買う」という考え方である。500 Startups 全体としてみれば、ポートフォリオの複数のスタートアップが力を合わせることで、迅速にワールドワイドで一つのサービスを提供できることになり、バリュエーションを高めることができる。
もう一つは DVERSE がこのケース。技術に特化したスタートアップがエッジの利いた技術を持っている場合、世界でビジネスを展開できる可能性がありつつ、一般的にマーケティングが得意ではないことが多いのだという。世界中のジャーナリストとのネットワークを駆使して、技術特化型スタートアップの世界マーケティングを支援するのも、500 Startups Japan のミッションのひとつのなのだそうだ。
THE BRIDGE が SD の名前で英語版の運用を開始したときにも述べたことだが、言葉のわからない欧米の投資家の目には、日本のスタートアップ・コミュニティがブラックボックスとして映る。Riney 氏と澤山氏は、日本のスタートアップにより多くの関心を持ってもらい投資活動を呼び込めるよう、世界の投資家に日本での水先案内人を務めることができるのも、シリコンバレーとのパイプを多く持つ 500 Startups Japan の強みにしたい、と語った。
本格的な拠点を構えたということもあり、500 Startups Japan では現在、オフィスアワーやミートアップなどのイベントの切り盛りを含め、スタートアップとのエンゲージメントを深める役割を担う、Marketing & Community Manager のほか、Executive Assistant やインターンなどのポジションで人材を絶賛募集中とのこと。読者の中で、我こそはという人はぜひ応募されたし。
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