台湾AppWorks(之初創投)が第12期デモデイを開催、スタートアップ24社を輩出——Jamie Lin代表「デジタルエコノミーは、エレクトロニクス産業にまさる」

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台湾のスタートアップ・アクセラレータ AppWorks(之初創投)の創業者 Jamie Lin(林之晨)氏は、デモデイのオープニングで、台湾が直面する経済政策について2つの問題提起をした。一つは、台湾の「Industrial 4.0 Smart Nation」は、「デジタルエコノミーとしての台湾」に改められるべきというもの。もう一つは、「新南進政策」は、「東南アジア圏のデジタルエコシステムの創出」に改められるべきというものだった。

(訳注:「新南進政策」とは、台湾の Tsai Ing-wen(蔡英文)総統が掲げる、東南アジア諸国との経済協力政策のこと。)

Lin 氏は、AppWorks がデジタルエコノミー共栄圏と密接に関係していると確信している。デジタルエコノミー共栄圏とは何か? そのためにはまず、デジタルエコノミーを理解する必要がある。デジタルエコノミーとはエコシステムであり、チェーンやサプライチェーンのようなものではない。多くのスタートアップや起業家からなるエコシステムだ。

スタートアップや起業家がデジタルエコノミーに参加できるようにするために AppWorks を設立し、6年の歳月をかけて多くの優れた起業家やスタートアップを養成した。しかしながら、デジタルエコノミー共栄圏には、資本と人材という2つの要素が必要だ。この3年間にわたり、AppWorks は、資本と人材のエコシステムを牽引してきた。

しかし、デジタルエコノミー共栄圏で最大の難題はリクルーティングだ。すべてのインターネット企業は人材を見つけることに問題を抱えているが、台湾には就職先が見つからない若者が大勢いる。これは、台湾の目前にあるデジタルエコノミーの発展が直面する最大の問題だ。

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デジタルエコノミーの一人当たりGDPは、エレクトロニクス業界のそれを超えた

Lin 氏は、多くの人々がデジタルエコノミーはテクノロジー産業の一つに過ぎないと言ってきたが、自身の6年間の経験を通じて、デジタルエコノミーはテクノロジー産業ではない、と言及した。デジタルエコノミーとは、テクノロジー産業と流通チャネルを組み合わせたもの、というのが彼の結論だ。テクノロジー産業の強みは人材レバレッジが高い点であり、それは一人当たり GDP を高くする可能性を示唆している。テック業界やオートメーション化された大量生産のしくみが、一人当たり GDP を押し上げることができる。

しかし、AppWorks の過去6年間のトラックレコードを振り返ってみると、同アクセラレータから生み出された最有力のスタートアップである創業家兄弟(Kuo Brothers)91APP などは、従業員一人が生み出す売上額で、台湾のエレクトロニクス業界の雄である TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing=台積電)、MediaTek(連発)、Foxconn(鴻海/富士康)などを上回っている。これこそデジタルエコノミーの強みであり、一人当たり GDP でエレクトロニクス産業を圧倒した例だ。これからの半年で事態は逆転する。台湾の人口が減り、さらに少子化も追い打ちをかける今こそ、我々には、デジタルエコノミーのさらなる導入を見据えた、人材レバレッジが必要になるのだ。

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第二に、デジタルエコノミーはテクノロジー産業であるだけでなく、流通チャネルビジネスでもある。。流通チャネルビジネスの資本レバレッジは高く、モノを移動させることで、元々の金銭価値からさらに多くの売上を生み出すことができる。商品の流通性が価値を創造するのだ。創業家兄弟や 91APP などは資本レバレッジにおいても、台湾の流通大手である統一超商(台湾でセブンイレブンなどを展開)、新光三越(三越との合弁により台湾でデパートを展開)、Foxconn などを超えている。流通チャネルビジネスの資本レベレッジは高いが、インターネットビジネスはさらに高い資本レバレッジを持っていることになる。

したがって、デジタルエコノミーはテクノロジー産業+流通チャネルビジネスというだけでけなく、両者を組み合わせた最良の部分を作り出し、人材レバレッジと資本レバレッジの両方の部分を兼ね備えている。台湾では、人口が減少し、出生率が低下し、資本の小さな国であるため、デジタルエコノミーを発展させる唯一の方法は、我々の国家が最高のレバレッジを持つということだ。

心強いことに、AppWorks がこれまでに輩出した275チームの市場価値総和は273億ニュー台湾ドル(約850億円)に達し、昨年に比べ94%も増加した。ユニコーンを生み出すまであと一歩となった今、次回のデモデイは、ユニコーン集団を披露する場になるかもしれない。

AppWorks 第12期から輩出されたチーム

AppWorks 第12期から輩出されたメンバーは、スタートアップ24チーム、起業家63人、平均年齢は31歳。彼らは、台清交成(台湾の有名4大学=国立台湾大学、国立清華大学、国立交通大学、国立成功大学の略称)出身で、国際的かつ起業経験豊富であることが大きな特徴だ。唯一残念だったのはメンバーの多様性に乏しく、女性起業家が4人しかいなかったこと。次回には、より多くの女性起業家が参加することを期待したい。

今回のイベントに登壇した21チームの内訳は、オンデマンド・エコノミーのビジネスモデルが7チーム、ウェブ専業のオリジナル家電ブランドが5チーム、SaaS(Software as a Service)が5チーム、IoT(Internet of Things)が2チーム、越境ECが1チームだった。

イベントの最後には、Lin 氏は4つの政策を提言し、インターネットと EC を次なる台湾経済の成長を担う牽引役にしたい、と述べた。

  • デジタルエコノミーに関する中央二級機関の設置
  • 大学の教育過程における募集定員の制限を緩和
  • デジタルエコノミーに適合するよう法的規制を改正
  • 「東南アジアデジタルエコノミー共栄圏」への参加

(訳注:中央二級機関とは、台湾における内閣に相当する「行政院」配下の組織のこと。日本での省庁に相当する。)

AppWorks 第12期から輩出された24チームのうち、TechOrange では潜在力があると思われる12のスタートアップを紹介する(編注:実際には13のスタートアップが紹介されている)。

WeMo(威摩)

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WeMo(威摩)Scooter は、デジタルでシェアできる電動バイクで、新しいスマート交通サービスにより、人々に手頃な価格で、無理なく楽しい乗車体験を提供する。継続的な発展によって、よりよい未来における都市の在り方を見据えている。

WeMo 創業者 Jeffrey 氏のコメント:

ここ(台湾)は私の家(母国)です。非常に簡単なことです。台湾で他に無いものを作りたい、自分たちのブランドで。誰かにマネのされることのない、世界で使ってもらえるプロダクトを作りたい。

KeylessOK(客來喜)

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KeylessOK の RFID Bluetooth パッチは、ホテルの部屋のカードキーのアップレードソリューションで、ホテルの入口キーをアップグレードし、簡単かつ安全にする。ホテルのハードウェアアップグレードの支援からはじめ、さらにそこから、使い勝手のいい経営環境を提供するだけでなく、宿泊客のビッグデータ分析や個人別の好みを記録する。

KeylessOK 創業者 Eagle 氏のコメント:

この新しい技術によって、ホテル事業者向けのデバイスがより多くのサービスを顧客に提供できるよう支援したい。

Mr. Living(居家先生)

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Mr. Living は、良い家具は必ずしも高価とは限らないと考えている。家具が高いのは、製造業者から消費者の手に届くまでに、仲介業者、卸売業者、小売店を通じているからだ。これらの仲介業者の介在は価格を上げる要因にはなるが、彼らは商品の価値を高めることはしない。そこで、インターネットによって家具を販売する方法を変え、仲介業者をスキップして消費者と製造業者を直結することで、良いデザインの家具を市場価格の5〜7割引で届け、個々人が安価で自分の好きな家具を購入できるようサポートする。

Mr. Living 創業者の Victor 氏のコメント:

我々は従来からある産業に、今までとは違う方法を取り入れることで、大手よりも優位に立てるので、今後はさらに良い商品とサービスを提供していきたい。

Racbit Sport

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Racbit Sport はイベントオーガナイザーのための管理システムで、オーガナイザーは自分のイメージに合わせた Google フォームを設置でき、追加で商品販売、クーポン適用、自社サイトの URL へのリンクなどを設置できる。

Racbit Sport 創業者 Tim 氏のコメント:

もともとは何人かの友人と世界的な商品を変えたいと思い、ウェブサイトのデザイン会社を作った。しかし、他のチームとの差別化を図るために、我々は選択と集中をする必要があった。

920 揪愛啉

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920 揪愛啉 は、バブルティーやコーヒーなどの飲み物をアプリで予めオーダーしておき、後からテイクアウトできるサービスだ。

920 のチームはマレーシア出身の2人のメンバーで構成され、彼らは台湾のユニークな持ち運び飲料文化を発展させるオーダーアプリを開発した。まもなく台北都市圏にある約100軒の飲料店での利用ができるようになる見込みで、茶湯会、COME BUY、清玉といったブランド30社とも協業する。今年初めにサービスを開始して以来、売上は毎月30%のスピードで成長しており、毎月1万5,000杯の飲み物のオーダーを受注しており、ユーザのリピート率は80%と広く大衆に受け入れられている。

920 揪愛啉 の創業者 Joe 氏のコメント:

自分で経営してきた診療所がもうすぐ10年になる。自分が変わらないと、他の人も変わらないと思ったのだ。今は最高の医者に変わった気分。皆さんが変われない理由はない。

Zuker

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Zuker はシェアハウス・プラットフォームを構築しており、不動産オーナーがより良い価値を、入居者がよりよい生活を見出すのを支援する。入居者には生活面における共同作業やパブリックスペースのデザインに参加してもらい、誰かを部屋に独りにすることなく、友人、入居者、コミュニティにおける人間関係をより緊密にする狙い。

Zuker 創業者の Robyn のコメント:

多くの学校では、起業家精神を紙で教えている。しかし、最良の方法は実際にやってみて、フィードバックを得ることだ。これからの学生は、手早く実際にやってみるようになってほしい。

LetsRide

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LetsRide はクラウドソーシングにより、自動車に乗りたい消費者とドライバーをマッチングさせるアプリ。

LetsRide 創業者 Eason 氏のコメント:

政府の政策は、我々のようなスタートアップがさらに現れるような奨励すべきだと思う。指導はその後でやるべき。

Ooly

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Ooly は、柔らかさ硬さを調節できる、睡眠の度合いを検出可能なスマートマットレスだ。マットレスの両端をユーザの好みにあわあせて、柔らかさ硬さを調整することができる。顧客からの注文を受けると、Ooly は小型の冷蔵庫サイズの段ボールに圧縮された状態で届けられる。梱包を解くと、組み立てることなくマットレスが使える状態になり、コンセントにつなぐだけで、その日からユニークで快適な夜を楽しむことができる。

Ooly の創業者 Calvin 氏のコメント:

年末には1回目の生産を開始することを念頭に、今年下半期には皆さんから購入希望の如何や興味の有無、意見をもらい、その後、販売予約の受付を開始し、本格的な生産工程を開始する計画だ。

KiWi New Energy

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  1. P2P のエネルギー取引が行えるプラットフォームを開発
  2. 革新的なオンラインのエネルギー EC および投資が行えるプラットフォームを運営しており、個人や法人投資家が太陽電池ベースの投資を行うことができる。
  3. アメリカのデラウェアに運用本拠地を置き、アジア、アジア、雨ヨーロッパ、北米、オーストラリアにも拠点を設立予定。

KiWi New Energy は家庭用のソーラーパネルを開発するだけでなく、インターネットを使ったクリーンエネルギーの普及、ソーラーエネルギーへの投資プログラム、C2C の取引プラットフォームを構築している。

KiWi New Energy 創業者 Steve 氏のコメント:

良い政策が実施されるよう、このプログラムを産官学と共に推進したいと思う。行政手続を短縮化し、オンラインで完了するようにし、皆さんの手間がかからないようにしたい。

永動科技

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RunningQuotient(RQ=嚴肅跑者)は、ランナーのためのバーチャルコーチ。トレーニング記録に基づいて、情報とガイダンスをランナーに提供。コーチはその情報に基づいて、ランナーを迅速にフォローアップしたり、分析したりできる。

バーチャルトレーニングシステムのを開発する永動科技は、ウェブベースのしくみで科学分析と訓練過剰リスクの警告を行う。共同創業者は、有名トライアスロン選手の Guofeng Xu(徐国峰)氏で、プロ向け製品としての優秀さを担保している。ウエアラブルデバイスが普及し始めている現在、永動科技は Garmin との長期協力関係の中で、RQ を Garmin が発売している運動系の製品シリーズにも導入。サービスを始めて3ヶ月経たない間に、申込者が3,000人に近づく勢いで、今後は、バーチャルトレーニングができるチャッとボットを開発し、より詳細なランニングトレーニングを提供できるようにしたいとしている。

永動科技の創業者 Jack 氏のコメント:

もし興味がいる人がいたら、Garmin のウォッチをお貸しする。パワーランニングがどれほどのものか、わかってもらえると思うので。

ISAY AROMA(聊療)

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ISAY AROMA(聊療)は、スパマッサージや自宅におけるアロマなど、全員が同じものを使うというアロマオイルが持つ概念をディスラプトする。インターネットを活用することで、個々人にあった配合によるアロマ製品のブランドを提供。

ISAY AROMA 創業者のズーチ(子齊)氏のコメント:

トライアルにおいては、ユーザは実際に使って試してみた後、商品が有効であることを認め、半数以上の人がリピーターになってくれた。

uMeal(癒善坊)

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uMeal(癒善坊)のビジネス目的は、患者のそばに寄り添うことで、彼らに治療過程の理解を促すことだ。このプロセスにおいて、糖尿病患者のデータを集め患者に合った食事メニューを作り、糖尿病患者向けのメニューが提供できるようになった後には、腎臓病、高血圧、がん患者向けの健康的で美味しい食事を提供する。

癒善坊の創業者である Ji Huan (煥基)氏(かつては牧師)のコメント:

教会においては、我々は人々に奉仕するためにいる。食べ物は仕える者の身体であり、教会は仕える者の魂であり、このサービスもそのような奉仕の一つの形なのだ。

Fugle

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Fugle は、素早く処理できるスマートな投資調査システムだ。発展系のバーティカル・サーチエンジンとレコメンドシステムにより、Fugle は複数の情報やデータからインサイトを見つけ出し投資家にデータを販売する。

Fugle は、株式に関する情報調査システムを開発。サービス開始から3ヶ月で、ユニークユーザ数は5,000人近くに迫っており、そのうちの9割が業界アナリスト、会計士、金融専門家など。最近、LINE と Facebook 上でチャットボットサービス「Fugle 株式アシスタント(Fugle 股市小幫手)」の提供を初め、ユーザに手軽でパーソナライズされた情報サービスを提供する。

Fugle の創業者 Anyway のコメント

このようなロボットを見ると、一見して多くの人力に頼ってきた業務がロボットでとって代われると感じてきたが、実際には特別なノウハウを持った人が必要で、完成させるには人材が必要だった。Fugle のようなしくみがあらゆる従業員の生産性を大幅に向上させ、人は人でないと完結できない専門の研究に集中できるようになるだろう。

AppWorks の第12期デモデイに参加できなかった? そんな人は以下のビデオでデモデイの模様をチェックすることができる。

【原文】

【via TechOrange】 @TechOrange