フィンテック・スタートアップへの投資に強気になり始めた日本のCVC【ゲスト寄稿】

mark-bivens_portrait本稿は、パリと東京を拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens によるものだ。英語によるオリジナル原稿は、THE BRIDGE 英語版に掲載している。(過去の寄稿

This guest post is authored by Paris- / Tokyo-based venture capitalist Mark Bivens. The original English article is available here on The Bridge English edition.


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CC BY 2.0 via Flickr by Guilhem Vellut

数週間前、私は日本の急成長するフィンテック分野について第一印象をまとめた。その後、この分野で活躍する、さらに多くの人々に会うことができ、イノベーションとベンチャー投資の両面から、この市場に対して比較的楽観視するようになった。

私の興味を強くさせたのはきっと、この TechCrunch の記事が、シリコンバレーやヨーロッパを越えて、フィンテックについて価値ある情報を伝えつつも、表向きには日本についての言及を怠っていたからだ。

金融法制を現代に適合したものにしたり、大企業にスタートアップ・インキュベータを創設するインセンティブを与えたりするなど、日本政府のフィンテック分野におけるイノベーションのサポートは好影響を与えている。他の要因としては、平均的な日本の消費者が投資可能な資産を持っていることで、以前にも説明したように、この傾向は中年期以降の人々には顕著だ。日本の消費者が、西洋の我々が思っているほど銀行不信に陥っているとは言わないが、アメリカなどと比べても、日本の平均的な世帯の投資に対する経験は限定的だ。実のところ、ヨーロッパの世帯の方が、もっと保守的な(または慎重派の)身内主義が見られる。

このことから、日本の消費者が新しい金融プロダクトを作り出すことに興味が無い、と言いたいわけではない。むしろ反対に、いくつかの将来有望な企業は、消費者の関心を惹くソリューションを開発し始めている。ロボアドバイザリーのお金のデザインから P2P レンディングのクラウドクレジットまで、その範囲もさまざまだ。最近開催された Microsoft Innovation Day でも、世界へとビジネスを広げる野心を持った敏腕起業家が取り上げられている。

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日本の金融機関も、傍観者でい続けようというわけではない。彼らの名誉のために言うなら、金融機関の多くは、イノベーションは自分たちの企業の壁の外で起こることを知っているのだ。そして、それは時として、国境の向こう側だったりする。

次第に、このような大企業もフィンテック・スタートアップの株式を取得するようになりつつある。日本の国会で審議中の新しい草案では、事業会社に対する銀行の出資規制が緩和される見込みだ。

多くの企業が、傘下にベンチャーキャピタル部門を作り始めた。投資に対する純然たる金銭的なリターンという点で、独立型の VC よりもコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の成績が良くないのは昔からのことだが、企業の目的は戦略的思考を伴っているので、スタートアップに対する直接投資は、その点において(金銭的なリターンが少なくても)意味を持つことになる。

最終的に、フィンテックに対する投資を行っている日本の CVC は、20社以上に上ることがわかった。このリストは全社を網羅しているわけではないが、いくつかを上げてみると…(アルファベット順)

  • Adways Ventures
  • Credit Saison Ventures
  • DBJ Capital
  • Dentsu
  • GCI Capital
  • GMO Venture Partners
  • Gree Ventures
  • Intel Capital
  • Itochu Corporation
  • Mitsubishi UFJ Capital
  • Mitsui Fudosan
  • Mizuho Venture Capital
  • Monex Ventures
  • Opt Ventures
  • Rakuten Ventures
  • Recruit Strategic Partners
  • Salesforce
  • SBI Holdings
  • Shinsei
  • SMBC Venture Capital
  • YJ Capital

ここに書いたすべてのコーボレートベンチャーキャピタルに会ったことがあるわけではないが、私が共同で出資をしたことのあるグループに限れば、純然たる金融系 VC のように行動するファンドは比較的まれだった。つまり、これらのファンドは比較的、市場で標準的とされるタームシートを発行し、特別な権限は要求せず、少なくとも私の経験では、金銭面から見た投資目的と戦略アジェンダとを適切にバランスを取っていた、ということだ。CVC は、独立系や金融系 VC とは相互補完の関係にあるので、私は CVC を競合として見るのではなく、彼らと共に投資ができる機会を歓迎したい。

オープンイノベーションや企業内 VC の創設に加えて、私は日本企業や金融機関が真剣に考えるべき、他の選択肢についても述べてみたい。詳細はまた近日。

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