2016年に成長が期待される、韓国のO2Oスタートアップ5選

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Image credit: 韓国の大手コンビニチェーン「GS25」

混乱するO2O(Online to Offline)の定義

昨年に引き続き、今年も O2O(Online to Offline)ビジネスは、大きなトピックとして浮上している。 しかし、O2Oという用語ほど曖昧に使用されている事例も無いようだ。本稿では、まず、O2Oビジネスの概念を再定義し、それに沿って、韓国のO2Oビジネス事例を紹介したい。

O2O(Online to Offline)の定義は、消費が生じるオフラインでの不便を、オンラインで解決しようとするビジネス領域である。ところが、実際には、私たちに馴染みのほとんどのオンラインサービスは、これらの趣旨から発展してきた。

すでに多くの人がディスカウントストアに行くよりも配達サービスを利用し、アプリで映画チケットを予約するのにはもっと慣れている。仕事帰りに書店に立ち寄るよりも、オンライン書店で注文する。 ネイバーや後にも数多くの小規模店舗が接続されている。

このように、O2Oビジネスという用語が登場する以前に、すでに「オンライン化」は、ビジネスのメガトレンドとして存在してきた。 O2O もそのようなメガトレンドの一種であるだけだ。 次に、従来の「オンライン化」のトレンドとO2Oは何が違うのだろうか?

「オフラインビジネスのオンライン化」トレンドの限界

今までのオフラインビジネスのオンライン化は、消費者の視点から、主に (1) 衣類・電子製品やコンテンツなど「保管性」が高く「配送」に適した(または必要としない)商品を対象に、ビジネス全体をオンライン化したり、(2) 多くの店舗を擁する「フランチャイズ型」ビジネスで、オフラインビジネスを維持しつつも、部分的に(主に配送または支払)オンライン化したりするなどの方向に発展してきた。

しかし、韓国のオンライン商取引の規模が、2014年に約44兆ウォン(約4兆円相当)に成長したにもかかわらず、十分にオンライン化オフライン市場はまだ約320兆ウォン(約29兆1,200億円相当)規模も残っている状況である(韓国統計庁の資料による)。

O2O(Online to Offline)とは何か?

O2Oビジネスはこれまでにも、オフラインの領域に残っていた小規模のビジネスを主に対象とする。O2Oビジネスの登場で、小規模ビジネスには、顧客の流入機会が拡大し、顧客にはこのようなアクセスの可能性が高まるだろう。

最終的には、小規模事業者としてはO2Oビジネスとのコラボレーションにより、事実上「フランチャイズ」に参加するのと同様の効果を体験できるようになる。そして今後のO2Oビジネスも、既存のフランチャイズ管理会社と同じような、専門的な管理サービスやマーケティングのプラットフォームを提供する方向に進化していくものと予想される。

したがって、O2Oビジネスは、オフライン、つまり既存のビジネスが前提とされているという点で、今までとは全く異なる新しいビジネスが登場するわけではない点に注意しなければならない。

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空車のある駐車場を割引価格で探してくれる「PARK HERE」

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フランスの大型建設会社である Vinci は、フランスの内外で駐車場の建設だけでなく、管理事業も営んでいる。 Vinci が管理する駐車場は、相互に空車情報を共有して訪問者に提供する。もし近くの駐車場に空車が無ければ、他地域の駐車場の空車情報を得ることができる。

しかし、韓国には Vinci のような大型駐車場事業者がいない。個々のビルや小型の駐車場事業者を中心に駐車場が運営され、駐車場が必要なドライバーは、駐車場を見つける努力を放棄し違法駐車をするか、駐車場を見つけるのに苦労したり、バレットパーキングのサービスを受けたりする。韓国では、Vinci のように直接駐車場事業をする大型事業者がいないが、個々の駐車場をまとめて一元管理するビジネスモデルが利用可能だ。

PARK HERE(파크히어)」はソウル市内の場合、密集地域であるカンナム(江南)駅とホンデ(弘大)、チョンノ(鍾路)とトンデムン(東大門)を中心に駐車場を探すサービスを提供している。 最近では、プサン(釜山)にも進出し、同市の繁華街であるソミョン(西面)やビーチエリアのヘウンデ(海雲台)でもサービスを開始した。空車率に応じて駐車料金を従来とは違う方法で策定することで、利用者に合理的な価格を提供している。

今後は、PARK HERE が自社で駐車場を保有して管理していくことも可能だろう。駐車場管理事業における重要な成功のカギは、空車率の管理だが、ソウルや釜山など主要地域での駐車場管理の経験を活用すれば、空室率管理のノウハウが確保できるはずだ。

出前できなかった食べ物を出前する「FoodFly」

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出前フードと言えば、韓国人が真っ先に思い浮かべるのは、チキンと中国料理である。最近では、ハンバーガーやピザもここに含まれる。ところが、これ以外の食品は配達できないのだろうか?

カンナムにいながら、(ハンガン=漢江を隔てて対岸の)カンボック(江北)にあるトッポギ屋のトッポギを食べたいこともあれば、ある日の朝には(二日酔い覚ましに)暖かい解腸湯(ヘジャングッ)を食べたいときもある。おそらく、ありがちなこのようなニーズも、これまでは出前注文ができないことが当然であきらめていたかもしれない。チキンなどの出前配達を中心に成長した「配達の民族(Woowa Brothers または 배달의 민족)」やヨギヨ(요기요)といった二大出前アプリとは異なり、自分だけに特化したビジネスチャンスを見つけたのが「FoodFly(푸드플라이)」である。

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デリバリー型のビジネスは、後発事業者に差別化が難しい典型的な First Mover 市場である。 シリコンバレーの「DoorDash」もフードフライと非常に似たビジネス構造になっている。最近、カンナムやソチョ(瑞草)地域でサービス開始した FoodFly はソウル全域に配達可能エリアを拡大しており、今後の継続的な成長が予想される。

ただし、ほとんどのデリバリー事業者と同様に、デリバリー動線の最適化に加えて、地域拡大後の成長に難しさがあると予想される。「FoodFly」のアイデンティティが、出前配達の機能なのか、食べ物なのかによって、今いる配達ライダーを活用したバイク便事業や、構築された配達出前情報を活用しフードビジネス・コンサルティングへ進出することも、その候補の一つとして推薦に値する。 消費者を対象とした配達業で、さらに一歩進んで、メンバー企業間の環境に配慮した食材の統合購入なども推進することができる。

洗車の矛盾を解決する「YPER」

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洗車サービスと言えば、真っ先に思い浮かぶのがガソリンスタンドだ。ガソリンスタンドでガソリンを入れ、そこで割引された金額で簡単な洗車をする。しかし、このような簡単な洗車だけでなく、専門的なクリーニングを受けたい人もいる。駐車したところで、クリーニングサービスが提供されれば、そこでニーズを解決できるが、ほとんどの人は、別の時間を割いて、洗車しに行かなければならない。

洗車をするには、車の持ち主が自分で車を運転して洗車場に行かなければならない。ところが、車の持ち主は、平日日中に洗車場へ行く時間を確保するのは難しく、週末、特に日曜日は洗車場は閉まってしまう。洗車場の立場で見てみると、ほとんどの時間は暇をしており、午後の遅い時間からのみ客が集まるという不合理がある。

YPER(와이퍼)」のサービスは、車の所有者と洗車場事業者の両方が喜ぶビジネスモデルだ。YPER は、洗車する車を運ぶだけでなく、自社の料金体系を設定しており、洗車したい車を募集して品質管理までする。現在、ソウルのカンナムやソチョ区内で11軒の洗車場とコラボレーションしサービスを提供している。

地域拡大に伴い、YPER は、継続的に成長するだろう。今後は洗車以外の、自動車整備市場への進出も検討できるだろう。

信頼できる不動産屋かどうか見極めれる「Zigbang」

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ほとんどの人が個人保有する最大の財産は、おそらく住宅や自動車である。ところが、韓国の住宅取引と中古車市場は、不信に満ちている。中古車取引市場は、規制の変更により、市場が影響を受ける可能性が大きい。今回は、まず、住宅取引市場について見てみよう。

自分が住む住宅を見つけることは非常に面倒だ。オンラインで検索できる物件は、実際には虚偽である場合が多い。時には仲介業者から意図的に虚偽の物件をアップしていることもあり、他の仲介業者で処分されたという事実を知る余地がなく、虚偽の情報が出ている場合もある。

最終的には、オンラインの情報を信じず、直接見に行かなければならないことは、私たちの社会の常識になっている。不動産仲介市場は、オンラインで数多くの物件が出ているにもかかわらず、実際にはオンライン化に失敗しているわけである。

Zigbang(직방)」は、不動産市場の失敗したオンライン化で、消費者とブローカーの両方にもたらしたネガティブな側面を看破した。Zigbang が差別化ポイントに掲げる「安心物件」や「安心不動産ポリシー」は、オンライン不動産市場の信頼につながって、長期的に取引のオンライン化を促進することになるだろう。

また、仲介業者の立場から見ると、ほとんどの賃借人は忠実な顧客ではない。したがって、仲介業者は、賃借人よりも家主の顔色を伺うことになる。こうして、賃借人は、自分が仲介手数料を出すのにもかかわらず、家主より差別的な扱いを受けることになる。しかし、Zigbang を使って住まいを探した客は、段階的に忠誠心が高まり、Zigbang と個々の仲介業者との間のコラボレーションのレベルが向上するほど、仲介業者のテナントに対する態度は変わらざるを得ない。このようにして、Zigbang に登録された仲介業者のサービスが、他の店よりも差別化された結果として示されるようになる。Zigbang は、虚偽の物件問題以外にも、差別化されたサービスがあることで、継続して成長することが期待できるだろう。

今後 Zigbang は、不動産取引後の、引越や家主との紛争に弁護士などを介した専門的なサービスを提供することで、差別化を持続的に進めることが検討できるだろう。

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すべてが面倒な人のための「Munbiso」

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これまでにも、客のすべての用事を解決してくれるとしたサービスは存在した。しかし、時給に基づいたこれまでのサービスは、単純なサービスにも多額の費用を支払う必要があった。

さまざまなサービスを一律に評価できる方法は時給しかなかったが、顧客は専門的なサービスを期待することは難しいし、やってきたヘルパーが故意に時間をかけてサービスしている可能性まで疑う必要があった。すべてのサービスを自らすべて解決するとしたビジネスは、結局のところ、あまりに多様な顧客のニーズをすべて消化することはできなかったし、サービスの品質を管理することもできなかった。

Munbiso(문비서=門秘書)」は、そのような、これまでの事業者と同じ轍を踏むことにはならないだろうか? 結論から言えばそうではないようだ。Munbiso を運営する Text Factory(텍스트팩토리)の事業能力に加え、ビジネス環境が大きく変化しているからである。

Munbiso も一種の O2O ビジネスであるが、最近では、分野別に専門化した O2O ビジネスを提供する事業者が増加傾向にある。私たちは、すでにアプリで従来よりもはるかに多様な料理を注文することができ、洗濯を回収してもらい、駐車場を探してもらい、洗車サービスを代行してもらい、中古車取引や不動産も見つけることができるが、これらのサービスは、より複雑化して増えていくだろう。Munbiso は、従来の失敗した代行事業者とは異なり、それらの企業との提携関係を形成するだけでよい。

Munbiso のビジネスの重要な成功のカギは、適切な提携関係の形成を通じて、インソーシング/アウトソーシング管理することとと価格である。韓国人は、サービスや価格に敏感な顧客が多い。もし Munbiso を使って注文した配達料が他のサービスよりも高価になった場合、そのお客は離脱するだろう。ある分野で離脱し始めた客は、他のサービスでも比較して、最終的に、すべてのサービスから離脱することになる。しかし、少なくとも、ほとんどのサービスにおいて、各分野のO2O事業者に直接オーダーする場合と価格差が無い場合には、客はためらうことなく Munbiso を選択することになるだろう。

【原文】

【via BeSuccess】 @beSUCCESSdotcom

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