爆発的成長を続ける、中国のオリジナルショートムービー市場

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Image credit: Miaopai(秒拍)

中国で人気の動画撮影・共有アプリ Miaopai(秒拍) は、2015年後半では一日あたりの再生回数が5億1,000万回だったのが17億回を超えたという。一日あたりの動画アップロード数も、15年後半の100万から150万へと増加した。

同アプリの成長は、Twitter の中国版人気ソーシャルメディア Weibo(微博)と Miaopai の親会社 Yixia Technology(一下科技)の戦略的投資によって加速している。

この一年、Weibo からは動画視聴回数の莫大な増加が報告されており、2015年第3四半期では前年比9.7倍の増加が確認された。一日あたりの平均動画視聴回数は今年度第1四半期には4億7,000万回に達し、第2四半期でも引き続き235%の成長が確認されている。

別のショート動画投稿アプリ Meipai(美拍) では6月に1億4,100万人のアクティブユーザ数が記録された。同社によると、平均して一人一日当たり32分間の使用だという。2014年5月のローンチ以降6月時点までで、計4億3,000万の動画がアップロードされている。

中国本土では YouTube が長きに渡りブロックされており利用できない状態であるが、その地位を代わりに占めるものは未だ確立されていない。YouTube を模した多くの中国サイトでは初期の頃からユーザが作成した動画の投稿が可能で、その後広告に基づいたレベニューシェアリング仕様が確立されたものの、ユーザ作成型動画ビジネスは視聴者・収益創出どちらの観点から見ても未だ価値のあるものではない。中国市場に参入していくために、これらのサイトは Hulu に近い形でテレビ番組や映画、また最近ではオリジナル番組へと方向を転換してきている。

中国版 YouTube もやがては開設されるだろうが、その活躍の場は主にモバイル上になるだろうと考えられている。Miaopai と Meipai はモバイルアプリとして2013年、2014年にそれぞれ誕生した。Weibo の第2四半期における月間アクティブユーザの89%はモバイル上で同サービスにアクセスしており、その広告収入も68%がモバイル経由で生じている。Tencent(騰訊)の人気ニュースポータルサイト QQ.com も、同サイトでの2016年夏季オリンピック視聴の75%はモバイルによるものだったと報じている

マネタイズはいまだアーリーステージ

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Meipai(美拍) Image credit: Meipai

YouTube は2010年に一日あたりの再生回数が20億回に達する前の2009年時点で2億4,000万米ドル余りの収益を得ていると見積もられていた。一方、中国のショート動画プラットフォームはマネタイズ化の努力を始めたばかりだ。

Yixia Technology の CEO である Han Kun(韓坤)氏は、Miaopai が2015年後半より複数のマーケティングキャンペーンを通じて収益を獲得し始めたことを、とあるインタビューで語っている。同社シニア VP の Liu Zhengxin 氏も、同社のショート動画が将来的に得られる収益は主に広告収入によるものだろうとしている。

インターネット市場調査会社 iResearch によると、中国におけるオンライン動画広告市場は今年度第2四半期において前年比で48%増の84億元(約12億5,000万米ドル)規模に達しており、その60%以上がモバイル経由のものであるという。オンライン動画広告は今年初頭に初めて、中国におけるオンライン広告売上総計の10%を超えた。

しかし、現在のところ動画広告の大半は主要な動画サイトにある連続ドラマやクイズ番組といった長時間の動画内に置かれている。また、ショート動画やソーシャルプラットフォーム上で利用可能な動画広告の作成・挿入用のツールサービスといったものも存在していない。

一方、Meipai は別の方向へと向かっている。同アプリはこの6月、視聴者が動画投稿者に対して新たにバーチャルギフトを贈れる機能で収益を産出し始めた。実質上のチップ制度であるこのバーチャルギフトシステムは中国国内において幅広く応用可能なマネタイズ施策となっている。

Meipai の親会社は会員制サブスクリプションのようなユーザ向けサービスが新たな収入源になると考えている。また同社はファッション関連のインフルエンサーを活用していくため、2017年上半期中にソーシャルショッピングプラットフォームを加えることを計画している。

コスト面の話をすると、動画視聴の急激な成長は回線容量コストの急速な増加を意味するものでもある。また、中国の動画ストリーミングプロバイダは国内の規制を逸脱しないよう大量の検閲スタッフを雇用しなければならない。中国のショート動画やソーシャルプラットフォームは現在のところいかなる投稿者に対しても支払いを行っていない。

大手企業はベンチャーキャピタルによる資金で支援されている。Miaopai の親会社は2015年後半に2億米ドル規模のシリーズ D 資金調達ラウンドを発表した。Meipai の親会社 Meitu(美図)も複数のラウンドで資金を調達し、先ごろ香港証券取引所に IPO を申請した。

人気動画投稿者の出現

Miaopai における最新の月間視聴ランキング上位10アカウントのうち7つはここ24ヶ月のうちに登場したものである。

3位の Papi Jiang(Papi 醤)氏は同ランキングで唯一のインディペンデントなクリエーターだ。彼女の自作するミニトーク番組が中国のネット上で話題になった2015年後半、彼女は中国の一流演劇学校の大学院生だった。その後間もなく、彼女はオンラインマルチメディア制作会社 Luojisiwei(羅輯思維)および国内の VC 企業数社より資金を受けた。

Luojisiwei は今年初頭、彼女に向けた広告のオークションを開催し、2,200万元(およそ330万米ドル)の広告資金を得たと報じられている。Papi Jiang 氏は現在著名な中国人タレントエージェントとパートナーを組んでおり、つい先日誰でもオリジナル動画が投稿でき、また厳選した動画を自らのアカウントを通じてさまざまな動画・ソーシャルプラットフォーム上へとプロモーションすることが可能な Papitube をローンチした。

中国国内のインディペンデントな動画投稿者で彼女のようなトラクションを得た人は他にほとんど見つからない。ネット上で活躍する人を対象にマネジメントを行うタレント事務所 RedBang(紅榜)の設立者 Bob Ding(丁辰灵)氏は、YouTube 上の人気スターと中国のショート動画クリエーターの間には質・量ともにまだまだ大きな差があると考えている。RedBang は現在、Yixia Technology と共に中国初となる VidCon のようなカンファレンス「世界網紅大会」を開催しており、YouTube 上の人気スターを中国に呼び込み、中国国内のクリエーターが YouTube スターらから学びを得る機会を作ったりしている。

Papi Jiang 氏を除いた他の Miaopai のランキング上位10アカウントはすべてスタートアップにより運営されている。そして上位2アカウントを含むこれらスタートアップの大半は、この1年半の間に従来のメディア専門企業によって設立されたものだ。これら急成長を遂げる動画コンテンツのスタートアップはすべてベンチャーキャピタルによる投資を受けてきた。

現在では動画プラットフォームの広告収入からレベニューシェアを受けることは不可能であるが、ブランドマーケティングキャンペーンといった他のマネタイズ施策を試験的に始めているものもある。Miaopai のランキングで2位だった Yi Tiao(一条視頻)はさまざまな動画・ソーシャルプラットフォーム上のアカウントを通じてフィジカル商品の販売を始めている。

より多くのスタートアップや Papi Jiang 氏のようなクリエーターがショート動画市場に参入することができると考えられる。モバイル向けショート動画・関連サービスの発展のプロモーションのため、Weibo と Yixia Technology は2015年後半、1億米ドルの資金投入を共同で発表した。

従来の映画・テレビ番組制作会社から活字メディアの老舗に至るさまざまな分野から、何千もの企業がショート動画制作市場に参入しているとされている。

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【via Technode】 @technodechina

【原文】

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