世界的な「住生活のイノベーション」を探求する本間毅氏がスタートアップに復帰、Mistletoe、B Dashなどからシードで410万ドルを調達

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2016.10.18

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世界的な課題に挑戦するため、かつての学生起業家が現場に戻ってきた。

1995年にウェブ制作・開発を手掛けるイエルネットを学生起業し、その後ソニーや楽天で活躍した本間毅氏が手掛ける新たなスタートアップについて本誌に語ってくれた。

「HOMMA」が取り組む課題は「家」。Redefining our standard of livingとサイトに記された通り、人生の中で最も重要な衣食住のひとつの未来像を作るという意欲的なプロジェクトだ。再度の起業は一切考えてなかった本間氏をスタートアップの世界に戻したのはひとつのきっかけからだった。

「家を購入しようと考えたんですが、作るのに数年かかる。数年ですよ。日本でも数カ月でできるのに。しかもすごく高い。それでなんらかのソリューションがあると思って調べたんですがない。それで考え始めたのがきっかけです」

しかし本間氏は起業の世界に「再登板」を決断するまで2年近くの時間を費やすことになる。

「本当にこれは必要なのかどうか。ソリューションがないのか。急ぐ必要はなかったのでしっかり準備をしました。それと20代の起業はそうとは言ってなかったけど、やっぱりどこか自己実現のためっていう部分があったんじゃないかな。でも今回ははっきりとしたビジョンが自分の中で見つかって、それで世の中のために残りの人生をかけてやるんだという決心がついた。だから私はこれをやるんです」。

この自問自答する本間氏自身を納得させたビジョンというのが次のライフスタイル、特に住生活のイノベーションについてだった。

「電話が100年かかってiPhoneになった。車はフォードから100年かかってTeslaを生み出したんです。でも、家はどうでしょうか?100年かかって変わったでしょうか?」

本間氏が口にした「住宅版のTesla」という表現は私にも理解しやすいように、という意味で使われたんだろうが、たった7文字が達成しようとしている世界観は相当に果てしない。元々は家が高いから、購入するのに数年かかるからという理由で始まった本間氏の課題解決は結果として「家はもっと面白くなる」という結論に辿り着くこととなる。

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家をスマートに賢くする。まだ目指すビジョンが山頂にあるとするならまだ山の麓、1合目に差し掛かったところだろうか。

資金調達に関してはMistletoe、B Dash Ventures、Genuine Startups、500 Startups Japan、East Ventures、Draper Nexus、建築事務所のKMDWらがシードラウンドに参加。個人投資家としては、楽天の三木谷浩史氏をはじめ、元オプトの海老根智仁氏、メルカリの山田進太郎氏、m&s partners Pte. Ltd.代表の眞下弘和氏、元楽天CTOの安武弘晃氏、元コロプラの千葉功太郎氏、マシ・オカ氏という錚々たる顔ぶれが集まった。

出資金は410万ドル。シード段階でこの金額は国内のスタートアップであれば破格だが、彼らがこれから挑戦する世界戦のことを考えると相応だろう。さらに彼のビジョンに共感したメンバーがAppleやTesla、Amazon、ディズニーといった企業から彼の元に集まる。現在はシリコンバレー拠点でフルタイム7名の体制でプロダクトの準備を進めているそうだ。

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では、どういう未来像を描き、現在の状況はどのようなものになっているのだろうか。

まだステルス状態でもあり、また、彼の思い描く「新しい住宅」のビジョンに対して現在進めているプロダクトが最適解かどうか検証している段階ということもあって、明確な説明はもう少し先の様子だった。ただ、今あるいわゆる「スマートホーム」と言われるデバイス群に対する課題は明確に語っていた。

「いわゆるスマートホーム市場はGoogleやApple、Samsungといったビッグプレーヤーの覇権争いですよね。結果的にアプリも沢山あってデバイスも山ほどある。それで使ってみるんだけどスマートフォンを取り出して電源を入れてアプリを立ち上げ、ログイン画面が出てきて。『で、いつになったらこの電気を切れるんだい?』という状況」

本間氏に言わせれば現時点で使えるソリューションは全然便利ではなく、このスマートホーム市場で考えられる課題は大きく三つあるという。

「スマートホームでまず出てくるのがコントロール。でもこれって単なるオンオフや調整の話。全然面白くない。次にインテグレーションのレベルが低い。例えばサーモスタットを付けたとして、家そのものとの連携が低い。結果としてできることが少なくなってしまう。さらに三つ目が通信で、もし100個のスマート電球を付けたとしてルーターを交換すれば、一から設定をし直さないといけなくなる。汎用のWifiやBLEで通信すると安定性に問題が出てくるんです」

彼の話を紐解くと、どちらかといえばスマートホーム・プラットフォームを標榜し、Samsungが2億ドルで買収したSmartThingsのような水平展開の方向性というよりは、AppleやTeslaのようにデバイスからソフトウェアまで全て垂直に統合するモデルが想像される。しかし本間氏はものには順序があると遮る。

「時間軸の問題です。例えば家を作るとしてそれをイチからやっていたのでは時間がかかってしまう。スケーラビリティのある展開と合わせて考えることが必要で、例えばiPodだってまずはソフトウェアから生まれたわけだし、Teslaだって元々はバッテリーから開発が始まってるんです」

それでも話を聞きながら「2001年宇宙の旅」や手塚治虫作品で夢描いた未来の生活、ライフスタイルのイメージがどうしても目の前に広がってしまう。子供心ながらにはやくそれを見てみたい、そのための手段を本間氏たちは用意しようというのか、という気持ちの高鳴りが止まらなかった。

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もうちょっと予想すると本間氏もいわゆる家に集まるビッグデータ、つまりはセンサーから取れるデータの数々だが、これを基礎とした「人工知能的なもの」によるホームコントロールは意識しているようだった。この分野は古くは大手家電メーカーの音声認識コントロールや最近ではウィンクルの「Gatebox」に見られるコミュニケーション・ロボット領域で挑戦しているプレーヤーを散見する。

つまりは家に帰り、ただいまと言えばロボットが電気を点けて顔認証でユーザーを認識し、その人のソーシャルデータからお気に入りのテレビ番組をレコメンドしてくれるーーまあそういった世界観だ。これを更に高度に発達させた上で「家そのもの」と密接に統合する。

自動運転する家、かなーー本間氏の言葉を借りれば、私たちがこれから出会うことになる「かもしれない」プロダクトはそういうものになるらしい。

シリコンバレーを中心に世界戦に臨む理由を人口が増え続け、集まる人材レベルが高く、さらにここで勝ち残ったものが「世界標準」になりうるからと語る本間氏。日本でも人口減少が近い将来、住宅事情にも影響をさらに与えることになるだろう。

学生起業から約20年。

「本当はね、これを解決してくれる人は出てくると思ってた。でもいないから私がやるんです」ーーそう語る本間氏の目にはこれからやってくるであろう困難を楽しみにしているような、そんな力を感じた。

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