【独占取材】LINE は米国市場を(今のところ)諦めて、4つのアジア市場を攻めるーー秘策は「AI とチャットボット」にあり

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Above: Line CEO Takeshi Idezawa onstage at Web Summit in Lisbon on November 8, 2016. Image Credit: VentureBeat

地の利がある市場に焦点を合わせることが最も理にかなっているーー。これが日本で最も人気のあるメッセージングプラットフォーム「LINE」の現在のビジネス戦略だ。

VentureBeat 編集長 Blaise Zerega の独占インタビューで、LINE代表取締役の出澤(剛)氏は日本、台湾、タイ、インドネシアの4つのアジア市場に焦点を当てた決定について説明してくれた。

数年前、LINE は西洋市場に参入しようとした。かわいいアニメスティッカーで知られているメッセージングアプリは、WhatsApp から Snapchat、Twitter から Instagram、iMessage と SMS、そして中国の WeChat から、もちろんのことながら Facebook メッセンジャーといった、それぞれがオーバーラップしているサービスとの激しい競争に遭遇することとなる。

このような状況の中で LINE は拡大幅を縮小して計画された IPO を棚上げし、4つのアジア市場に焦点を絞り込んだ。今年の初めに同社は11億ドル規模の IPO を実施し、最近の第3四半期の収益は前四半期の339億円から増加して359億円(約3億4200万ドル)となった。

LINE は日本、台湾、タイの3つのアジア市場でトップメッセージングプラットフォームとなり、インドネシアで2位を獲得している。 出澤氏は LINE サービスをユーザーの生活に不可欠なものにすることを目指しており、チャット戦争における西欧や中国のライバルに対して我慢強くアドバンテージを積み重ねていこうとしている。

これを達成するために出澤氏は「大きな数字の法則」に賭けている。すなわち、特定の市場でトップのメッセージングアプリになることが有機的な成長を生み出す、というものだ。

同氏は、LINE氏が来年早々に職場にSlack のようなバージョンをリリースすると話しており、また、ビデオやその他のサービスを利用してセッション時間を延長し、増収を目指している。とりわけ、少数のメッセージングプラットフォームが支配的となる最終的なグローバル市場に備えるため、彼はAIやチャットボットに投資している。

編集部注:このインタビューは、明快に伝えるために編集されています。 2016年11月8日、ポルトガルのリスボンで開催されたウェブサミットにて翻訳者を通じて実施されたものです。

VentureBeat:あなたは LINE はアジア、特に日本、台湾、タイ、インドネシアの4カ国に集中すると言っています。それは Facebook のメッセンジャーと Apple iMessage に米国市場を明け渡したことを意味してるのでしょうか?

出澤氏:選択の問題です。我々は4つのアジア諸国に焦点を当てており、私たちはこれを2年間続けてきました。一つの理由は、アジアは成長市場であるということです。米国企業は参入するのが難しい市場でもあります。また、非常に強力なネットワーク効果があるため、一旦強いアプリが出現したり、もしくは高いマーケットシェアを獲得した場合、それを置き換えることは非常に困難になります。これが2年前に4つのアジア市場に焦点を当てた理由です。

VB:これらの4カ国に集中しているのはこれら地域の経済成長に期待しているからと言われていますが、いつそれが起こると思いますか?

出澤氏:アジアの中産階級は2020年までに指数関数的に増加するとの報告が多いので、2020年まではアジアに焦点を当てます。

VB:ビジネスの成長はユーザーの成長にとってどのくらい重要ですか?現在、あなたの会社は2億2000万人のユーザーを公表しており、潜在的な市場はおそらく5億人と言われています。

出澤氏:ユーザー数の増加は非常に重要です。 4つのアジア諸国の成長率をみると、実際には前年比で20%増加しています。我々はより多くの成長のための健全な機会があると考えています。

VB:どうやってより速い成長を達成しますか?

出澤氏:強力なネットワーク効果についての私の答えに戻ると、アプリがマーケットシェアで一位になると、ユーザーの成長はそこから有機的に達成されます。日本、台湾、タイでは、ユーザーを増やすために多くのリソースを割り当てていません。なぜならこれら3カ国でトップのアプリだから、ユーザーは勝手に増えるんです。しかし、私たちはまだインドネシアのトップアプリではなくまだ2番目ですから、新しいユーザーを獲得するために多くの活動を行っています。

VB:LINE プラットフォームには、300社以上のチャットボットが含まれています。より多くの成長を推進するための将来のサービスを開発する上で、これらのボットと AI の役割はどうなるのでしょうか?

出澤氏:日本の配送サービスでは、チャットボートで AI を使用して、顧客が荷物の納品日を予約できるようにしています。私たちはチャットボットがビジネストランザクションそろそろ生み出すことができるようになっており、また、顧客はビジネスとコミュニケーションをとることができ、さらにその背後には人工知能がすべて処理している時代に入っていると考えています。

LINE ユーザーは、タクシーを呼びかけること、航空券を予約すること、食料品を配達すること、そしてLINE アプリ内で多くの異なる取引をすることができます。しかし、すべてが AI によって自動化されているわけではなく、プロセスのいくつかはまだ手動です。 AI をさらに活用することで、ユーザーにとっての効率性が向上すると考えています。

VB:しかし、これらのユースケースの中には、機械学習のスケールではかなり低いものがあり、おそらく多くの AI が関与しているとは限りません。2020年を見据えて、AI で LINE ユーザーの経験を変える可能性のある分野は何ですか?

出澤氏:Smart Portal を使用すると、すべての LINE サービスにアクセスできます。ここを多くの LINE サービスのための「ワンストップショップ」にします。私たちは、ユーザーのさまざまなニーズにすべて包括的に答えることができるインテリジェントエージェントが潜在的可能性を持っていると考えています。代理人やボットは、LINE のサービスを利用するためのゲートウェイとして、検索し行動する上で非常に重要です。

そして、私はこれが単なるオンラインのためだとは思っていません。オフライン世界には実際のお店があり、そのリアルな店舗でもユーザーはチャットボットでサービスを検索してやりとりすることになると考えています。

VB:それって Amazon Alexa や他の音声起動アシスタントで注文するような風にも聞こえます。LINE はいつかスマートなスピーカー、音声起動インテリジェントアシスタントで動作するようになるのでしょうか?

出澤氏:これは非常に重要な成長領域だと思います。スマートフォンがもはや支配的なデバイスではなくなった世界になれば、音声起動デバイスは次の重要なものとなるでしょうね。

VB:それはつまり、LINE は幅広いデバイスで動作するということを言われてるのでしょうか?

出澤氏:はい、私はそれが非常に高い可能性があると思っています。私は LINE サービスを使うことのできる方法が変わると思っています。それは、Echo のような家庭用のデバイスかもしれませんし、時計、またはイヤホンや小型のディスプレイになるかもしれません。

VB:2つのベンチャーファンドに投資していますが、一方でLINE が内部リソースを投資している分野はどこになるでしょうか?

出澤氏:AI とチャットボットに多額の投資をしています。私たちが集中している4つのアジア諸国では、サービスの接続ポイント数を増やすためのパートナーシップを多く検討しています。

VB:おそらく、これらの接続点のいくつかは万国共通で魅力を持つことになると思います。例えばある時点で他の市場への参入や成長、すなわち米国とヨーロッパ市場に戻ってくるためのサインか何かでしょうか?

出澤氏:現在アメリカと西ヨーロッパでは、機能によって Messenger や他のチャットアプリの間で市場が大きく違ったものになりつつあると考えています。私たちはこれがいくつかのプラットフォームに進化すると考えており、その時が来たら私たちの戦略が実際に効力を発揮すると考えています。

VB:それはユーザーが多くのチャットアプリを使用する代わりに、いくつかしかないプラットフォームからひとつのメッセージングプラットフォームを選ぶことになる、という意味でしょうか?

出澤氏:そうですね。

VB:ありがとうございました。

【原文】

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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