シンガポールのコーワキングスペース「Spacemob」は今日(原文掲載日:11月23日)、Vertex Venture Holdings がリードしたシードラウンドで550万ドルを調達したと発表した。他の投資家には、インドネシアの Alpha JWC Ventures のほか、名前非開示のエンジェル投資家が多数含まれる。東南アジアで公表されているものの中では、東南アジアのシードラウンドで最大の調達額となる。
Spacemobs は競合との差別化にあたり、独自技術を開発することで入居者にメリットを提供している。例えば、Spacemob には、フルスタックデベロッパ、フロントエンドデザイナー、プロダクトマネージャーなどからなる、フルエンジニアリングチームがいる。このチームはこれまでに、QR コードを使ったワイヤレス決済(コワーキングスペースでの次の訪問にあわせて、コーヒーを購入する)やミーティング予約の機能を実装している。アドオン機能の追加、クレジットポイントの管理、旅行割引など、人々がさまざまな利点を獲得できる「メンバーサークル」を設置している。
Spacemob のマーケティング責任者である Daren Goh 氏によれば、Spacemob での問題を解決するために、技術を用いたコーワキングスペース・サークルの将来計画があるという。彼の説明によれば、この計画はプラットフォームを通じて、リソースやコラボレーション機会を人々が探し出せる、LinkedIn や Tinder のようなプロダクトとしてお目見えすることになるだろうとのことだ。
これは、私にとっては大きなことだ。他にも探求すべき機能があるが、構築するにはまだ少し時間がかかりそうだ。(Daren Goh 氏)
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先月、Spcemob はシンガポール中心部に設置した1.5万平行フィート(約1,400平米)のスペースを公式にオープンした。2017年の第1四半期には、シンガポールの Science Park 地域とジャカルタにスペースを開設する計画だ。Spacemob に入居する有名な組織としては、General Assembly やユニリーバ傘下の Big Sync Music などがある。
Spacemob をリードするのは Torochas “T” Fuad 氏だ。彼は2013年に HomeAway が買収したバケーションレンタル・プラットフォーム TravelMob の創業者だ。彼はスケールしながらも資産やコストの抑えられるよう、ホテルのような経営モデルを取り入れた。
Fuad 氏によれば、Spacemob のアイデアは、複数ロケーションのネットワークを作り、アジアのどの Spacemob からでも人々が仕事できるようにする、というものだ。スタートアップだけでなく、従業員をより創造性に満ちた環境で働いてもらいつつもコストを節約したい、中小企業や大企業をもターゲットにしている。
我々がいる世界には、シェアリングエコノミーの概念があふれている。いわば「世界をまたにかけて仕事する人」が活躍する世界だ。
もはや人々は、一つの建物の中だけで仕事するよう制限されなくていい。Spacemob は、スペースの方ががあなたに合わせるように設計されている。(Daren Goh 氏)。
Vertex から見れば、Spacemob は不動産というより〝テックプレイ〟という位置付けだ。Spacemob は、これまで地元にしか密着してこなかった業界の中で、地域を横断した視野を持っていたことから、Vertex の目に留まった。多くの場合、コワーキングスペースは、ローカルでの存在感に特化したスタンドアロンの業態と、コミュニティ構築の資産に特化した大きな企業の業態の2つに分かれる(Vertex 自身は、Technopreneur Circle という、無料のコーワキングスペースを所有している)。
スタンドアロン業態のコワーキングスペースは、小さなライフスタイルビジネスのようで、ある都市の中で拡大することはあっても、地域全体に拡大することは稀だ。Spacemob の主な入居者はアジア地域全体への拡大を標榜しており、Spacemob も2019年までに30都市に展開する計画を持っている。ここでユニークなのは、東南アジアでの展開に特化する点だ。
加えて言えば、コワーキングスペースはスケール可能なビジネスであると見なされるようになっている(グローバルなコワーキングスペースのブランド「WeWork」はニューヨークから始まり、現在は、北京・ベルリン・ボストンにも展開している)。
Vertex のグループ社長で CEO の Chua Kee Lock 氏は次のように語った。
Spacemob は、そのビジネスモデルや地域展開計画において、この市場にいる他のコワーキングプレイスと差別化した。Fuad 氏の持つバックグラウンドやシェアリングエコノミーにおけるトラックレコードのおかげで、我々は Spacemob が成功の道を歩むことに自信を持っている。(Daren Goh 氏)
Spacemob は入居者に対し、IT、金融、バックエンド・オフィス支援、さらには、健康保険メニューをも提供している。
【情報開示】Spacemob は、e27 の親会社である Optimatic に出資している。
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