本稿は、James Riney(ジェームズ・ライニー、 @james_riney)氏による寄稿だ。彼はシリコンバレー発の世界で最もアクティブなシードベンチャーキャピタル「500 Startups」の日本向けファンド、500 Startups Japanの代表兼マネージングパートナーである。
500 Startups Japan では最近、起業家志望者が共同創業者を探せる月例イベント Founders’ Friday を開催している。
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スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)と一緒に仕事をした多くの人は、彼のことを最低な奴(asshole)だと思っていました。それでも、彼は大成功を収めたのです。嫌な人だけれど、凄い人ってたまにいますよね。だとすれば、相手が嫌な人だとしても、一緒に仕事を続けるべきなのでしょうか?
起業をしてみたら、共同創業者がとんでもなく嫌な人だということが判明した場合、あなたは、次のことを検討すべきでしょう。
まず、共同創業者である以上、その人は資金調達の際には投資家対応をしなければなりません。そして、顧客と会い、提携先候補との関係を築き、さらに採用に関わる可能性もあります。いずれも、ある程度の「人間力」がなければできないことばかりです。つまり、人と関わらなければならないポジションであれば、その人が最低であることによって、会社が何らかの不利益を被る可能性は高いでしょう。
では、その人がビジネスに不可欠な高い専門性を持っていて、とにかく優秀な場合、どうすればいいでしょうか?
その場合は、特別扱いする必要があるかもしれません。しかし、注意も必要です。その人は、初期メンバーとして社風づくりに大きな影響を与えるので、会社に留まってもらうか否かは、その人がもたらす被害の程度にもよるでしょう。その人の性格が従業員の採用や定着にどのように影響するでしょうか? その人のせいで、入社を見送る者、一緒に仕事するだけで辞めてしまう者がいるでしょうか? 他の嫌な人たちを惹きつけて採用してしまうリスクはあるでしょうか? みんなが不満を感じていて、仕事も滞りがちな悪い職場環境を作り出してしまうでしょうか?
このいずれかに該当するのであれば、望みは少ないでしょう。その人がボトルネックであり続けることはほぼ間違いないので、自ら去るか、相手に辞めてもらうか、会社をたたむべきでしょう。そうでなければ、苦肉の策として、その人を技術面に特化させ、できる限り一人で働いてもらった方が良いかもしれません。
もう一つ考えなければならないのは、共同創業者としての関係です。
共同創業者が嫌な人である、ともしあなたが既に思っているのなら、問題の根はもっと深いのかもしれません。相手が嫌な人なのか、それとも実は自分が嫌な人なのか…。要するに、そいつを既に嫌な人だと思っているのであれば、問題は悪化の一途をたどるであろう、ということです。関係が破綻するのはもう時間の問題でしょう。今後5年から10年間、成功する保証もないのに、夜遅くまで一緒に働いたりストレスの多い時期を共にし、我慢し続けることができるでしょうか? 実際に直面する現実とはそういうものなのです。
共同創業者が嫌な人である事を重々承知した上で、それでも仲が良い場合もあります。互いを理解し、尊敬し合い、根はいい人だと思っているときです。その場合は、うまくいくかもしれませんが、やはり社風への影響を考えるべきでしょう。ダメージが限られていて、他の分野で力を発揮してくれるのであれば、必ずしも会社の癌とは言いきれないのです。もしかしたら、共生可能な腫瘍であり、それでもなお成功できるかもしれません。
ちなみに、個人的な見解になりますが、私が知っている偉大な成功者の多くは、とても優しくて腰の低い方が多いような気がします。最初はそうでなかったのかもしれません。もしかしたら、成功してようやく肩の力が抜けたのかもしれません。成功した理由が優しさにあるとは限らないけど、間違いなく関連しているのでは、と私は感じています。
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