中国発のミュージックビデオのような動画が作れるアプリ「Musical.ly」は、どのようにしてアメリカのティーンの心をつかんだか?

SHARE:
Doin’ the dab. Photo credit: Gokudabbing.
dabをしているところ。
Photo credit: Gokudabbing.

ティーネージャーは不思議な存在だ。ティーネージャーの文化について、まれに本人たちから語られる情報や、たまに流れてくる内部情報(参考:年下の兄弟姉妹)以外からわかることは少ない。成人した大人にとって、ティーンとは理解しがたいものなのだ。

しかし、中国のソーシャルネットワーキングスタートアップの Musical.ly は、彼らの心をがっちりとつかんでいる。

「dab(ダブ)って何のことだか知っていますよね」と、Musical.ly の共同設立者で CEO である Louis Yang(陽陸育)氏。私が困惑した様子でいると、Louis 氏は驚いたような表情をして見せた。

Louis 氏は左手を伸ばし、曲げた右腕の中に顔を押し込んで見せ、「これが dab と言われるものです」と説明した。「アメリカの子どもたちは dab を流行らせようとしていますよ。どんなときでもね。」

Musical.ly は昨年の夏にスタートし、それから半年後に第一弾となるアプリをローンチした。15秒間の動画を作成するプラットフォームは北米のティーンたちに受け、Instagram や Snapchat と並び、アプリストアランキングのトップに登りつめた。最初はミュージックビデオの口パク動画を投稿するプラットフォームだったが、今ではちょっとしたお笑い劇やダンスまで、ありとあらゆる種類のパフォーマンスを投稿できるようになった。「Musers(Musical.ly のユーザを意味する)」の中には、独自のアパレルラインをローンチしたり音楽ツアーに出たりと、同アプリから有名人になった者もいる。

そして、上海に拠点を置く同社は、今ではライブストリーミングアプリ Live.ly にも取りかかっている。

Live.ly は、ユーザがファンや友達とやり取りするためのプラットフォームです。(Louis 氏)

Musical.ly との違いは、会ったことのない知らない人ではなく友達とのつながりに集中したことだという。

Live.ly では動画を何本も投稿するというよりは、日々の軌跡を残し、友達同士で交流するためのプラットフォームだ。つまり、ライブストリーミングに特化している。また、アプローチとしてはよりリアルタイムと言える。各ユーザが自分のチャンネルを持ち、写真や動画、ライブストリームを投稿する。しかし、Live.ly のチャンネル投稿はすぐに消えてしまうので注意が必要だ。24時間以内に新投稿をしてチャンネルを更新しないと、今まで投稿した内容が消えてしまうのだ。

継続して投稿しなければなりません。新しいコンテンツを追加していかないと、こんな風に消えていってしまいます。

Louis 氏はこう語り、チャンネル部分が白い静止画になっているテストユーザのアカウントを見せながら説明してくれた。

今のところ、Live.ly は Musical.ly の熱心なティーンユーザに受けている。6月にアプリがローンチしてからわずか数日後、Live.ly はアプリストアのランキングのトップに躍り出た。Louis 氏によると、Live.ly ユーザの60%が Musical.ly を経由してきているという。その理由の一つはデザインだ。2つのアプリはしっかりとクロスオ―バーされているのだ。例えば、Live.ly では Musical.ly のユーザがすでに持っているファンベースを Live.ly でも使うことができる。

Typical live stream on the left, danmu comments on the right.
左:ライブストリーミングの典型例、右:danmu(弾幕)と呼ばれるコメントシステム

Musical.ly からの新アプリ、Live.ly で素晴らしいのは、中国と欧米の製品仕様を融合させているところだ。例えばアプリのライブ放送では、ユーザはバーチャルギフトを送ることができる。これは Periscope や Facebook Live など欧米系よりも中国系のライブストリーミングプラットフォームによく見られる機能だ。もちろん、Live.ly のバーチャルギフトはティーネージャーの好みに合わせて作られている。バーチャルコイン5枚ではパンダを、1,000枚ではドナルド・トランプ氏の顔画像を買えるようになっている。

Live.ly では、「danmu」(画面全体に浮かび上がりスクロールされるコメント、弾幕)機能もサポートされている。もともとは日本を起源とする danmu は、中国の動画・ライブストリーミングサイトの人気機能であり、中でも Bilibili(嗶哩嗶哩) のものが有名だ。そして今やアメリカのティーンたちも弾幕文化を取り入れつつある。

Louis 氏はこのように語っている。

ティーンたちは投稿そのものよりリアクション、つまり弾幕に興味を持っています。まずは友達どうしで、次にインフルエンサーとそのフォロワー間に面白い相互作用が生まれていると見ています。

続いて Live.ly のバーチャルギフトについては、次のようにコメントした。

ユーザはバーチャルギフトを送ることによって愛を示しているのです。

観察し、学習する

Louis Yang, CEO of Musical.ly. Photo credit: Musical.ly
Musical.ly CEO Louis Yang(陽陸育)氏
Photo credit: Musical.ly

Musical.ly の台頭は、当初はティーネージャー、または北米市場では目立たなかった。実際中国から Musical.ly をローンチしたばかりの頃は、アメリカの親世代が頭を悩ませているインターネット上のいじめへの対応といった、ローカリゼーションに関する課題を突き付けられた。

Musical.ly は今では9,000万人以上のユーザを抱え、そのうち40%はアメリカ、40%はヨーロッパ、そして残り20%は南米とアジアに分布している。

Musical.ly の成功の秘訣は「ユーザの意見を聞くだけ」と、非常にシンプルだ。

「まずはデータを観察するようにしています」と Louis 氏は語る。例えば、Live.ly がユーザ間の親密なリアクションに焦点を置いたのがその例だ。Louis 氏も、「Musical.ly では、1人当たりのユーザに平均10人以上の友達、つまりリアルな友達がいることがわかりました」と話す。

Musical.ly にはアプリ内のトレンドコンテンツ観察に特化したチームがいる。例えば、ユーザがまるで固まっているかのような動作を取るマネキンチャレンジといったトレンドコンテンツだ。また、中国で人気のソーシャルメッセージングアプリ WeChat(微信)を使い、ユーザと直接コミュニケーションをとれるようにもしている。

いろいろなグループを作成し、ユーザがクールなもの、そうでないものについて話し合えるようにしています。バグ報告や提案は WeChat で送ってもらっています。(Louis 氏)

また、ユーザからリクエストされた機能をくみ取り、製品ロードマップに直接入れることもある。

ゆくゆくはビデオチャット形式のビデオコミュニケーション機能を追加し、その機能を Live.ly にも拡大しようと計画している。また、Vine のサービス終了に伴い、同社は動画ベースのソーシャルメディア市場のシェア拡大にも目をつけている。

実際、Vine ユーザのトップ層が Musical.ly に流れてきています。Musical.ly を新しい定着先として見出しているのです。彼らを歓迎するという意味でも、Musical.ly に Vine の機能をいくつか盛り込もうと思っています。

Louis 氏は微笑みながらこう語った。

【via Tech in Asia】 @TechinAsia

【原文】

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する