
編集部注:「隠れたキーマンを調べるお」は、国内スタートアップ界隈を影で支える「知る人ぞ知る」人物をインタビューする不定期連載。毎回おひとりずつ、East Venturesフェローの大柴貴紀氏がみつけた「影の立役者」の素顔に迫ります。
主力のゲーム事業を譲渡して、力強い成長を見せているEC事業に経営集中する事を発表したクルーズ。そのEC事業の主力サービスである「SHOPLIST」を生み出し、4年で年商150億円規模に成長させてきた同社取締役の張本貴雄氏にインタビューしてきました。クルーズ代表取締役社長の小渕宏二氏との「カッコイイ」エピソードも。
大柴:初めまして。今日はよろしくお願いします。ついこないだも自分のブログにクルーズのこと書いたばかりで気になっていたので、今日はいろいろお伺いさせてもらえればと思います!
張本:よろしくお願いします。
大柴:先日「選択と集中」を発表し、クルーズの主軸となった SHOPLIST を張本さんは管掌なさっていますが、現在おいくつなんですか?
張本:32歳です。2007年に新卒でクルーズに入社しました。
大柴:新卒入社なんですね。
張本:自分は実は他の会社から内定を貰ってたのですが、たまたまお手伝いしていた説明会で小渕の情熱的な講演を聴いて凄いカッコいいなと。「この人と働きたい!」って思って、内定貰ってた会社を辞退をしてクルーズに入社することに決めました。
大柴:それほど衝撃的だったんですね。
張本:はい。それで2007年4月に新卒入社しました。上場直後の頃で140人くらいの社員がいました。当時はカッコいい人と働きたいというのと誰よりも稼ぎたいというのがモチベーションだったので、とにかくバリバリ働いて成果出して小渕に認められて、というのを目指して仕事に没頭してましたね。
大柴:最初はどんな仕事についたのですか?
張本:入社当時のクルーズはモバイル事業と人材事業をやっていて、非常に勢いがありました。そんな中、入社して早速モバイル事業に関連した新規事業の営業マンとしてがむしゃらにやっていました。その新規事業自体は3カ月で撤退してしまったんですけどね(笑。
大柴:あら。
張本:その後はアライアンス営業やメディア事業などの部署を経験しました。でも自分としては事業は何でもよかったんです。当時は事業内容に対してモチベーションがあったわけではないので。
大柴:なるほど。

張本:その頃 CROOZblog などにも携わりました。社会人になって1年が過ぎ、2年目になる時にマネージャーに昇格したんです。初めて自分の部署を持つことになり CROOZblog のユーザーをターゲットに当時流行りだしていたバズマーケティング事業をやりました。ひとつのことを全て自分でやる中で、初めて事業というものを経験して学びが多かったですね。
大柴:事業の調子はどうだったんですか?
張本:すぐに月数百万円の売上を作ることができたんです。売上がたったのはもちろん CROOZblog があったからですし、もともと広告事業もやっていたんで既存のクライアントさんに営業かけたりもしてたので。
大柴:誰よりも稼げました?
張本:評価してもらえましたね(笑。チャンスを掴んで、それをものにできた気がしました。
大柴:その事業はさらに拡大したんですか?
張本:バズマーケティングをやる中でせっかく700万人のユーザー資産があるのならば、自分達で商品を売った方がいいなという考えになってきて CROOZblog を媒体にコスメ通販サイトを立ち上げたんです。それなりに売上は出て、利益も少ないですが出ていたんですが、このままでは伸びが止まるって感じたんです。それでリソースの半分をコスメからファッションに振ったところ、ファッションが想定以上に伸びたんで、コスメを辞めてファッションに絞りました。
大柴:なるほどなるほど。
張本:そして2010年、24歳の時に取締役に抜擢されました。でも自分としては辛い時期でしたね。そもそもBS/PLの見方もちゃんとはわからなかったし、取締役になったけど正直この頃はまだお客様や事業、仲間というよりは小渕の方を見て仕事をしていた気がします。
大柴:でも凄いことですよ。
張本:考え方もスキルも全然未熟だったんですよね。経営合宿があって何かの議論があった時に小渕は各役員に「○○はどう思う?」って意見を求めるんです。でも「張本どう思う?」って聞かないんです。
小渕も、僕が本質が見えていないことにおそらく気づいていたんだと思います。今考えてみればあれは小渕なりの教育だったんでしょうけど、当時は「何で僕に意見を聞いてくれないんだ?」って思いましたね。結局1年で取締役は降ろされて、執行役員になりました。
大柴:そうなんですね。
張本:何で自分が取締役になれたのか正直わかってなかったんですよね。取締役を降ろされた後、1カ月くらい悩んでました。小渕とも会話を全くしなかったです。
大柴:悩んだ期間が終わったのはなぜですか?
張本:吹っ切れたというか、やっと気づけたというか。これまでは「小渕のために」働いていたんですが、「会社のために」働こうと思ったんです。
大柴:なるほど。
張本:2011年からはユーザー資産を最大限に活かしたコマース事業を目指し、既存事業をモール化しました。数百社クライアントも集めることができたし順調ではあったんですが、実際に運営してみてこのままやっても売上のキャップが見えるなと思い、9カ月でモールを止めることになりました。
でもモール事業をやったことによって色々な通販事業の仕組みがわかったこともあり、そのノウハウを活かして2012年、新卒6年目の時に SHOPLIST をスタートさせました。これまでの反省や経験を活かし、時代のニーズに合致したこともあってか、出だしからいい数字が出てくれて4年で約150億という規模になりました。

大柴:凄い。
張本:マインドチェンジがあったことにより、見える世界が圧倒的に広がりました。ユーザーやクライアントさんのことを常に最優先にし事業を推進した結果、それまでよりも大きな成果を出せるようになりました。取締役を降ろされた時は悔しかったですが、結果としてその経験がバネになって成長に繋がったんじゃないかなぁと思います。
大柴:そして2014年、3年ぶりに取締役に復帰されましたが、どういった経緯で復帰されたんですか?
張本:業績的な結果も出始めていたので、正直「(取締役に)声がかかるんじゃないか?」とは期待してました(笑。ただ復帰の話が進んでいたことは全く知らなかったです。
忘れもしない2014年の3月、チームの仲間とみんなで飲んでいたところに小渕が突然やってきたんです。そして小渕が「張本、おかえり」って一言。泣きましたね。
大柴:いい話…しかもカッコイイ…。二度目の取締役ですが、どうですか?
張本:一回目の時は「取締役!カッコイイ!」くらいにしか思ってなかったのですが、今回は「役割」を強く認識していて、今回こそはしっかりと全うしようと考えています。新規事業など新しい種を蒔いて SHOPLIST とのシナジーを最大化させていきたいと思います。
大柴:なるほど。小渕さんにようやく認められたと思うんですが、小渕さんって張本さんから見て、どんな人ですか?最初に衝撃を受けた時と何か変化などありますか?
張本:最初に会った時と基本的には何も変わってないですね。まぁ以前よりかバランスがよくなった部分はあるかもしれません。ただ情熱的だし、誠実だし、当たり前のことを当たり前にやるし、周囲に気を使うし、変わってないですね。
大柴:ライバル視とかしたりするんですか?
張本:いや、それはないですね(笑。ああいう男になれたらいいなとは思いますが。
大柴:最後に張本さんの今後の夢などを。
張本:そうですね。世の中のインフラになるようなものを作りたいですね。永続的に伸びるような普遍的なサービス。そういうのを作っていきたいです。
大柴:なるほど、今日はありがとうございました!
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