自動車部品大手ボルグワーナー中国法人社長のTom Tan(談躍生)氏インタビュー「中国では、他の国より早く電気自動車ブームが訪れるだろう」

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BorgWarner 副社長兼同社中国法人社長の Tom Tan(談躍生)氏
Image credits: BorgWarner

コンピューティングと同様、移動手段としての車も、毎年加速度的に変化を遂げている。中国は世界最大の自動車市場だが、新エネルギー自動車(New Energy Vehicle、NEV)が目覚ましい成長を遂げており、業界には200社以上がひしめきあっている。

BorgWarner 副社長兼同社中国法人社長の Tom Tan(談躍生)氏は記者らと対談し、中国の NEV の盛り上がりと、自動車業界のトレンドについての考えを語ってくれた。以下は、インタビュー内容を編集し抜粋したものである。

今後10年の中国自動車業界の展望はどうなるでしょうか?

中国の自動車産業は今後10年も成長を続けると思いますが、これまでの10年にみせたような二桁成長よりはずっと低い成長率となるでしょう。全体の成長率は一桁前半と予想します。

現在、重要な4つのトレンドが進行しています。

  1. 中国の人口は世界最大で、都市化が急速に進んでいること。
  2. 中国の中産階級は依然増加し続けており、その購買力は成長を続け、ライフスタイルも変化していること。
  3. 大気汚染が深刻な問題になっていること。
  4. 政府が発表したエネルギー政策では、原油の輸入依存度を現在の60%台に保ち、段階的に減らそうとしていること。

最初の2つのトレンドは、中国の自動車産業が引き続き成長する確かな根拠になりますが、大気汚染と原油輸入依存により、政府はより厳しい燃費と排出ガス規制の制定を急いでいます。これら4つをまとめると、政府が電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)のような NEV の開発および、高効率で低排出ガスの内燃機関の開発を加速する大きな動機となります。

近年中国政府は、主に原油輸入を抑制すべく、NEV の開発促進に大きな労力を割いてきました。それが継続しますから、自動車産業全体は徐々に成長し、HEV と EV がはるかに高い成長率を見せるでしょう。次の5年は HEV が支配的であり、その後の5年はEVが主流となるでしょう。

内燃機関から電気推進システムへの移行が近い将来起こるとみられています。あなたの見方はどうでしょうか?

私の予想では、伝統的な内燃機関自動車の市場は今後7年間は頭打ちとみています。ピュア EV の成長率ははるかに高いでしょうが、それはとても小規模の市場から始まっていますし、現状のコストは高く、ユーザの利便性も低いです。したがって、全世界ではマーケットシェアは2%に満たないとみています。

しかし、中国では事情が異なるかもしれません。強力な政府の後押しと政策の誘導により、ピュア EV と PHEV は中国の全マーケットの4~5%に達する可能性があります。これは今後5~7年の間に年間100万台を優に超えることを意味します。中国には EV 製造に特化する新興メーカーが10以上あり、多くが資金調達の第1ラウンドで10億米ドル以上を調達したとしています。これらの企業から EV 第1号が登場するのは2018年から2020年ごろになるでしょう。

HEV は技術、コスト、CAFE(企業別燃費規制)の達成可能性において優位に立っているため、中国では HEV がより早く、またより大規模に普及するでしょう。最も強気な予想では、今後10年で HEV のシェアが20%に届くとしています。

完全な自動運転車が路上を走り始めるまでどれくらいかかるでしょう?商品のイノベーションにおいて最も大きな課題は何でしょう?

私たちにとって完全自動運転とは、まさに SAE の最高レベルであるレベル5を意味し、ハンドル、ペダルもなく、人間のドライバーもいない状態のことになります。完全自動運転車が走り出すまでには、どう考えてもあと10年かそれ以上はかかるでしょう。

解決しなければならない課題は多数あります。たとえば、(レーダー、ライダー、GPS、センサー、画像、レーザー、衛星マッピングによる)ナビゲーションシステムや、町の混雑や豪雪といった劣悪な状況でも車両が通信できるような、車両間(V2V)通信および車両とインフラ間(V2I)通信システムなどがあげられます。

BorgWarner Automotive Components (Ningbo) Co., Ltd. In Ningbo, Zhejiang Province, China
中国浙江省寧波市にあるBorgWarnerの自動車部品工場(寧波)
Image credits: BorgWarner

時とともに、自動運転車やライドシェア、オンデマンドサービスがより主流になり、自動車の販売は減少するといわれています。あなたは同意しますか?

はい、ある程度は同意します。自動運転車やライドシェアが主流になれば、一定の数の消費者は車を所有しないことを選ぶでしょう。しかし私は、かなりの間大多数の人が自分の車を所有することを選ぶと考えています。

確かに、自動運転車が主流になれば、市場には車をシェアする選択肢がはるかに増えるでしょう。特に、駐車場の確保が難しく、また高価である都市部では、個人が車を所有することは減少するでしょう。将来的に、車を所有することが何らかの不便をもたらすかもしれませんが、大多数の人が自分の車を運転する楽しみをあきらめるとは、必ずしも言えないと思います。車を所有することには社会的な意味があり、それはすぐには変わらないと思います。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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