カスタムオーダー「LaFabric」運営が4億円を調達ーーリピート率は9割、個人の採寸データ蓄積で生地の生産工場から直接スーツが届く「D2C」プラットフォームへ

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クラウド上に自分の採寸データを登録し、カスタムオーダーのシャツやスーツを注文できる「LaFabric」を運営するライフスタイルデザインは1月26日、総額約4億円の資金調達を完了したと発表した。第三者割当増資と金融機関からの借入を組み合わせたもので、増資については既存株主のニッセイ・キャピタル、IMJ Investment Partners Japan、ちばぎんキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタルの4社と複数の個人投資家が引き受けた。

個人投資家としては、コロプラ創業者で現在エンジェル投資家として活動している千葉功太郎氏や、岐阜県のテキスタイルメーカー三星グループで代表取締役を務める岩田真吾氏らが参加している。同社では今回の調達資金で組織体制の強化を図ると共に、カスタマイズアパレル事業の拡大および生産プラットフォームの開発を推進するという。

オンラインを活用した新興メーカーが次のステージに向かう。LaFabric のやろうとしていることを理解するには D2C(Direct to Consumer)というキーワードを紐解くといいかもしれない。いわゆるメーカー直販なのだが、より細かいパーソナルデータ(身体情報や嗜好なども含む)を保有することで、単なる「中抜き」効率化とは違ったビジネスモデルを模索しているのが特徴だ。この件についてはこの分野への投資も含めて知見のある Scrum Ventures の宮田拓弥氏が投稿しているポストに詳しい。国内も Lafabric の他にアパレルの Factelier や 眼鏡の Oh My Glasses などがこの界隈のプレーヤーとして知られている。

ソーシャルメディアが発達し、ようやく彼らのような新興メーカーが活躍する出番が回ってきた、というところか。2012年創業のライフスタイルデザイン社もこの流れにしっかりと乗っていこうとしている。同社代表取締役の森雄一郎氏によればサービスリリースから約3年が経過し、順調にリピーターが増えているという。

「店頭で購入してくれた方の9割がオンラインでリピートしてくれている状況です。これまではシャツが強かったのですが、最近ではスーツに比率が移っていまして、売上ベースではこちらの方が上回っていますね。大体平均価格で4万円ほどのものです」(森氏)。

サービス開始当初、私もひとつ疑問に思っていた「最初の採寸データ取得問題」、つまり最初の一回目のサイズ測定が異常にハードルが高く、そこまで普及しないのではという問題については、実店舗やポップアップストアなどのリアル販促を通じて解消していったという。この辺りはやはり一足飛びな方法はなく地味なやり方が結果的に効果あり、ということなのだろう。

また D2C では当然ながらメーカーとして強いブランドを押し出す必要が出てくる。過去には定期購入というワードで一括りにした時期もあったが、こういった高額単価のアパレルについては採寸データがあって注文が便利だから、という理由だけで質が度外視されることはあまりない。森氏もその点は強くこだわりを持っているようだった。

「縫製工場から直接仕入れるだけでなく、素材から共同開発するようにしているんです。例えば『THE TECH』のウォッシャブルスーツ。コインランドリーに入れると次の日に着れるものを目指しました。『THE SOCIAL』は自然のブルーベリーで染めていて、デニムっぽい味が出るってことで IT 界隈で人気なんですよ」(森氏)。

この他にも岐阜県の工場で生産される生地を使った「THE ROOTS」シリーズでは、珍しい製糸から染色までを一気通貫で実施してくれるという生産工程を含め、スーツにストーリー性を持たせるまでの拘りを見せている。森氏の話では、今後、D2C における重要なポイントとして、産地や工場、実際に着用するユーザーのあらゆるデータを蓄積することと合わせて、このストーリーなどに見られる体験性が挙げられると話していた。なお、ライフスタイルデザインでは100箇所以上の製糸や縫製といった工場と提携しているそうだ。

森氏はこうやって徐々に構築してきたエコシステムを今後、プラットフォームとして展開していくつもりだという。

「3.11などのこともあって、日本のものづくりが見直されたり、日本を再解釈する人たちが増えてきました。私も実際に工場や産地を回るのですが本当にいいものがたくさんある。でも産地の人たちにはこれを広げる力が弱くなっているんです。私たちは確かに一回目の採寸はハードルが高いですが、一度登録してしまえば、次からの利便性や体験性は高くなります。3年後や5年後にはおそらく多くの人たちが体のデータをオンラインに預ける世界がやってきます」。

ユーザーがスマホで注文したスーツや洋服のデータがすぐに縫製工場に届いて、地方のユニークな提携工場で縫製されて届く。森氏に聞くと、やはりカッティングや細かい部分の作業には職人技が今でも必要なのだそうだ。新興ブランドの裏側は人とテクノロジーの融合で成立しているのだなと思える話題だった。

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