今回の投稿は、本シリーズ「Discover Korea’s Tech(韓国のテックスタートアップを探る)」の第11弾である。数々の巨大企業が牛耳っていることで有名な韓国経済の中、自身が持つテクノロジーによって自立した韓国のスタートアップ起業家たちに話を聞いていく予定だ。数ヶ月に渡って彼らを追うこの企画を楽しみにしてほしい。@technodechina からシリーズ最新のストーリーをチェックできる。
スマホを取り出して、一番よく使うアプリをいくつか開いてみてほしい。それらすべてに共通している機能は何だろうか?使用目的にかかわらず、おそらくすべてのアプリにチャットまたはメッセージ機能があるだろう。
アプリ内メッセージ機能の普及
中国で人気のあるアプリをいくつか見てみよう。中国最大のライドシェアアプリ Didi(滴滴出行)では、ユーザはドライバーとメッセージをやり取りできる。中国最大の C2C e コマースプラットフォームである Taobao(淘宝)のアプリでは、ユーザは Alibaba Trade Manager(阿里旺旺)が利用可能で、この機能を使うと買い手が売り手に1対1で商品について問い合わせたり、さらには商品が本物かどうか、売り手の信頼性を確かめることもできる。
このようなアプリ内メッセージ機能は、成長を続ける分散型の C2C プラットフォームにおいて信用問題を軽減するのに役立っている。これらのプラットフォームではたいてい企業を介さずに個人間での取引が行われているからだ。
無駄な労力を使うな
もちろんどのサービスプラットフォームでも独自のメッセージ機能を開発することができる。しかし、他者が完成させたサービスがあるのにそれを作り直す必要があるだろうか?
「無駄な労力は避けるべきです」と SendBird のシェア拡大部門責任者の Mark Lee 氏は言う。SendBird は3月に Y Combinator の 2016年バッチから卒業したばかりのシリコンバレースタートアップだ。

Image credit: SendBird
注目すべきは、SendBird は各プラットフォームがアプリ内メッセージ機能をものの数分で構築できるよう支援するサービスだということだ。構築できる機能はフロントエンドのユーザインターフェースからバックエンドまですべてが含まれる。このようなサービスを使えば、スタートアップはメインのビジネスに集中し、API を開発・保守するコストを減らすことができる。例えば、e コマースプラットフォームだとすれば、SendBird がプラットフォーム内に最高のチャット API を実装し業務を円滑化してくれるので、企業は取引業務に完全に集中することができる。
中国発のプラットフォームがグローバル市場に進出するときは、プラットフォーム内機能を提供してくれるグローバルサービスプロバイダを探します。(Mark 氏)
市場が中国国内のみであれば、AliCloud(阿里雲)のように中国国内にしかサーバを配置していないサービスプロバイダを使うのが一般的だ。しかし、グローバル市場では、全世界からのトラフィックをさばけるグローバルサービスプロバイダとの提携が決定的に重要になる。これは、北京のゲーム会社 JoyCrafter(頑石)が世界進出する際に考えたことでもある。JoyCrafter が「World Warfare」を全世界に公開した際、ユーザ間で自由にコミュニケーションができるよう SendBird と提携した。
モバイルとウェブに根付いた大量コミュニケーション
実際、アプリ内のソーシャル機能はもはや単なる1対1のメッセージ機能ではなく、共通の趣味関心によるグループやライブイベントの参加者など数千人単位のユーザがお互いにやり取りできるアプリ内コミュニティに発展している。

Image credit: SendBird
アプリ内チャットの最も基本的な目的は、コミュニティを作りエンゲージメントを最大化することです。そしてそのためには、スケーラビリティが保証されていなければならないのです。(Mark 氏)
これはつまり、プラットフォームは同時に大量のユーザのアクセスを処理できなければならないということだ。
この一つの表れが、対話機能のあるライブ動画アプリだ。この分野は Facebook と Youtube が新規公開したライブストリーミングサービス、そして世界有数のゲームユーザ向け動画配信プラットフォーム兼コミュニティである Twitch により2016年に最大の急成長を遂げている。中国でも多数のライブ動画用モバイルアプリが活況を呈している。

Image credit: Sina(新浪)
SendBird のスケーラビリティ
1対1のチャットと数百万人が同時にチャットすることの技術的な違いを考えてみてほしい。この2つでは、プログラムアーキテクチャの基本的な設計が異なる。SendBird の強みはスケーラビリティに配慮してある点にあり、ライブ動画1本あたり10万人超の同時視聴者をホスティングし、エンゲージメントの最大化を図ることができる。
世界中で増え続けるトラフィックを処理できるシステムの信頼性の維持は、純粋にこの SDK(ソフトウェア開発キット)を作り上げた技術レベルとサーバの配置(SendBird の場合は東京、シンガポール、ヨーロッパ)に依存している。

Image Credit: SendBird
実際、この大量コミュニケーションは多量のデータを意味します。データは、プラットフォームにとってユーザをよりよく理解し、同時にプロセスを円滑化するために非常に重要なものです。そのため、SendBird では顧客に管理用ツールを提供しています。この管理ツールではチャットルームを事前にモニターして会話をモデレートしたり、不適切な発言を自動的にフィルタして炎上を避けることができます。
同社は韓国未来創造科学部(MSIP)傘下 K-ICT Born2Global Center の支援を受けている。
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