2016年、e27はあらゆる車いすを電動の乗り物に変えるスタートアップを特集した。今、また新たにシンガポールのチームがもう一歩先を行く自動操縦車いすの開発に取り組んでいる。
MIT(マサチューセッツ工科大学) Hacking Robotics Singapore 2017にて、Kok Yuan Yik 氏率いる Botler チームは同国で需要が増加している高齢者ケアにおいて誰が最も革新的なソリューションを提供できるかをめぐり、83の参加チームと競合した。
MIT Hacking Robotics Singapore 2017は2日間にわたって開催されたロボット工学のハッカソンで、ディープテクノロジーを重点的に扱う協業施設 SGInnovate と提携して行われたもの。
すべてのチームは Segway が製造した小型二輪ロボット工学プラットフォーム「Loomo」を使用しなければならない。これには SDK(ソフトウェア開発キット)、ハードウェア拡張、そしてベイが内蔵されているのでソフトウェア開発者はカスタマイズしたソリューションを作ることができる。
Loomo は顔認識および音声認識システム、位置追跡、自動で稼働するマッピング機能と言った一連のスマート機能を持つ。さらに、最大時速17.7キロメートル、また一回の充電で最大29キロメートル移動することができる。
惜しくも1位を逃した DORI や Nurse On Wheels といったチームは Loomo をパーソナルケアアシスタントへと転換させたが、Kok 氏はつまるところ、ローテクとスマートテクの融合を果たしたのだ。
車いすが自動で動けるように
彼らのソリューション「Botler」の本質とは、車いすの付属品として Loomo を利用し、車いすを電動化するだけでなく自動運転できるようにしたものだ。
Kok 氏は e27にこう語っている。
介護人を雇う際に直面する課題や車いす利用者を介護する際の労働集約度に気づいたのです。そこで、私たちは Loomo を「ハック」して車いす利用者を自動で移動させるのはどうだろう?と自問したのです。
アプリを利用すれば、医療従事者は指一本動かすことなく車いすに座る患者を希望の位置に移動させることができるようになる。また、彼らは患者を追跡し、アプリを通じて話をすることもできる。これは認知症などの認識障害を抱える患者にとって非常に重要だ。
Kok 氏によると、彼らのチームが直面した問題の一つは、Botler を自動で車いすにドッキングさせることだったという。
最終的に、彼らはほとんどの車いすに取り付け可能なユニバーサルアダプター、そして Loomo に接続する磁気ドッキングメカニズムを考案した。
さらに Kok 氏は次のように続けた。
自らを自動で車いすに取り付ける機能の他にも、同メカニズムは自らバランスをとる Segway 独特の運転挙動に適応しなければいけません。完全に自動化するためにも、私たちは Botler のドッキングメカニズムにさらに複雑な自動充電機能を追加しました。
彼らによると、Botler を安全に展開していくためには他にも課題点があるという。たとえば、急停車した際に患者が放り出されないよう Botler の最高速度を落とす必要がある。また、障害物を発見するために視野(FOV)を拡大しなければならない。
それでも、Loomo を巧みに利用した Botler により、Kok 氏率いる同チームは賞金として5,000米ドル(約56万円)を獲得した。他にも、Loomo や試作品製造研究施設へのアクセス権、また彼らのソリューションを商業的に立ち上げローンチするための資金提供を受けられるようになる。
さらに、彼らは Emtech Asia 2017で MIT Technology Review が主催するテックカンファレンスに登壇パネラーとして参加する予定だ。
シンガポールが認知症患者の増加に悩む中、Botler のようなソリューションが医療従事者の負担を軽減してくれるだろう。
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