「通信量込月額9980円」で15キロ圏内の広域ネットワーク構築を可能にーーSORACOM LoRaWAN がシェアリングの概念で安価な IoT 通信を実現

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ソラコムが昨年5月に発表したとあるプランが正式公開する。ーーしかも相当にパンチの効いた内容だ。詳しく説明しよう。

「モバイル通信のクラウド化」を推進する IoT 通信プラットフォーム「SORACOM」を提供するソラコムは2月7日、省電力広域(LowPowerWideArea、以下 LPWA)の通信方式のひとつ LoRaWAN 対応を正式に発表した。これに伴い、同社の提供する「SORACOMAir」にて既存のモバイル通信方式である「セルラー(3G / LTE)」に加えて「LoRaWAN」が扱えるようになる。

また、この LoRaWAN を利用するために必要な通信基地局に相当する LoRaゲートウェイと、この通信を受信するために必要な LoRaデバイスを本日より販売開始する。料金体系については占有モデルと共有モデルについて解説が必要なため後述する。

この LoRaWAN は昨年5月にソラコムが資本業務提携を発表した M2B コミュニケーションズと7月から実証実験(PoC)キットを販売しており、今回の正式サービス発表に繋がった。LPWA および LoRaWAN については前回記事を参照いただきたい。

大型調達のソラコムが出資側にーー誰もが15キロ圏内の広域ネットワーク事業者になれる新たな展開を発表

通信量込みで月額9980円からーーIoT サービス事業者が基地局を持てる時代に

ソラコムの LPWA 事業参入は昨年発表されたもので(これはこれでもちろん相当衝撃的なのだが)今回発表された新サービスも想定通りのものだった。だが、ひとつ想像をはるか斜め上に飛んでいく内容があった。

それが価格だ。

LoRaWAN は前回記事を参照いただけば分かる通り、ある狭小エリアに対して専用のゲートウェイ(ソラコム謹製 SIM 入り)を設置すれば、その約15キロ圏内でプライベートネットワークを構築することができる。雑に言えば、家庭に置いてある自分だけの無線LANが都内で使えるみたいなイメージのものだ。

家庭用の無線LANネットワークだったら家族の写真や、プライベートなデータを家族間でやりとりするようなこともできる。つまり、LoRaWAN はそういった特定用途のサービスをもうちょっと広いエリアで、しかも自分がサービス事業者として第三者に有償で提供することができるものになる。

例えば特定エリアの介護者の行動データや、道路などの生活インフラの破損状況などの情報、水道メーターやパーキングメーター情報の遠隔収集などなど「毎回の通信量は多くないが長期に渡って安定した通信が必要」なサービスに向いている。

つまりこれらは、私たちが普段使っているスマートフォンの通信とは全く異質なデータを扱うサービス、とも言える。ここをターゲットにしたのが LoRaWAN、ということなのだ。

前置きが長くなったが、ではこの通信を幾らで使えるのだろうか。

ソラコムの発表では二つのプランを用意している。基地局となるゲートウェイを占有(自由に設置、移動)できるプランは1台あたり6万9800円の初期費用と月額3万9800円(2台目以降は2万9800円/同一オペレーターの場合のみ)。他者とゲートウェイを共有、設置場所等の情報を公開する共有プランは2万4800円の初期費用と月額9980円が必要になる。

昨年の参入発表時にはゲートウェイの価格が数十万円と言われていただけに、共有プランの価格はサービス提供者の広がりを得られそうな内容ではないだろうか。

そしてさらに驚きなのが通信料金だ。なんと、この月額料金に通信料が含まれているのだ。

ソラコムが提供している月額費用例を見ると、例えば遠隔地でゴミの量が分かって廃棄タイミングを伝えるような「IoT ゴミ箱」を想定し、1日144回の少量通信を行った場合、エリアに設置するゲートウェイが4台で、2000台のゴミ箱の情報をカバーして月額3万9920円という試算を公表している。

1台にすれば月にかかる通信費用は基地局含めて19.9円しかかからない。サービス事業者がもしこの「ゴミの量が可視化できるインターネットゴミ箱」を月額1000円で貸し出せば、なかなか現実的な商売になるのではないだろうか。なお、通信には専用の発信側モジュール(LoRaデバイス)が必要で、こちらは7980円にて販売される。

ソラコム代表取締役の玉川憲氏の説明では、よりセキュリティなどの要件が高まる企業利用には占有プラン、モバイル通信の共有というチャレンジングな領域に興味ある事業者は共有プランを積極的に活用するのでは、という見立てだった。

共有プランでは事業者が設置したゲートウェイをウェブサイト「SORACOM LoRaSpace」にて情報共有する。既に誰かがゲートウェイを設置していれば、そのゲートウェイを間借りすることで広域ネットワークを活用することが可能になる。(この場合も月額費用等は必要)

共有プランでゲートウェイを設置する先行者メリットみたいなものは?という質問に玉川氏は、様々なキャンペーンを通じてアイデアを考えたいという意向だった。例えば設置に協力した事業者は更に月額費用が安くなるといったメリットも出てくるかもしれない。

最近、ソラコムを活用したエンドユーザー向けサービスを散見することが多くなった。これまで国や特定キャリアのコントロール配下であった通信インフラがソラコムによって「民主化」された時、どういうサービスが広がることになるのか。本当に興味深いサービスだと思う。

修正補足:記事初出時に共有モデルの月額費用を9800円と誤表記いたしました。正しくは9980円です。訂正してお知らせ致します。

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