「エンジニアが事業のトップ・ラインを決めるんです」ーーグロースハックの Kaizen Platform に新 CTO が就任

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写真左から:CEO の須藤憲司氏、新 CTO の渡部拓也氏、前 CTO で共同創業者の石橋利真氏

ウェブサイトのUI改善を実現するプラットフォーム Kaizen Platform(以下、Kaizen)は2月1日、経営体制の強化に伴い、グリーやスマートニュースで活躍したエンジニア渡部拓也氏が同社 CTO(最高技術責任者)に就任したことを公表している。

同社はこれまで共同創業者であった石橋利真氏が CTO として初期プロダクトの開発を支えてきたが、創業から約4年が経過して陣容も大きく変化する中、石橋氏はより営業現場に近い場所でプロダクトの製作に携わることにしたという。

渡部氏はNTTコミュニケーションズなど数社を経験したエンジニアで、2010年に在籍したグリーではネイティブゲーム事業で責任者を務めた他、前職となるスマートニュースでは広告プロダクトに携わった人物。kaizen には昨年10月から参画し、CTO として開発現場の指揮を執ることとなった。

エンジニアが事業のトップラインを決める

同社 CEO の須藤憲司氏は昨年比で1.6倍の事業成長を示すなど、見た目の数字の順調な積み上げとは裏腹に徐々に現場でエンジニアリングと営業の乖離が発生しつつあることを認識していたという。

「2013年の創業から4年。フェーズが次の段階に来ていることを実感していました。数字が好調である一方、営業は営業で売ってくる、エンジニアはエンジニアだけで商品を作ってしまう、という乖離が起こりつつあることもわかっていたんです」(須藤氏)。

こんな状況下で出会ったのが渡部氏だった。須藤氏は渡部氏と話した際、彼と一緒に仕事をしたいと思わせた一言があるという。

「初めてお話した時に言われたのが『エンジニアが事業のトップラインを決めるんですよ』っていう言葉だったんですね。ああ、そうだ、正しいなと」(須藤氏)。

Image Credit : Kaizen Platform ウェブサイト

kaizen はエンジニアリングとクラウドソーシング、つまり人の手を組み合わせたハイブリッドなサービスとなっている。言い換えれば人の手が使えるわけで、相当ユニークな案件であっても画一的なシステムとは違い、人の手を介せば売れないことはない。しかし、そうやって半コンサル的に営業販売を積み上げてもずっと人の手がかかり続けることになり、結果的に解約が多くなってしまう。

「期待と違うものを売ればチャーン(解約)する。大切なのはプロダクトなのか営業なのか。ここで新規を取ってくる中毒みたいな状況を止めることにしたんです」(須藤氏)。

須藤氏によれば現在はこの営業とプロダクトの乖離が改善され、うまく回り始めるようになったという。渡部氏はどのようにその溝を埋めたのか。

「別に新しいものを作ったわけじゃないです。プロダクトの強みってなんだっけ、自分たちの価値はなんだっけ、それを言語化して見える化しました。やり方ですか?Qiita にそっと投下しておしまい、です(笑。でも今までの方法がいいとか悪いとかそういう話じゃなくて、こういうやり方がいいんじゃないかな、とかさりげなく言ってみる感じですかね。作りたいエコシステムってこうだよね、とか。あと具体的に例を出すことは大切です。Amazon だったらこうだ、とか、完成してるエコシステムを提示したりとか」(渡部氏)。

話を聞いていて改めて納得したのはフラグシップ・モデルの重要性だ。kaizen のように「世界のあらゆるウェブサイトを改善する」というわかりやすいビジョンがある場合、よくあるのが「じゃあどうやってやるの」という実装が間に合わないパターンだ。理想と現実のギャップが大きければ大きいほど、開発や営業の現場は混乱してしまう。

渡部氏にその手法を尋ねるとこんなたとえ話を例に説明してくれた。

「子供の時、スキーってなんだか長方形の板だったじゃないですか。あれがいつの間にかカービング・スキーに変わっていった。でもよく考えてみてください、スキーですごい曲がりたいっていう欲求ってありました?あれってプロの人たちが使ってる板で曲がってる姿をかっこいいって思って、それが一般化していく流れじゃないですか。でも、気がついたら普通の人たちでも安全に曲がれる世の中に変わるわけです。これって動機をうまく顕在化させたいい事例だと思うんですよね」(渡部氏)。

kaizen では現在このわかりやすいフラグシップとなるプロダクトを準備中で、現在大手企業での導入テストを実施しているのだそうだ。詳細は後日ということだったが、どちらかというと今ある顕在化した課題を解決するソリューションというよりは、潜在的な課題を発見してくれるツール、というものになるらしい。

グロースハックという言葉でオンラインマーケティングに明確なポジションを獲得しつつある同社が、新体制になってどのように拡大するのか。新たなプロダクトの話題と共にまたお伝えできればと思う。

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