この間の春節期間中、WeChat(微信)は、紅包(ホンバオ:中国のお年玉のようなもので、お祝いの時などに贈るお金)の新サービスの試験運用を行った。この新サービスでは、既存の紅包サービスと同じシステムを利用して、ユーザ間で金(きん)の受け渡しを行うことができる。
紅包と同様に黄金紅包においても、贈り主は、金を特定の人数に均等に割り当てるか、もしくは、トータルの量と人数だけを決め、運試しもかねてシステムにランダムに割り当ててもらい、チャットグループに送信することができる。

(Image credit: 企鵝生態)
2017年1月後半、Tencent(騰訊=WeChat の親会社)のオンライン決済部門 Tenpay(財付通)と、最大級の国営銀行である中国工商銀行(ICBC)は、オンライン金投資サービス「微黄金」を共同でローンチした。今のところ、微黄金は、黄金紅包に金を供給する唯一のサプライヤだ。
黄金紅包サービスよりも数日前にローンチされた微黄金は、WeChat サービスアカウントとして構築されており、そこでは、WeChat ユーザが金を直接購入したり、金投資に関する情報にアクセスすることができる。現在のところ、このサービスは手数料なしで利用可能だ。
黄金紅包をやり取りするために、ユーザは微黄金サービスを利用してアカウントを有効にしなければならない。つまり、微黄金サービスの WeChat サービスアカウントに登録する必要があるのだ。この仕組みにより、登録ユーザ数の増加が見込まれる。2014年前半、紅包サービスでも同じ仕組みが使われ、ローンチした直後にも関わらず、WeChat Payment(微信支付)での銀行カード登録を大量に獲得している。2016年3月時点で、銀行カードを登録しているWeChatアカウント数は3億以上にのぼる。
黄金紅包と紅包で大きく異なる点は、もちろん、金の価格は時間が経つにつれて変動するということだ。しかし、昔から金は安全資産とされていることや、中国では金を贈り物にする文化があることから、多くのユーザは黄金紅包の方を好むのではないかと考えられている。
中国は4年連続で世界最大の金消費国となった。中国人投資家の間で金の人気が上がっていることが最近明らかになった。これらの投資家は、国営銀行が運営するオンラインプラットフォームを利用しているため、上海金取引所で投資を行うことができる。

(Image credit: 企鵝生態)
WeChat とその親会社 Tencent がある広東省のような中国の一部の地域では、金を使った装飾品などの贈り物を贈ることは伝統とされている。
中国で評判のビジネスジャーナリスト Wu Xiaobo(呉暁波)氏が出版した Tencent に関する最新本「騰訊伝」によると、WeChat の紅包プロジェクトは、もとはといえば、春節明けの仕事始めの日に、Tencent の経営者らが従業員に紅包をあげる便利な方法を編み出すために始まったものだそうだ。
WeChat の紅包は驚くほどの人気を集め、今では中国で最も利用されているモバイルウェブサービスの一つとなった。WeChat によると、陰暦の大晦日にあたる2017年1月27日だけで、142億個の紅包がやり取りされたという。
微黄金の他にも、Tencent はこれまでにオンラインファイナンス分野で幅広くサービスを打ち出してきた。たとえば、オンライン決済の Tenpay、オンライン金融商品マーケットプレイスの Licaitong(理財通)、オンライン個人ローンの Weilidai(微粒貸)、信用格付けの Tencent Credit(騰訊征信/騰訊信用)、クラウドサービスなどである。Tencent のソーシャルサービス WeChat と QQ では、すべての消費者向けサービスを簡単に利用することができる。2015年には、Tencent が30%の株式を保有するオンライン専用の民間銀行 WeBank(微衆銀行)が開設された。
Tencentは現在、モバイルファイナンス分野において、Alibaba Group(阿里巴巴集団)の金融部門である Ant Financial Services Group(螞蟻金融服務集団)と真っ向勝負の状態にある。Ant Financial Services Group もまた、Alipay(支付宝)アプリを通じてモバイル上で、金投資を含めた幅広い金融商品とサービスを提供している。しかし、AntとAlibabaには、商品の成長を押し上げてくれる WeChat や QQ のようなソーシャルツールがない。というのも、そうしたツールを手に入れようと何度か挑戦しては失敗しているのだ。
WeChat 紅包とやり合うために、Alipay は2017年の春節の前に AR 紅包というサービスをローンチし、さらに、休暇期間中には紅包キャンペーンをいくつか行ったが、この Alipay と Alibaba 傘下企業による試みによっても、WeChat 紅包ほど持続性のある人気を得ることはできなかった。
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