世界中の頭脳が集結~イスラエル「BrainTech 2017」カンファレンスレポート【ゲスト寄稿】

chikara-ueno

本稿は、イスラエル・テルアビブの Samurai House を拠点に事業展開している、Aniwo 共同創業者兼 COO 植野力氏による寄稿である。Aniwo は2014年8月の創業、2015年1月にサムライインキュベートからシードラウンドで10万ドルを資金調達していることを明らかにしている

Aniwo は現在、イスラエルのスタートアップと投資家のマッチングプラットフォーム「MillionTimes」を運営。月に一度、異なるテーマのイスラエルスタートアップを紹介する「Pitch Tokyo」を開催している。


ブレインテック(脳神経科学)という言葉に馴染みのある読者の方はどれくらいいらっしゃるだろうか?

イスラエルでは現在、脳神経科学を活用したスタートアップが100社以上活動している。今回は、イスラエルで行われた脳神経科学分野に特化したカンファレンス「BrainTech 2017」の様子をお届けしようと思う。

BrainTech 2017 の主催は、イスラエルのブレインテック・スタートアップハブである非営利団体の Israel Brain Technologies。中東和平でノーベル平和賞を受賞、昨年死去したイスラエル国前首相で、科学技術やスタートアップエコシステムの積極的な支援を行っていた Simon Peres 氏が設立を主導した団体だ。

同団体は、BrainTech のようなグローバルカンファレンスの他にも、ブレインテック・スタートアップ企業の創業支援を行うアクセラレータープログラム「Brainnovations」や、投資家や大企業のネットワークを活用してブレインテック・スタートアップの資金面での支援を行う「Braingels」などを通じて、ビジネス化に向けて時間やナレッジ、資金を必要とするブレインテック・スタートアップの創業からスケールアップ支援を行っている。

Simon Peres 氏の子息で、Pitango VC 創業者の Chemi Peres 氏

キーノートスピーチでは、イェール大学や UC バークレー、WHOといった世界中の研究機関の研究者や、ノバルティスやファイザー、テバといった製薬会社の研究者や投資担当者が登壇、アルツハイマーやアイスバケツチャレンジなどで話題になったALS(筋萎縮性側索硬化症)、脳卒中や鬱などといった脳神経や中枢神経関連の疾患の原因特定や治療法に関する最先端の研究や取組みなどを紹介、議論を行った。

神経科学の領域はガンに次いでベンチャー投資が増えており、近年では薬物療法だけではなく脳波センサーやBMI(Brain Machine Interface)、ソフトウェアアルゴリズム技術の発達により、メディカルデバイスを用いたアプローチも増えているという。

カンファレンスで行われたスタートアップのコンペティションでは、Brainnovations に採択されたブレインテック・スタートアップ企業5社がピッチを行い、VR を用いた神経認知障害の診断および治療モニタリングシステムを開発するEyeMind が優勝、サンフランシスコ行きの航空チケットを獲得した。

パビリオンでブースを出展していた企業の中では、簡単なアンケート結果と唾液サンプル、NIH(アメリカ国立衛生研究所)のデータベースを機械学習技術を用いて解析することで鬱患者向けの適切な治療の意思決定をサポートする Taliaz Diagnostics や、Microsoft Accelerator へも採択されている、Kinect 上でのリハビリゲームを制作、画像処理と機械学習を用いて個人の認知能力に適した難易度のゲームを自動生成する Intendu、音声認識技術を活用した認知障害の早期診断などに取り組む Beyond Verbal のブースなどに多くの人が集まっていた。

本カンファレンスには、イスラエル内外のVCやIBMなどのIT企業、日本からも大手企業の研究者が訪れるなど、世界中から1,000名以上の参加者があった。脳神経や中枢神経の活動を明らかにすることで、患者にとってはより効率的で安価な治療法を提供、一般消費者に対しても集中力や認知能力、興味の度合いを明らかにすることで生産性向上やマーケティング、スポーツ、教育などの分野での活用が始まりつつあるブレインテックに、世界中の企業や投資家からの密かな注目が集まりつつあることが感じられた。

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