超高速輸送システムのHyperloop、インドネシアでの実現可能性を調査開始

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Hyperloop の構想図
Photo credit: Hyperloop Transportation Technologies

Hyperloop Transportation Technologies (HTT)は、未来型の真空管を利用した輸送システムを開発する企業だ。同社は、インドネシアにおいて可能性が見込まれる3つのルートについて、250万米ドルを投じて実現可能性調査を実施することを発表した。

また、HTT は、インドネシアのパートナーと合弁事業契約を結び、Hyperloop Transtek Indonesia を設立した。HTT で COO を務める Bibop Gresta 氏は、本日(3月7日)ジャカルタで開催されたカンファレンスで Tech in Asia に対しそう語ってくれた。

Bibop 氏とその現地パートナー、起業家の Dwi Putranto Sulaksono 氏と Ron Mullers 氏は昨日(3月6日)、インドネシアの運輸省で契約を結んだ。

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Dirk Ahlborn 氏とHyperloop Transportation Technologies を共同設立した Bibop Gresta 氏
Photo credit: Hyperloop Transportation Technologies

HTT は、インドネシアの3つのルートで Hyperloop システムを開発する計画をこれから具体的に検討していく。ルートは、北スマトラ内に1つ、ジャワ島を横断して空港間を結ぶものが1つ、ジャカルタと衛星都市タンゲランを結ぶもの1つの全部で3つだ。

信じがたい現実

Hyperloop は基本的には1本の長い管で、真空に近いところまで減圧される。内部では乗客が乗るカプセルが磁気浮上によって浮く。もちろん、貨物輸送にも使用可能だ。Hyperloop ではほぼ摩擦のない状態で輸送ができるため、エネルギー効率が良い。

さらに、Bibop 氏によると、ソーラーパネルが組み込まれているので、Hyperloop は「ポジティブ・エネルギー」にもなりうるという。 HTT の Hyperloop は自らが使用する以上のエネルギーを生み出すため、余剰電力を売却するなど乗客運賃以外の方法でもこの輸送システムをマネタイズすることできる、と Bibop 氏は考える。

Hyperloop のコンセプトは、Tesla および SpaceX の創業者 Elon Musk 氏によって2013年に初めて提案された。

公開されている情報によると、Musk 氏が基本的な技術的要件について大まかにまとめ、他の起業家たちにこのアイデアを商業化するよう呼びかけたようだ。

Hyperloop に利用されるコア技術の合理性については大方の納得を得ているが、現実のコストと規模の問題をクリアできるのかについては、まだ議論の余地がありそうだ

アブダビをめぐる戦い

誰が商業用 Hyperloop のラインを最初に構築できるのか、戦いは HTT とそのライバル Hyperloop One との米国企業同士のほぼ一騎打ちとなった。

どちらの企業も世界各地でパートナー契約を得ようと試みている。また、異なる規模で調査用ラインや実験場の運営も行っている。

HTT が特徴的なのは、その構造もまた革新的だという点である。Bibop 氏によると、社員はコアチームの35人ほどで、現時点で800人のボランティアスタッフと協力して運営を行っているそうだ。ボランティアスタッフは報酬として勤務時間に応じたストックオプションを受けられるという仕組みを設けている。

こうしたこと全てが、HTT の目指す Hyperloop 実現がただの夢物語に聞こえてしまう理由になっている。Bibop 氏はそうした懸念を認識しているが、「ユニークなアイデアにはユニークなソリューションが必要だ」という姿勢で、それを払いのける。

初の商業的な実現が見込まれる場所はアラブ首長国連邦だ。Hyperloop One がアブダビとドバイを結ぶラインを提案する一方で、HTT はアブダビとアル・アインを結ぶラインを狙っているようだ。

HTT チームはインドネシアに来る前にインドの政府関係者と会談した。 Bibop 氏によると、同社はフランス、スロバキア、チェコなど多くの国で契約に向けた交渉を行っているという。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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