「直接的にサービスがないものには可能性がある」ーー日米一体開発のメルカリが語るグローバル展開の状況 #bdash

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写真左から:フェイスブックジャパンの長谷川晋氏、C Channelの森川亮氏、メルカリの山田進太郎氏

トヨタ、ホンダ、ソニー、任天堂。

国内経済を牽引した事業の先人たちは積極的に海外へ進出し、多くの外貨を日本にもたらしてくれた。時代は平成に変わり、インターネットの勃興はスマホなどのデバイスや、個人間取引といった新たな経済圏を生み出すことに成功した。

インターネットは時空を超える。情報が瞬く間に世界に広がる世界観は、それまで想像しなかったスピードでビジネスを拡大させ、世界にはGoogleやFacebook、Amazonといった巨人が誕生している。

この大きな経済パラダイムシフトの中で従来の輝きを失ったのが日本だ。テレビや車といった「モノ」が中心だった時代と異なり、日本語・日本文化の体験性に染まった情報サービスはそのまま海外に輸出することが難しい。

脈々と続く「なぜ日本からGoogleが生まれないのか」論に終止符を打つのは誰だろうか?

日米合計でダウンロード数は6000万(日本が4000万、アメリカが2000万)を突破したメルカリは、イギリスを拠点に「Mercari Europe」を設立、ユーロ圏での本格的なサービスインを発表した。

今日から福岡で開催されている招待制カンファレンス「B Dash Camp」の壇上に上がったメルカリの山田進太郎氏は改めてグローバル展開に力を入れると語る。

「(メルカリの前身となる)会社を作ったのが4年前でアメリカ展開を始めたのが2年半前。そして今日、UK版を始めた。国内の成長はよかったがまだまだで、これからしばらくは海外、特にアメリカに力を使う」(山田氏)。

メルカリが米国に注力する一方、アジア展開を進めるのが森川亮氏率いるC Channelだ。現在同社が展開するのはタイや台湾、インドネシア、フィリピン、マレーシアにシンガポールと広大で、インドネシア進出は現地法人を子会社化して実現。中国ではWeiboの影響力のある企業で4位に選ばれるなど躍進が続く。

そんな森川氏がグローバル展開時のマネジメントのコツについてアドバイスしていた。ポイントは「組み合わせ」にあるという。

「(グローバル展開に適してるのは)やはり柔軟性があって勉強する人ですね。それは現地人であろうと日本人であろうと同じ。マネジメント面では言葉や(人間の)裏側が分かった方がいいし、そもそも女性の気持ちを理解できないと。ただ、これを全部持ってる人はやはりいないので(人材の)組み合わせが大切ですね」。(森川氏)

あとなにかと怪しい話が多いアジア圏での世渡りについては「とにかく信頼できる人から辿ること」と一言。日本語が喋れて意気投合したから提携しました、という”ありそうな”流れには注意を促していた。

メルカリ米国展開の状況

セッションで興味を引いたのはやはりメルカリ世界展開の状況だろう。昨年に米国アプリストアランキングで上位を獲得した際は大きな話題となるなど周囲の期待は大きい。本当に日本発のフリマアプリは世界に受け入れられるのか?

ここまでのチャレンジを山田氏はこう振り返る。

「C2Cモデルはアメリカ、ヨーロッパでもダイレクトな競合はいない。そもそも、アメリカで流行っているものを日本でやったほうが確率が高いと思うし、日本でメルカリがうまくいったからって欧米でうまくいく保証はなかった。(ただ自分たちは)ホームラン狙いみたいなところがあるので、だからこそ日本でサービスを開始してそれを海外に持っていった。直接的に(サービスが)ないものには可能性がある」。

では具体的にメルカリはどのようにしてグローバル展開を実施しているのだろうか。山田氏は日本に地の利があるのであればここを起点にすればいいと語る。

「(メルカリ米国版は)15人のアメリカ在住の開発チームと日本国内の100人ほどのチームで一緒になって最初のマーケットフィット(PMF)をやって、アメリカ版の状況によって現地の人を(開発チームに)混ぜながら進めてきました。日本のチームに対してアメリカの方をマージしていくようなイメージ」(山田氏)。

開発は日米一体で進める一方でそれ以外のパート、例えばマーケティングなどはやはり現地ローカル中心で実施する。山田氏は日米マーケティング施策の違いについてこう話す。

「日本では例えばスポーツや芸能のイベントをやったりとブランディングの段階に入ってますが、アメリカとかはまだFacebookやTwitterの広告を使ってユーザーがアクティブになるかどうか、ユニットエコノミクスが健全な状況なのか、それをちょっとずつバジェットを増やしながら確認している状況ですね。ブランディングの段階はまだもう少し先」(山田氏)。

海外ではマーケティングの違い以外にも法律や金融的な規制、流通、支払い方法など違いがあるのでこういった点は徹底的にローカライズしているということだった。これは彼が過去に携わったゲーム等のコンテンツビジネスとは大きく違う点だという。

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