台湾の独立系中国語ニュースポータル「The News Lens(関鍵評論)」は本日(3月23日)、多数の投資家から資金を集め、シリーズ B ラウンドを終了したことを発表した。
具体的な数字などについては公表されていない。
今回のラウンドをリードしたのは WISKEY CAPITAL で、その他にも多数の投資家が参加した。参加投資家のリストを以下に示す。
- Northbase Media
- Walden International
- Trinity Investment(資鼎創投)
- Angelvest(天使谷)
- Dorcas Investments(多加投資)
- Vic Chen 氏(エンジェル投資家)
- Wei Shang 氏(エンジェル投資家)
- Irene Chen 氏(エンジェル投資家)
- Edgar Chiu 氏(エンジェル投資家)
- Alice Sun 氏(エンジェル投資家)
The News Lens は今回調達した資金を活用して、新しいタイプのコンテンツをローンチする予定だ。そのわかりやすい例が、台湾のニュースプレゼンター Jennifer Shen(沈春華)氏の参加だ。彼女はライブストリーミングやその他の動画ベースのニュース商品の製作に協力する予定。
また、The News Lens は Time Inc.と提携を結んでおり、これからは巨大ニュース企業 Time Inc.が持つ TIME や Fortune のコンテンツを翻訳し配信していくとみられる。Time Inc.は The News Lens に対し、これら2つのブランドのライブラリへのアクセスを許可し、さらにアジア発の素材についても販売促進に協力する予定だ。
The News Lens は新たなコンテンツ分野を立ち上げる予定で、すでに Every Little D という名前のライフスタイルサブブランドと、Drink with Mario(馬力歐陪你喝一杯)というウィスキー愛好家のためのコラムおよびポッドキャストが製作されている。
結局のところ、The News Lens は、その投資家のほとんどが国際的な投資家だということもあり、アジア全域への拡大を目指しているのだ。
共同設立者兼 CEO の Joey Chung(鐘子偉)氏は e27とのインタビューでこう語っている。
そもそも The News Lens は、有機的に、できれば外国市場、国際市場、中国市場を埋め尽くすほどに成長することを意図して立ち上げられたのです。
The News Lens によると、トラフィックは昨年に比べ30%増加しており、現在の従業員数は70人(香港のオフィスも含む)だという。
立ち上げ当初は3人でした。ほんとにガレージみたいなところで・・・。私たちにとって、1、2年目で苦労するのは当たり前って感じです。何でも自分たちでやらなければなりませんから、非常に効率性が求められますし、問題に集中して取り組む必要があります。 月間ユニークユーザ数が100万もしくは200万になるまでは、ぜんぜんダメですね。(Chung 氏)
トリッキーなメディア環境での独立系ニュースソース
一般的にメディアというビジネスは難しいとされており、中でも最も困難なのは、出資者の意向を気にせずに編集の中立性を維持することだ。特に、The New York Times や Wall Street Journal ほどの影響力を持たないと思われる中小企業にとっては厄介な問題だ。
これはシンガポールにもアメリカにも存在する問題で、ヨーロッパやアジアでも同様だ。中でも特に、伝統的にオープンとされるメディア環境にも影響を与えるほど攻撃的で強力な力を持つ国が2つある。台湾と香港だ。
親北京派か反北京派か、独立に賛成か反対か、親香港派か反香港派か、特定の党を支持か不支持か。ここでは誰もが政治に高い関心を持っているので、もしもあなたがどちらかの側を選ばなければ、それは非常にまずいことになります。(Chung 氏)
The News Lens は、「独立系メディア」というアイデアに基づいて構築されており、取材先に対しては、公平でバランスの取れた報告を行うという旨の契約書に署名を求めている。「独立系メディア」とはつまり、誰にも借りを作らない新しいメディア企業を創ることだ。
この理想的なアイデアが意味するところは、ジャーナリズムの原点に立ち返ることであり、可能な限り読者に考えを押し付けないことだと Chung 氏は説明する。
どうすればこの理想を犠牲にせずにすむのか?そこが最も神経を使うところです。また同時に、こうした理想を持つことで、リスキーな投資家からの資金提供を基本的に避けるようになります。例えば政治的な立場にある家族や経営母体を持つ投資家などです。また、どんな広告主からお金をもらっているのかということにも気を付けています。(Chung 氏)
これが The News Lens を運営していく上での最大の課題であり、チームが毎日立ち向かっていることだと彼は言う。
新たなメディアとフェイクニュースが混在する世界において、信頼性というものは、あらゆるデジタルメディア企業にとって最も重要なブランドエクイティなのかもしれない。そして、The News Lens が目指すのは独立系中国語メディアのリーダーだ。
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