人間の感情を理解し、人工知能で動く中国のチャットボット「Emotibot」

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Image credit: Emotibot

今は至る所に人工知能(AI)がある。テック大手企業やスタートアップは AI テクノロジーを活用して、自動運転や顔認証決済など、より良い生活を実現している。この動きの背景には、AI の実用的なスキルが究極的には人の仕事を奪うという基本的な考え方があるが、このスタートアップは、AIが感情的にも人に寄り添えると信じている。

上海を拠点とする Emotibot(竹間叡智能科技)は、実用的なタスクをこなせるだけでなく、人との会話もできる AI 対応ボットを製作した。顧客とのさらなるやり取りを望む企業は、自社のオンラインカスタマーサービスを人間らしくしようと同社のテクノロジー活用に向けた話し合いを行っている。

同社の設立者兼CEOである Kenny Chien(簡仁賢)氏は TechNode(動点科技)に対して述べている。

中国での AI のトレンドと言えば、自動運転や顔認証です。自然言語の理解が一番困難ですが、私たちはこれに取り組んでいます。これはつまり、ロボットが人の意思を理解しなくてはいけないことを意味します。

Kenny Chien(簡仁賢)氏

Emotibot のアプリを使うには、チャットのインターフェースに入力するか話しかければよい。するとAIボットは、コンテキストやユーザの感情を読み取って反応を返す。例えば、「ガールフレンドと喧嘩してしまったよ」と言うと、ボットはその話を聞き終えた後に、あなたの側に立って、チャットボットに怒り顔の絵文字を送り返すなどして慰めてくれる。ほかにもAIは、「へえ、彼女がしたこと特に驚かないな」などと皮肉めいたやり取りもできる。

ロボットには、人の生活に価値を提供してほしいと思います。人間の生活は個人の生活と社会の生活から成り立っていますので、まずは社会の問題に注力することにしました。私たちは人のニーズを理解する必要があります。(Kenny 氏)

そのため、同社が最初に立てた目標は、アシスタント AI ボットを提供することだった。セルフラーニングの AI ボットは、ユーザが必要としている情報の発見、ホテルの予約、ショッピングのほか、カレンダー上でのスケジュール管理ができる。

企業が気にするのは顧客の感情

ユーザと会話する Emotibot

現在、企業は Emotibot のソリューションを採用することによって、顧客に対応しつつも、誠意を持ってサービスを提供しているという印象を与えるよう努めている。このテクノロジーに関心を示しているのは、主に金融サービスを提供している企業だ。昨年9月以来、同社は、金融、セキュリティ、保険、銀行、ネットバンクなどと話し合いを行っている。カスタマーサービスロボットのほか e コマース企業も同社のテクノロジーの採用に向けて準備を進めているという。提携先には China Minsheng Bank(中国民生銀行)、China Mobile(中国移動)、Vipshop(唯品会)、Ctrip(携程)などがある。

企業顧客は、感情がビジネスと重なり、会社のために働いてくれるよう願っています。機械的な反応は避けたいです。映画『her/世界でひとつの彼女』のように、ロボットが顧客に共感できることを目指しています。ただ現時点では、それは簡単ではありません。

同社はつい先日ソリューションを提供し始めたばかりだが、年末までに数千万人民元の収益を上げられると予想しているとした。また、Siri のように人の声を採用することにより、この製品に息を吹き込むことを考えている。

現在のところ Emotibot は中国語でしか利用できないが、将来は複数の言語を使えるようにしたいという。

中国語で AI ボットを動かすのは、英語よりも難しいです。それは、対話中に単語分割の問題があるからです。うまく機能させるために、ディープラーニングや言語学、心理学を関連付けしなくてはなりませんでした。(Kenny 氏)

以前、Microsoft でパートナーエンジニアリングディレクターをしていた同氏が起業したのは、2013年の映画「her/世界でひとつの彼女」を観たのがきっかけだった。

この映画を見た時、私はとても感動しました。AI が私たちの生活に影響を与えられると思ったのです。以来、この技術の開発に集中してきました。

AI は1950年代から長らく存在しています。準備が整ったように見えたのは2015年でした。自分のしたかったことを把握できたのです。周りには AI の人材も見つけられました。映画Herにあったようなロボットを作るという目標を達成したかったのです。(Kenny 氏)

Emotibot は上海(Her のワンシーンが撮影された場所)を拠点としており、北京、台北、ボストンにもオフィスを構えている。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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