
Image credit: tryb Capital
シンガポールを拠点とする、グロースステージ向けテクノロジーインベスターの tryb Capital は、同社にとって初となる正式投資を本日(4月6日)発表した。貨物運送関係の契約書をデジタル化するスウェーデンの SaaS 企業である Chinsay AB に対する400万米ドルの戦略投資である。
tryb としては初の案件であるが、共同設立者らはシンジケートとして MC Payment への投資実績がある。
この資金の用途は Chinsay をアジア(特にシンガポールおよび ASEAN)の貿易エコシステムに対応させることである。また、Chinsay は次世代型オンライン契約プラットフォームも開発していく予定だ。
tryb 会長兼共同設立者の Magnus Böcker 氏は声明の中で次のように述べている。
シンガポールは重要な輸送および貿易ハブであり、tryb Capital にとって Chinsay に対する投資がより魅力的なものとなりました。今回のケースではスウェーデンでしたが、革新的なテクノロジーが生まれた国や地域に関わらずシンガポールをアジアにおける成長プラットフォームとして利用できる好例です。
Chinsay は運送業界において多数の契約をデジタル化する企業である。従来の書類による契約は時間がかかり、時代遅れで、デジタルエコノミーにおける革新への機は熟したといえる。
Chinsay の製品はある種「運送業向け Google Docs」ともいえるもので、貨物の輸送時間よりも時間がかかることが頻繁にある書類手続きをスピード化している。
e27による tryb 共同設立者の Markus Gnirck 氏のインタビューによれば、次の一手は契約サービスを通じて蓄積された Chinsay の社内データを活用し、より強力なプラットフォームを構築することだという。
Chinsay を経由するデータは非常に貴重なデータです。たとえば、どのようにすれば Chinsay の顧客が契約に対してより多くのインサイトを持てるよう支援できるか?ということや、いくつの貨物が A から B へ輸送されるのか?といったものです。その上で新しいツールを使えば、より多くの製品の構築が可能となります。(Gnirck 氏)
Chinsay はスタートアップではないが、今案件は同社にとって初の対外投資である。(同社は「潤沢なキャッシュフロー」を誇る創業17年の企業である。)
Gnirck 氏によれば、tryb はこうした中小企業や成長段階にある資本企業に目を向けていくらしく、また、tryb のリスクプロファイルは一般的なベンチャーキャピタルに比べてだいぶ控えめであるとも話している。
フィンテックの会話を変える
銀行とフィンテック企業を倉庫と運送業者にたとえながら、Gnirck 氏はフィンテック分野における話題を変えたいのだと話す。B2C のコンシューマ向け金融商品ばかりに焦点が当たりすぎなのだ。
スタートアップは積極的に銀行事業への参入を試みていますが、その分野での成功は非常に限定的です。私が思うに、業界は周辺分野のテクノロジーに向かっています。金融業界向けテクノロジーには銀行業務に端を発して切り出されたものが多く存在し、データの流れを処理しています。そうした金融テクノロジーは数十年にわたり続いています。(Gnirck 氏)
投資会社としての tryb の非常に特徴的な戦略はこの命題文によるところが大きい。(ファンドではなく持ち株会社の立場をとる。)
私たちの投資対象へのアプローチは、オペレーションの視点を重視しています。どうすれば投資対象を成長させられるか?それは地理的または買収による製品の拡充のいずれかになります(Gnirck 氏)
多くの場合で、サービスの拡大や、製品を獲得する方法は M&A 活動に限定されてきます、とポートフォリオを念頭に Gnirck 氏は tryb の考え方を話す。
フィンテックでは統合が起こるでしょう。決済分野で1万社が同じサービスを提供する状態が続くことはあり得ません。
スタートアップへのインサイト—ファンドの獲得
tryb は昨年設立したばかりの若い企業である。あるシンガポール企業にとっての初めての投資が、あるスウェーデンの運送会社への投資だったわけで、tryb がどのようにして Chinsay を知ったのかということについて強い興味を持つことだろう。
参考までに付け加えると、tryb は昨年1年間で960社を調査し、その半数はアジアの企業で、残りの半数は米国とヨーロッパの企業だった。
Chinsay とは Böcker 氏を通じてつながった。同氏は金融の世界では有名人であり、2009年から2015年の間シンガポール証券取引所の CEO を務め、その前は Nasdaq 会長だった。
前職で Böcker 氏の部下だった人物が tryb と Chinsay を結び付け、最終的に投資という結果になった。
e27のようなメディアで発表された投資案件の裏にあるプロセスのケーススタディの好例といえよう。
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