1万台の車両ビッグデータがもたらしたのは「予測する力」ーースマートドライブが10億円の第三者割当増資を公表

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ビッグデータから車両管理を実現するプラットフォーム「DriveOps」などを運営するスマートドライブは4月5日、複数事業会社を引受先とする第三者割当増資を実施したと公表している。資金調達ラウンドはシリーズBで、調達予定の金額は総額で10億円となっている。具体的な払込完了日や引受先となった事業会社名、株式比率などの詳細は非公開。同社に確認したところ、事業会社名については今後、それぞれの業務提携発表等にあわせて公表するとしている。

また今回の発表に合わせて同社では、スマートフォンアプリをベースにしたドライブレコーダーの開発を進めていると公表した。

これは主に営業車両などで録画した車内外の膨大な録画動画データの中から危険運転や事故などが発生した時点を同社のビッグデータ解析で検知し、その前後数秒間の動画データを取得することで検索を容易にするもの。今年夏頃のリリースを予定しており、これによりリアルタイムな運転状況の動画解析・検索サービスを提供できるとしている。

1万台の車両ビッグデータがもたらしたものーーそれは「予測の力」

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スマートドライブの代表取締役、北川烈氏からスマートドライブの構想や車両ビッグデータについての話を聞いたのは2014年2月。大学で交通関連のビッグデータ解析を研究していた北川氏の話は魅力的で、当時まだステルスだったサービスの未来を予測するのは楽しかった。

一方で車両のデータをOBD-II(車の整備用)ポートから取得したデータが具体的にどのような効果を生み、そしてどのようなビジネスになるのかは謎だった。

あれから3年。同社は1万台の車両からそれぞれのストップアンドゴー、ハンドルの角度、スピードや距離などの詳細なデータを取得してそれらを解析し続けた結果、ひとつの結論を得ることになる。それが予測だ。この解析結果を使えば、例えばこういう運転をしている場合は燃費がどのようになるのか、おおよその推測がつくようになった、というのだ。

しかも特筆したいのはこの「こういう運転」という状況を示す情報がある程度荒くても大丈夫、という点だ。

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これまでスマートドライブでは整備用ポートを中心に車両の挙動データを取得してきた。これは正確な情報が得られる反面、車両の動きを外から制御できる可能性もあって安全面においては危険な行為になる。当然、車両メーカーはこれを嫌がっていた。

しかしスマートドライブ側で推測できる環境が整ったため、例えばスマートフォンの各種センサーから取れるレベルのデータからでも車が曲がったかどうか、精度高く運転状況の分析が可能になったのだという。

これによって運転分析ができる車両範囲は格段に広がることになる。つまり、同社にとって事業を拡大するチャンスが大きく広がった、ということになるのだ。今回、複数の事業者と提携して大型の調達を実現できたのも、このOBD-IIポートからの解放が大きな要因になっているのだろう。公表されているアクサ損害保険とのテレマティクス保険商品や、大手コンビニチェーンの配送用トラックの運転状況管理などに導入が進んでいる。

北川氏によれば現在、30名ほどでサービス開発を進めるスマートドライブ。夏に公開予定の動画解析などをふまえ、今後も分析やビッグデータ処理に強い技術者を増強していく予定だ。

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