今回は「深圳の今(Now in Shenzhen)」シリーズの最終回。本連載では、深圳の中核的産業である製造業を活かした深圳企業を TechNode(動点科技)が紹介する。

テクノロジーの素晴らしいところは、人々の意識を高め、インスピレーションを与えることにある。Gravity Innovation の24歳の CEO は、コネクテッド・ロケットランプと SpaceGo というモバイルアプリを利用することにより、若い学生に宇宙への興味を持ってもらいたいと考えている。
Gravity Innovation でCEOを務める Romax Ren 氏は、TechNode(動点科技)に対しこのように語っている。
宇宙に行きたいと思う人は増えています。私は単に感動の声を聞きたいわけではなく、彼らには楽しんでこのムーブメントに参加してほしいのです。そして、それが現在私たちが取り組んでいることです。宇宙教育の問題点は、『スゴイ!』と感動した後でも、それが行動につながらないことです。
Gravity Innovation のチームは、航空宇宙産業のベテラン専門家、科学分野の人気コンテンツクリエイター、 STEM 教育の実務者で構成されている。
彼らは、まるでロケットのようなランプを開発し、Falcon Heavy(SpaceX が開発中のロケット)の打ち上げが予定されている今年7月に、Kickstarter でこのランプをのクラウドファンディングをローンチする予定だ。ユーザはこのランプをつけるだけで、自分の部屋でロケット打ち上げの気分を味わうことができる。炎の部分が上から下にゆっくりと点灯し、本物のような音が出る。そして、次のロケット打ち上げのライブ配信を見逃さないように専用アプリを使ってアラームを設定するか、音楽を再生することができる。

Image Credit: Gravity Innovation
市場は非常に大きい。 Redditには「宇宙」テーマのファンが1,100万人いる。ヒューストン宇宙センターの訪問者数は年間100万人で、毎年7,300万米ドルの収益を得ている。また、Tencent(騰訊)は宇宙トピック専門ウェブサイト「Tencent Space(騰訊太空)」を立ち上げ、中国ネチズンの宇宙への関心を高めようとしている。
3年前には、Chang’e-3(嫦娥三号)の打ち上げをライブで見る人は50万人にも満たなかった。現在、Tencent Space 上で4月20日にライブ配信された Tianzhou-1(天舟一号)打ち上げを閲覧したネチズンの数は1,600万人を上回った。
よりインタラクティブでイノベーティブな方法によって、さらに多くの子供や宇宙ファンがロケット打ち上げプロセスに参加できるよう、SpaceGo は AR 機能を備えている。ユーザはスマートフォンやタブレットのカメラをロケットランプに合わせることで、ロケットランプが実際に打ち上げられている様子をスクリーン上で見ることができる。その他の機能としては、火星への飛行、人工衛星の地球軌道への打ち上げ、宇宙からの地球のリアルタイム撮影などがある。
中国の宇宙探求

Image Credit: Gravity Innovation
Romax 氏は、次のように指摘する。
中国の宇宙技術は現時点で世界2位で、トップは米国です。 オバマ元大統領が Lunar Project を中止しましたが、トランプ大統領がそれを再開させました。プロジェクトの運営が一貫していないことこそが、NASA の弱点です。
中国のロケット打ち上げの回数は90年代前半から急激に増え始めた。1990年から1995年にかけて中国は20回のロケット打ち上げを行ったが、2011年から2016年にかけては110回のロケット打ち上げを実施している。中国はロケット打ち上げ回数で世界1位となり、2016年は22回で史上最多となった。
それを支えているのは、宇宙機関や研究機関で働く中国の若い力だ。中国の宇宙機関が抱えるスタッフの平均年齢は33歳。一方、NASA は現在、平均年齢47歳という労働力の高齢化問題に直面している。
Romax 氏はこう語っている。
アメリカでは現在、Google で働きたいという人が増えていますが、宇宙産業で働きたいという人は減っています。中国で働く方が有利なのです。 2020年からは中国が ISS(国際宇宙ステーション)を運用する唯一の国になります。
宇宙教育はクールでなくてはならない

Image Credit: TechNode
中国国民の関心が急激に高まり、中国の宇宙技術も急成長を見せているものの、国民の支持を真の情熱へと変えることは容易ではない。宇宙教育の改善と民間宇宙機関の設立が必要である。
Romax 氏は指摘する。
中国における子供の宇宙教育は20年遅れています。1990年から現在まで宇宙教育は変わっていません。教育の方法はまったく進化していないのに、消費者市場における人々の期待と技術開発だけが先に進んでいる状態です。
Gravity Innovation のロケットランプと AR アプリは、将来の中国宇宙産業における人材を育成するための身近な教育ツールとして役立つと Romax 氏は考えている。彼自身も、宇宙産業で自分の夢を追求するために会社を設立した90年代後半生まれの若者だ。現在24歳の Romax 氏は、深圳の NASA グループを率い、NASA と正式な関係を結んでいる。彼は、4つの商品の開発でトップを走る深圳拠点の STEM 企業 Makeblock で働いていた経験がある。
宇宙産業により多くの人々が参加できるようにしていきたいと考えています。中国にはSpaceXのような民間宇宙機関も必要です。多くのファンが SpaceX に興味を持っており、彼らは非常に活動的で、ホットな話題になっています。 民間の宇宙機関の設立によって、政府が支援する機関とは大きく異なる環境が生まれるでしょう。
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