スマホで撮影「即入金」の質屋アプリCASH、STORES.jp創業の光本氏が公開ーーノールック少額融資を可能にしたその方法とは

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いやあ、久しぶりに狂ったサービスと出会った。何を書いてるのかよくわからない人もいるかもしれないが、できるだけ正確にお伝えするのでまずご一読頂きたい。

CASHはアイテム買取のアプリだ。手元にある商品を撮影してアプリから送信する。カテゴリなどの指定があるのでゴミはさすがにダメだが、まあフリマアプリで取引できるような商品だったら大体OKだ。送信が終わるまで1分とかからないだろう。

送信したらその場で査定額が出る。その額の下に「キャッシュにする」というボタンがあるのでそれをタップすればーーその金額が振り込まれる。以上だ。

ここまでの手順で飛ばしたのは個人認証だが、それもスマホの電話番号「のみ」だ。いわゆるSMS認証でそれだけ突破すれば男か女かすら分からなくても使える。

出金は銀行口座かコンビニ出金のいずれかを選べる。銀行口座を登録すれば午後3時までの取引であればもう入金されている。コンビニであれば、店頭にある端末で操作すれば所定の番号が発行されるので、それをレジに持っていけば現金を支払ってくれる。

もう少し詳しく説明しよう。

携帯番号で認証してアイテムを撮影したら査定が終わり入金される

古物商と金融という質屋モデルをスマホ時代に再現

STORES.jpを創業した光本勇介氏がスタートアップさせたバンクは6月28日、質屋アプリ「CASH」を公開した。CASHはユーザーの商品をスマホで撮影して送付するだけで査定金額を即刻で入金してくれる。

対象となるアイテムはスマホやタブレット端末などのガジェットからアパレル全般でスタートし、今後、2次流通市場で流通できるアイテムへ随時拡大する予定。査定金額は0円から2万円まででそれ以上の価値がある場合も2万円の上限金額にて査定される。買い取られた商品は2カ月以内にCASHに送るか「返金するか」を選べる。返金する場合は撮影した商品を送る必要はないが一律15%の手数料がかかる。(28日17時追記:現金を受け取る場合、手数料として一律250円が必要になる。また、コンビニでの現金受取は上限が1万円で、受取時間は7時から22時までとなる)

取引の上限金額は2万円で、これを超える場合は取引を完了させないと次の取引は実施できない。アプリはiOS版が今日から利用可能でAndroid版は近日中のリリースとなる。利用は無料だ。

ーーさて、ここで改めてCASHを説明する上で知っておきたいのが質屋だ。質屋のビジネスモデルは2つある。買取を通じた古物流通とそれを担保とする融資だ。ここまでの説明でも分かる通り、CASHがやっていることは実質的に質屋に「似た」行為なのだが、光本氏の説明では少しだけ違う。

「やっていることはあくまで古物の流通です。なので古物商の免許(古物商許可)は持っていますが、貸金業や質屋業(質屋営業許可)などの免許は取得していません。15%の手数料は本来古物流通で得られるはずだった買取による機会損失を補填するためのキャンセル料として頂いています」(光本氏)。

なるほど、このモデルは大変アグレッシブだ。しかしここは流石に連続起業家、この分野に精通している法務・弁護士チームを結成し、法律的に問題ないレベルを突いてきたという。インスタントコマース「STORES.jp」を創業し数十万店舗に拡大、スタートトゥデイに売却するなどスマホ時代のコマースを手がけてきた光本氏ならではのアプローチと言えるだろう。

ーーでは、ここまで読んでみて何が凄いのかよく分からない方は実際にこの質屋アプリを使ってみてほしい。簡単だ。手元の商品を撮影してCASHに送るだけでいい。近くにコンビニがあればその場で査定された金額をレジで受け取れる。

いやいや、商品を売るつもりはないよ、というのも別に問題ない。その金額をCASHに返せばいいだけだ。ただしここで15%の手数料がかかるのでテストする人はその点だけご注意頂きたい。

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分かるだろうか?

そう、査定をしていないのだ。しかも取られている個人情報は電話番号だけでこれでは与信もへったくれもない。最近ではみずほ銀行とソフトバンクが携帯番号等の個人情報で与信し、少額融資するサービスも発表されているが、光本氏曰く、それは現時点で実施していないという。

2万円までの「ノールック融資」を実現した方法

では冷静に考えて欲しい。何かが写った写真と電話番号だけで最大2万円をその場で振り込む行為を。もちろん何かカラクリがあるのだろうと思うかもしれないが、その内容はほぼ社会実験に近いものと言える。

これを実現したポイントは3つだ。1:2万円上限とブラックリスト、2:電話番号認証の意外な強さ、3:豊富な資金ーーこれに沿って光本氏に聞いた内容を整理してお伝えしよう。

2万円上限とブラックリスト

どうせ試す人がいるだろうから先に言おう。CASHは不正ができる。(但しこれは犯罪になる可能性がある)

送付した商品が写真撮影のものと違う場合や商品を送らずに返金もしない場合、またはそれに近いと判断される行為をした場合、CASH側はその電話番号に紐づくアカウントをブラックリストに追加する。つまり、その電話番号のユーザーはこのサービスを未来永劫使えない。そして上限金額は2万円だ。それ以降は取引を成立させない限り繰り返し使えない。

たった2万円で友人と会わなくなるタイプの人は、おそらく二度とこのサービスは使えなくなるだろう。

電話番号認証の意外な強さ

使えなくなる前提での不正行為(繰り返すが犯罪だ)はさておき、では電話番号を大量に用意したらどうだろうか?詳細は割愛するが、結論的には「2万円では割に合わない」が正解になる。

格安SIMなどであれば月額数百円で電話番号を発行してくれるが、それにはクレジットカードや身分証明書を用意する必要がある。光本氏の仮説では、最終的にそういった貧困ビジネスを手がける人たちは別の方法を狙うことになると予想していた。

豊富な資金

例えば1万円の資金をCASHがぽんぽん入金していったとしよう。古物流通させる買取商品が手元にやってくる、もしくは返金されるかは最大2カ月後だ。もちろん前述のような不正行為も一定数出てくるだろう。例えばそういう人が1000人いたら1000万円、1万人いたら1億円が必要になる。

光本氏は今回のプロジェクトでどれぐらいの資金を用意しているか、外部資金の投入などについて公にしていない。詳細な金額は非公開なものの、以前の事業売却で発生した資金が今回のプロジェクト投資に繋がっていることは当人も認めている。

今回のプロジェクトはおそらく数千万円の投資では効かないだろう。どれほどを用意しているか分からないが、おそらく数億円規模でこの新たな価値創造に突っ込む姿は素直に評価したい。

人生のショートカットを学ぶきっかけを大量に作りたい

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BANK代表取締役の光本勇介氏

光本氏はなぜこのようなサービス、マイクロレンディングを攻めたのだろうか?

「新しい事業を考える上で今年はレンディング元年だと考えてます。しかし周囲のスタートアップの多くはB(企業)向けです。私はC(一般消費者)向けがやりたかった。日本での消費者金融というのは実はあまり変化がありません。一方で厳然としたニーズがある。これを現代のものに合わせたい」。

日本の消費者金融はおおよそ平均貸付単価が50万円なのだそうだ。一方で今回のような数万円程度のレンジの少額金融は大手が手がけない。理由は単純、細かい与信情報をとって審査していたんではコストが合わないからだ。「メルカリの爆発で顕在化したお小遣いを稼ぎたいという、数千円から数万円の少額資金需要」(光本氏)をスマホ買取、与信抜きというアプローチで攻めた。

「堀江(貴文)さんがある雑誌のコラムで、1年間アルバイトしてMacを買ってデザイナーになりたいという読者の質問に対して、借金して今日からやった方がいいとアドバイスしているのを目にしたことがあったんですね。すぐにMacを手にいれて勉強すれば、腕が上がってもしかしたら半年ほどで働けるようになるかもしれない、と。これって人生のショートカットだし、できた時間を別のチャレンジに使える」(光本氏)。

消費者金融は以前のグレーゾーン金利の問題などから、良いイメージを持ってる人は多くないかもしれない。しかしこのエピソードにあるような言わば人生への「投資」には大きな意味がある。光本氏自身、学生時代にファッションをオークションサイトで流通させる小さな商売を経験することがその後のSTORES.jp創業に繋がった。

長寿命化や複業など、単一企業への就職だけで人生を考えることができない今だからこそ、お金との向き合い方や知識、経験については今後益々重要性が高まることが考えられる。「ミクロな単位での小さなきっかけを大量に生み出したい」という連続起業家の強烈なチャレンジが今、始まった。

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