人工知能で社員のエンゲージメントを〝見える化〟するアナリティクス「BetterEngage」、Startup School卒業にあわせβ版をローンチ

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Startup School の修了デモデイで、Y Combinator プレジデントの Sam Altman 氏(左)と、BtoA 代表取締役の石原史章氏(右)
Image credit: BtoA

東京を拠点とするスタートアップ BtoA は30日、社員のエンゲージメントを〝見える化〟するプラットフォーム「BetterEngage(ベターエンゲージ)」をβローンチした。これとあわせ、同社は Y Combinator の起業家向けオンライン講座(MOOC)である「Startup School」を卒業したことも明らかにしている。

BtoA は2015年10月、代表の石原史章氏らの手により設立。当初は宇宙産業特化型メディア「宇宙女子」を運営し、2016年4月にはサムライキュベイトからシードラウンドで資金調達を実施(調達額非開示)。宇宙産業特化型Eコマースプラットフォームの構築を標榜していたが、宇宙関連事業は入札での参加が必須条件だったり、情報管理のコンプライアンスの都合からデータベースを残せなかったりするなど、さまざまな制約を伴ったことからピボット。石原氏が前職の会社で、人の出入りが激しかった(50人規模の会社で毎週毎月、10%程度の社員が入れ替わっていたそうだ)ことにヒントを得、社員のエンゲージメント改善を支援するツールの開発に着手した。

一人の社員の離職が発生すると、当該社員の年収の約半分がかかると言われる。優秀な社員を外部から確保することも重要だが、業務のパフォーマンスはもとより、コストの観点からだけ見てみても、今いる社員を大事にし、彼らに居心地のよい労働環境を提供し働き続けてもらった方がずっと効率がよいことになる。

BetterEngage では、さまざまなクラウドサービスと API 連携することで(今年9月のサービス本格化に向け、当初は外部クラウドから得たデータをインポートする仕様のようだ)、勤怠データ、勤続データ、パフォーマンスデータ、サーベイデータを取得。これらから、「上司との関係性」「同僚との関係性」「業務満足度」「職場満足度」「成長実感」という5つの指標で、社員毎のエンゲージメント評価を行う。特に興味深いのは、エンゲージメント指標5つのうち、「上司との関係性」「同僚との関係性」については、社員へのサーベイだけでなく、社内コミュニケーションツール上でのやりとりから元になる情報を取得している点だ。

Slack でのやりとりをもとにした、「コミュニケーション分析」
勤怠データをもとにした「勤怠分析」

「上司との関係性」「同僚との関係」は現在のところ、Slack のパブリックチャンネルにおける、社員同士のコミュニケーションの頻度を参考に「上司との関係性」「同僚との関係性」を割り出しているとのことだが、将来的には、自然言語処理なども導入して、コミュニケーションのコンテキストを分析し、より精緻なエンゲージメント測定につなげたい考えだ。

BtoA では、4月中旬に BetterEngage の MVP(最小限度プロダクト)をローンチし、トライアル利用に参加してくれるユーザ企業を7〜8社ほど獲得。この2ヶ月程度は彼らからのフィードバックをもとにプロダクトマーケットフィットに注力してきたが、Startup School への参加を通じ、Y Combinator のパートナーや Y Combinator から輩出された起業家からのメンタリングを受け、さらに UX に磨きをかけた。β版として、晴れて日の目を見ることになった BetterEngage には、すでに15社程度が利用意向を示しウェイティングリストに入っているという。

BetterEngage は、現段階においては「人工知能を用いたプラットフォーム」と呼ぶにはいささか早い気がしないわけでもないが、MVP 誕生から2ヶ月でここまで持ってきていることを考えれば、成長の可能性は未知数と言えるだろう。

この分野では今年5月、アトラエ(東証:6194)が、社員への定期的なサーベイ(パルスサーベイ)により社員のエンゲージメントが測定できる「wevox(ウィーボックス)」を正式ローンチしている

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