イスラエルの機械学習スタートアップBrodmann17、高価なチップを使わずIoTの視覚を強化するプロダクトをローンチ

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Brodmann17チーム(左から:チーフサイエンティスト Assaf Mushinsky 氏, CEO Adi Pinhas 氏, パートナーシップ担当 VP Ruby Chen 氏, CTO Amir Alush 氏)
Image Credit: Brodmann17

イスラエルの機械学習スタートアップ Brodmann17は、市場最強とするアルゴリズムを携えてコンピュータビジョンの競争に参入しようとしている。同社はローンチを行った本日(6月1日)、歩行者検出、顔検出その他のタスクをこなす新たなマシーンビジョン製品を披露した。

機械学習で最大の問題の一つは、進化したアルゴリズムを効率的に動かすことだ。最高級のシリコンチップを搭載し、パワーを必要とするサーバ上でモデルを訓練して動作させることと、スマートフォンやコネクテッドカー、カメラの中に内蔵されたプロセッサでこれを動作させることは別物である。Brodmann17によると、同社のアルゴリズムは幅広い種類のハードウェアユニット上で動かせるほか、他社の最新製品よりも迅速、正確、効率的であるという。

テクノロジーのアプリケーションを動かすのにその点は重要だ。ハードウェアユニットメーカーはインテリジェント能力を追加したいと思うものだが、モバイル端末上でコンピュータビジョンのために GPU を使いたくはない、と Brodmann17の CEO である Adi Pinhas 氏は述べている。

誰であれ、IoT デバイスやスマホの中にはとてもホットで高価な GPU は入れたくないものです。

その問題に対処するため、チームは新たなディープラーニングのアーキテクチャを構築したと CTO の Amir Alush 氏は語る。このアルゴリズムはただ既存のアーキテクチャを採用して小型デバイス上で動かせるよう圧縮しているのではなく、効率性の向上を目指して一から作られたものだ。

ディープラーニングのアーキテクチャには、コンピューティング実行の際に多くの冗長性があることが判明しました。(Alush 氏)

例えば、彼らチームは単一の Samsung Artik A15プロセッサコア上で、1秒あたり約25ものフレームでリアルタイムの顔検出ができるという。デモンストレーションコードは Artik チップ用に最適化されていないので、将来さらなるパフォーマンスの向上が図れるだろうと Alush 氏は述べている。

アルゴリズム内部の動きの詳細についてはまだ一般向けに情報を公開していないが、今年後半には明らかにしていく予定だそうだ。ただ、彼らにはマシーンビジョン分野を進化させる能力があるとみられる。Pinhas 氏と Alush 氏はそれぞれこの分野で複数の論文を執筆した実績があり、チーフサイエンティストの Assaf Mushinsky 氏 はかつて、Samsung と EyeSight Technologies でマシーンビジョンに取り組んでいた。Brodmann17のアルゴリズムを支えるテクノロジーは、現在 Facebook でリサーチサイエンティストとして勤務しているテルアビブ大学教授の Lior Wolf 氏が運営しているラボで誕生したものだ。これがうまくいけば、このテクノロジーはアプリケーションの幅を広げていくことになる。

同社は Lool Ventures、Samsung Next、Sony Innovation Fund が共同でリードしたシードラウンドで160万米ドルを調達した。Lool のゼネラルパートナーである Yaniv Golan 氏によれば、彼らのテクノロジーがうまくいくことを検証してしまえば、投資を決断したのはきわめて自然な成り行きだったという。

私たちが Brodmann17テクノロジーの重要性と影響度を理解し、商業的な顧客とともに実際の実行作業で同社が生み出した事業を理解してしまえば、迷うことはありませんでした。

社名の由来は Korbinian Brodmann 氏だという。この人物は人間の脳を機能に応じて52の部分に分類したサイエンティストである。同社の名は Brodmann Area 17(ブロードマン17野)という、脳の後ろ側にあって主に視覚野となっている部分にちなんで付けられた。

Brodmann17の画像処理テクノロジーを統合するのに、特別なハードウェアやソフトウェアは不要だ。同社の顧客であれば、ソフトウェアアップデートを使って既存デバイス上でこのテクノロジーを採用できる。

そのほか、同社顧客はチームが継続的に実施している改良をベースとして、すでにディプロイしてある Brodmann17モデルをアップグレードすることも可能だ。

Pinhas 氏によると、既存オープンソースコンピュータビジョンをアプリケーションで動作させようと試したものの失敗したという企業を対象に、同社のテクノロジーを販売しているという。

様々な企業と打ち合わせをしていると、先方はディープラーニングへの期待という点で、その会社が求めることや手持ちのリソースなどをすでに把握しています。

現在同社は歩行者検出や顔検出といった主要な問題に関連する製品の構築に注力している。そして今後も、コンピュータビジョンに注力し続ける予定だ。この分野でなすべきことはたくさんあり、活用方法が尽きることはない。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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