マネーフォワード、企業間後払い決済サービス提供に向けた子会社「MF KESSAI」を設立——請求業務の9割をアウトソース、売掛金を入金保証

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マネーフォワード代表取締役の辻庸介氏(右)と、MF KESSAI 代表取締役の冨山直道氏(左)

マネーフォワードは20日、都内で会見を開き、企業間後払い決済サービスに特化した専門子会社「MF KESSAI」を設立したことを明らかにした。MF KESSAI では、マネーフォワードがこれまでに培ってきたデータドリブンなアプローチのノウハウを取り入れ、企業間における買掛金売掛金回収のサイト短期化と与信リスクの最小化を行う。会見に臨んだ、マネーフォワード代表取締役の辻庸介氏は、新会社および新サービスの目的として、「経営に関するお金の不安を解消し、企業の取引拡大を支援すること」だと述べた。

MF KESSAI のメンバーを紹介する辻氏

新会社 MF KESSAI の代表には、マネーフォワードに2014年に入社し、全国の会計事務所や中小企業に行脚して「MF クラウド」の普及を図ってきた若手である冨山直道氏が就任する。また、マネーフォワードとはサービス業態が異なることや、「大きな成長を望むには、業務分野へのフォーカスが必要(辻氏)」との考えから、MF KESSAI のオフィスは、マネーフォワードの本社のある東京・田町ではなく、大手町のフィンテック・スタートアップハブ FINOLAB 内に開設される。

冨山氏は、企業間取引において、売り手が買い手に商品やサービスを販売する場合、与信審査・請求内容入力・請求書発行と送付・入金管理・入金催促という5つの請求業務が発生すると説明。新サービス「MF KESSAI」では、このうち、与信審査・請求書発行と送付・入金管理・入金催促という4つの業務(請求業務全体の90%)をクラウド上にアウトソース自動化できることで、月末月初に集中しがちな請求業務を大幅に軽減できるとした。

また、最近のあらゆるビジネスの傾向として、インターネットの普及に伴う、サービスのクラウド化やサービスの直販化が挙げられる。サービスのクラウド化においては、一顧客あたりの価格は減少することが多く、売り手は同じ売上を確保するには、より多くの顧客にサービスを販売する必要がある。サービスの直販化においては、例えば、それまで小売をしたことが無かった企業が、顔を合わせたこともない末端の顧客に対する与信や入金管理をするという不慣れな業務を強いられる。MF KESSAI では、これらのシーンにおいて請求業務を肩代わりすることで、売り手がより本業に集中できる環境を提供する。

MF KESSAI の機能の中でも、特筆すべきは、請求データができた時点での債権の移動(早期入金)と売掛金回収の保証だろう。売り手が MF KESSAI を利用したとき、MF KESSAI は買い手(請求先)に対して自動で与信審査を実施する。このプロセスの詳細は明らかになっていないが、外部情報機関の情報やマネーフォワードがこれまでに蓄積した情報に基づくビッグデータが利用され、最短で1分以内で取引が実施可能となる(テスト運用中の実績ベースで、98%の買い手がこの審査をパスしているとのこと)。

この後、最短ケースでは、売り手側で請求書データが作成された時点で、MF KESSAI が買い手に対する債権を肩代わりし、代金を売り手に支払うことができる。いわゆるファクタリングに近い機能だが、「MF KESSAI の手数料としてはせいぜい数パーセント程度になるだろう(冨山氏)」とのことだった。MF KESSAI の料金体系は明らかになっておらず、この早期入金サービスが標準的に提供されるのか、追加手数料が発生するのかなどは現時点で不明だ。

請求から入金までの期間が短縮されることで、物販を営む製造業などにとっては、材料の仕入などに必要な資金を外部に依存する必要が軽減されるほか、前払いを前提として営まれる農業生産法人などにとっても、顔を合わせたこともない全国の潜在顧客との取引の可能性が生まれるようになるという。早期入金サービスを提供するにあたり、MF KESSAI は資金を必要とすることになるが、辻氏は、すでに提供している企業向け融資サービス「MF クラウドファイナンス」でのスキームを例を挙げ、

我々はテクノロジーの会社なので、(サービスの提供に必要な資金は)MF KESSAI のバランスシートに依存するよりも、外部の金融機関と連携して提供していくことになるだろう。

…として、金融機関からの資金調達の可能性を示唆した。MF KESSAI は、マネーフォワードから切り離された子会社という形態を取っていることもあり、エクイティベースであれ、デットベースであれ、あるいは、潜在顧客の紹介という取引関係であれ、金融機関との連携するスキームは想定しやすい。

馬刺しのインターネット通販「熊本馬刺しドットコム」などを運営する、利他フーズ代表取締役の倉崎好太郎氏がオンライン出演。MF KESSAI 利用者の立場から感じたメリットを説明した

MF KESSAI の売りは API 連携であり、売り手の請求・売掛管理システムとの連携、銀行システムとの連携で、より多くの情報を集めることにより、業務を圧倒的に効率化することにある。MF KESSAI は本日からサービス開始されるが、この API 連携のリリースが今秋あたりとのことなので、MF KESSAI が本格的な運用フェーズに入るのは今秋以降と考えられる。

データドリブンなアプローチによる中小企業や個人事業者向けの与信や融資というコンテキストでは、すでにローンチしているクレジットエンジンの「LENDY(レンディー)」のほか、会計ソフト大手の弥生や d.a.t が立ち上げた ALT なども年内のサービス開始を予定している。

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