フルスイングのCASH、再開目処とメルカリ経済圏「もうひとつの可能性」

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2017.7.25

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最近「どんなサービスや起業家がイケてる?」と聞かれたら必ず挙げるサービスが二つある。

CASHVALUーー2017年の夏に彗星の如く現れた両サービスは、スタートアップなら誰もが期待する「賛否両論」を巻き起こしたことで共通していた。特にCASHについてはたった16時間しか打席に立つことができなかったにも関わらず、周囲に与えたインパクトは絶大で、私が書いた記事も25万人ほどの方に読まれることとなった。

その一方で一晩で数億円をばら撒いた単なるバカじゃないか、という見方も確かにある。実際サービスは今をもってまだ停止したままだ。では彼らは一体何がしたかったのだろうか?

フルスイングのCASH、再開はできるのか?

6月末に突如現れたこの無茶苦茶なサービスのことをご存知の方も多いと思う。最も気になる再開の可能性についても、運営するバンク代表取締役の光本勇介氏に法的な解釈など含めて確認しているが、公式な回答は得られていない。ただ、本人から近日中になんらかのアナウンスはするという話はもらっているのでそこで再開か、はたまたサービス閉鎖のいずれかがはっきりするだろう。

ただ彼との会話と個人的な見解から考えるとこのままサービス閉鎖することは考えにくく、かといって同様の再開方法ではまた1日で4億円近くのキャッシュが飛んでしまうことになりかねないから、何かアレンジは加えてくるんじゃないかなと考えている。

再開の話題はさておき、CNETにこんな記事が出ていた。で、これ実は光本氏が以前の取材で話していた仮説に非常に近いことが書かれていて大変興味深い。ちょっと引用させてもらう。

さらに、「知っている」と回答した人を対象にCASHの認識を尋ねた。CASHは「目の前のアイテムを一瞬でキャッシュ(現金)に変えられる」とうたっており、質屋アプリと紹介されることが多いが、CASHを知っている若年層はどのようなサービスと判断したのだろうか。結果は「フリマアプリ」との回答が最も多く36.6%、次いで「買取専門アプリ」が26.0%、「質屋アプリ」が24.4%となった。「その他」と回答した人からは、「オークション」「ゲーム」といった回答が挙がった。認識にばらつきが見られたものの、実際にアプリを利用したかを尋ねたところ、CASH認知者の19.8%が「査定してキャッシュを受け取った」と回答。そして、10.7%は「査定のみした」と回答した。若者が「メルカリ」と“同じフォルダ”に入れているアプリは–スマホ画面から読み解く実態(CNET Japan/7月20日掲載)

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CASHはサービス公開後約16時間で査定を停止、現在はアプリも非公開となっている。

サービス公開当時、私はCASHを利用している一部のユーザーの声をTwitterで眺めていたのだが、やはりそこにもメルカリで売れなかった商品をCASHで現金化できる、といったフリマアプリの代替や補完のようなイメージを持った人が多かった記憶がある。私はCASHをサービスの内容から「質屋アプリ」、つまり擬似的な少額融資(実際は貸金ではなく先払いの買取)サービスとして記事を書いていたのだが、4割近いユーザーはそうは考えず、フリマアプリ市場に近い場所でこのサービスを捉えていたことが調査からも見て取れる。

スマホで撮影「即入金」の質屋アプリCASH、STORES.jp創業の光本氏が公開ーーノールック少額融資を可能にしたその方法とは

そこで思い出すのが光本氏との会話で度々口にした「メルカリ経済圏」という言葉だ。メルカリはご存知の通り不用品のマーケットプレースだが、一定数ここで商売というか「利ざや」を稼いでいるユーザーがいる。この辺りの実態調査は手頃なものが手元にないのだが「メルカリ、副業」などで検索するとノウハウサイトがずらりと出てくる。

ここで仕入れてここで売る、そういうタイプだ。

CASHが狙っていたのはまさにここでの資金需要だった。メルカリも購入した商品の支払いを1カ月まとめて支払える「月イチまとめ払い」を開始しているが、これは一部の与信を通ったユーザーのみに解放されていて、後払いが使える(手元資金なしで仕入れることができる)ユーザーは限られている。一方でCASHは誰でも利用可能だ。CASHの買取(実質的な返済)期限が2カ月後、キャンセル手数料が(実質的な金利にあたるもの)15%というのもこの売買サイクルにフィットしているようにも思えてくる。

そして何より「即金」というのがミソで、CASHで自分の持ち物を現金化しすぐにメルカリ経済圏でお小遣い稼ぎができるとなると、ひとつのサイクルみたいなものが見えてくる。もちろんうまく販売できなかった場合はCASH側に出品した商品を買取に出せばいいだけの話なので、実際には手持ちの商品が何か別のものに代わるだけだからリスクは低い。

調査結果で多くのユーザーがメルカリとCASHを同一視したというのは、上記で予想した内容を加速させることに繋がることになるのかもしれない。

もし、光本氏が「さらにいい方法」を見つけてうまくCASHの再開に成功すれば、メルカリ経済圏に抱合されたマイクロペイメント市場を可視化させる可能性が高まる。ただこれは別に新しい話ではなく、例えばAmazonは出店者に対して短期の融資サービス「Amazonレンディング」(売れることが分かっている時に有効な融資商品)を提供していたりするので、攻め方としては正攻法と言えるだろう。

ただ、別の事業者がやるとは思っていなかったが。

CASHはたった1日(というか16時間)で3.6億円のキャッシュを回す事業を作った。「いや、金ばらまくだけだったら俺でも」というのは別に簡単だが、実際、自己資金でこれをやった例というのはスマホシフトが顕在化した2010年以降のスタートアップで見たことがない。加えて書くなら、たった1日でノンプロモーションの買取サービスが7500個の流通に成功したというのも異例だろう。

「フルスイングするか三振か、どっちかしかないよ」ーー今、CASHが再開できるかどうかは光本氏の手腕にかかっている。

彼は今、おそらく集まった商品や動いたお金、世の中の動向を睨みながらめまぐるしく計算しているだろう。彼らが再びこのスタートアップ・ステージに戻ってくることができるのだろうか。アナウンスを待ちたい。

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