コネクション重視企業 vs. 商品重視企業【ゲスト寄稿】

Tim Romero 氏

本稿は、Tim Romero 氏による寄稿を翻訳したものです。オリジナル原稿は THE BRIDGE 英語版に掲載しました。

Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


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日本のスタートアップの間ではある誤解が広がっており、この誤解が原因となって、ちょうどこれから急成長期を迎えようかというところで多くのスタートアップが廃業を余儀なくされている。政府によるスタートアッププログラムや大学によるアクセラレーションプログラムをあれこれやるよりも、この誤解を解消することの方が日本のスタートアップの成功を後押しする上ではより効果的だと言える。

コネクション重視企業と商品重視企業との違いを知ることは重要だが、一見しただけでは分からないこともよくある。Facebook、Nike、ホンダ、Apple、セイコー、Googleなど、こうした有名消費者ブランドはすべて商品重視企業だ。これらの企業は、自らが作る商品によって顧客を引きつける。そしてたいていの場合、顧客は、企業が自分たちに何かをしてくれる行為よりも、企業そのものに対して強いロイヤリティーを感じている。

たしかに、こうした企業のすべてがある種のハロー効果をもたらすブランドを築いており、これによって競合他社よりも高めの料金設定や幅広い商品を販売することができている。しかし、結局のところすべて商品次第なのだ。商品重視企業は世界規模に拡大することができる。しかし、商品を作っている企業のすべてが商品重視企業であるとは限らない。

かつて、コネクション重視企業の評価は高かった

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実際、自社商品を持つ日本企業のほとんどが実は商品重視企業ではない。コネクション重視企業なのだ。徐々に変化し始めているものの、コネクションは昔から文化的に重要なものとされてきた。私が1998年に初めて日本で会社を立ち上げた頃は、ほぼすべてのスタートアップが大企業のサプライチェーンに加わることを目標としていた。こうした繋がりを持っていれば、マージンは少なくても安定的に仕事が入ってくるのだ。

当時このようなコネクションがより重要とされていた。なぜなら、系列関係はその自重によって崩壊し始めていたが、大部分の企業は依然として自社の企業グループ内で取引することを選んでいたからだ。そのうえ中小企業は独立した購買力をほとんど持っていなかった。だが、実際にはこうした閉鎖的で保護された系列内のマイクロ市場の存在は、80年代・90年代に日本が世界的に競争力のあるソフトウェア市場を築けなかった大きな要因の1つでもある。

当時、独立系の日本企業が複数の系列グループ内で自社商品を販売することは珍しく、力を持った企業に限られた。大多数の企業は生き残るためにクライアント企業(ほとんどの場合、唯一のクライアント企業)が指示したものだけを作っていた。

ここ20年程でだいぶ改善されてきたが、大口のクライアントを1社だけ抱えた、拡大の見込みのないスタートアップが日本には多く存在する。彼らは一定の受注が保証されたコネクションを持っているが、商品力のみで市場で勝負できるような商品を持っていないのだ。

勘違いしないでいただきたいのは、日本ではこうしたコネクションが過剰に重要視されているというだけであって、コネクションを築くこと自体は素晴らしいことだ。有力企業とお近づきになることで、初期段階で顧客を獲得したり流通経路を手に入れたりなどスタートダッシュを切ることができる。しかし、自社の商品は唯一の顧客よりも大事に扱わなければならない。さもなければ、いずれ破滅が訪れることになる。

コネクション重視企業 か? それとも、商品重視企業か?

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現在では、企業が本当に商品重視企業であるか、それとも初期段階のコネクション重視企業であるかを見分けることが難しくなっている。そして、自社商品を持つ企業のほとんどが商品重視企業だと自称する。だが見分けるポイントはいくつかある:

  1. 資金調達した後でもカスタム開発事業を継続している、もしくは、行う予定の企業は、ほぼ間違いなくコネクション重視企業。
  2. 商品に多くのカスタマイズが必要で、そうしたカスタマイズを行っている企業が他に無ければ、その企業はコネクション重視企業かもしれない。
  3. 特定の顧客に向けたプロジェクトとして始まった商品を大衆市場商品で売り出すことにしたのなら、その企業は十中八九、コネクション重視企業だ。
  4. 最大の得意先企業を2社失えば廃業してしまう企業なら、間違いなくコネクション重視企業である。

もちろんコネクション重視企業であることに何ら問題はない。実際、初期の段階では商品重視企業よりもコネクション重視企業の方が早いうちにトラクションを得て成長する企業が多い。しかし、その関係性は拡大せず、結局のところCEOが持つ業界におけるコネクションの強弱によってその成長が左右されてしまう。もちろん、コネクション重視企業であっても多くの利益をあげる企業も存在する。コネクションが豊富なやり手のCEOともなれば、コネクション重視企業を株式上場まで持っていくことも可能だが、グローバル企業になることはあり得ないだろう。

強いコネクションを持っていてそれを企業経営に活かしたいのであれば、そうすると良い。コネクション重視企業も上手くいくだろう。ぜひ頑張っていただきたい。ただ、本当の問題は、こうしたコネクション主義が日本のスタートアップコミュニティを後退させているということなのだ。

商品よりもコネクションを重視する傾向は、日本がスタートアップ文化においてペイフォワード精神を育てていく上で、唯一最大の障害と言えるかもしれない。私は絶えずそれを目にしている。あまりにも多くの人々が自らの持つコネクションやネットワークを用心深く保護すべきものとして、または、競争で優位に立てるアドバンテージとして考えている。そして、こうした考えを持つ人は、自分のコネクションを他の人に紹介してその価値を引き出そうとはしないのだ。

日本のスタートアップへのアドバイス

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もちろん日本人にも、オープンネットワークやペイフォワードというアイデアを受け入れる、または、受け入れようとしている人はたくさんいる。だが、少なくとも今は少数派である。私たちはそれを変えるつもりだ。そこで、日本のスタートアップ設立者に向けた最も重要なアドバイスが2つある。

1つ目は、いかなる種類の紹介についても決してお金を支払わないということだ。 ベンチャーキャピタルへの紹介であったり、彼らへのプレゼン方法の指導と称して、資金調達から手数料を取るような組織と取引をしてはいけない。こうした人たちのほとんどは、あなたを騙そうとしているのだ。同様に、見込み顧客を紹介すると言って手数料を取る人とも取引しないこと。もちろん、アフィリエイトプログラムやリセラープログラムは強力なツールだ。適切なタイミングで使用して欲しい。しかし、スタートアップ設立者としては、アプローチしておくべき見込み顧客を知っているという話を誰かが持ちかけてきた場合、紹介するだけで手数料を取ろうとしてきたら、丁重にお断りすべきだ。彼らは門番か、あるいは寄生虫のようなものだと思っていい。おそらく彼らの意見は、その紹介先からは大して重要だとも思われていないはずだ。

2つ目は、意識してペイフォワードを実践する努力を始めることだ。知り合いになることで互いにとってプラスになるような2人を引き合わせるか、もしくは、他のスタートアップの商品を見込み顧客にお勧めする。このどちらかを最低でも週1で何が何でも実践する、と自分の心に誓うのだ。ここで事前に注意しておくが、この通りに実践すると不公平に感じることもあるかもしれない。紹介してもらった5倍他人を紹介し、お勧めしてもらった10倍、他の商品をお勧めしているように感じるだろう。だが、それで良いのだ。それはきちんと実践できていることを意味し、長い目で見れば大きな利益が返ってくる。私が保証する。

何よりも、私たち全員がこれを実践すればオープンネットワークが広まり、門番や寄生虫のような連中を失業させることができる。

私は最近、日本をチアリーディングしているようだと揶揄されることがある。そして実際そうなのだ。日本の未来、特に日本のスタートアップに関して私はかなり楽観的に見ている。その理由の一部は、多くの人々(日本人自身も含めて)が日本で上手くいっている物事に目を向けようとしていないことにある。また、日本のスタートアップのために環境を整える上でトップダウン的なやり方はどうなのか、と私に尋ねる人がよくいるが、トップダウン方式はかなり上手くいっている。トレンドもすべて良い方向に向かっているが、いずれにしてもトップダウンでできることにも限りがある。

スタートアップが持つ変化に対応する真のパワーは、これまでも、そしてこれからも、ボトムアップによって生まれるのだ。

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