著者のピーター・チェジン氏は、認知テックに関わるベンチャーキャピタル Flint Capitalのアソシエイトである。Evgeniya Konovalova 氏は、アイデアとテックファウンダー、営利人材をつなげるプラットフォームScience Guideのファウンダー・CEOだ。

「医学の目的は病気を予防することと寿命を延ばすこと、医学の理想は医者の必要性がなくなることだ」と、有名なメイヨー・クリニックのファウンダーの一人である医者・外科であるウィリアム・J・メイヨーはかつて述べた。
人工知能の活用と医学研究のトレンドによって、この医学の目的と理想に私たちは近づきつつある。
たとえば医療サービス提供者による、収益内のITに投資する比率は2014年には4.2%と全業界の平均3.3%よりも高い。電子医療記録の浸透率は、2012年の40%から2017年には67%に上昇した。生成されるデータは急速に増加している。
Ciscoの予測によれば、ヘルスケア分野のマシン・トゥー・マシンのコネクションの、2015-2020の年平均成長率は30%と、コネクテッドカーの年平均成長率29%を上回っている。
投資家の注目度についてはどうだろう。コンピュータビジョン、機械学習、ロボティクスなどAIによる先端医療テクノロジーへの投資も2012年の3000万ドルから2016年には8億9200万ドルへと急速な伸びを示している。
予測と予防、ウェルネスとリハビリ、エイジングの改善、医者に対する技術的な補助
ヘルスケアテクノロジーにおける主要なテーマは、予測と予防、ウェルネスとリハビリ、エイジングの改善、医者に対する技術的な補助だ。

ヘルスケアAIスタートアップ218社のうち、54社が予測医学に取り組んでおり、そのうち44社は2010年以降に創業している。たとえば、JvionやHBI Solutionsは、医療機関に対して患者の予測とリスクスコアを提供する。
ウェルネスへの関心も上昇中で、218のAIヘルスケアスタートアップのうち、21社がウェルネスアプリケーションを開発している。特にまだ若いスタートアップはウェルネスアプリケーションに取り組む傾向が見られ、AIをベースにしたウェルネス関連のスタートアップの95%が2010年以降に創業してる。

新種のデバイスが増えれば、健康な人々のデータが無限に集められるようになる。多くのデータが集まるほど、インサイトも多く得られる。
予測と予防の領域では、危険な疾病の元となる原因を排除することを目的に細胞や遺伝子の研究が進められている。ここでもまた、機械学習が成長を後押ししている。
細胞や遺伝子の研究に取り組むスタートアップの数も増えているが、中でもよく知られている
Human Longevity、BenevolentAI、Recursion Pharmaceuticalsは、2010-2017の間に創業した比較的若いスタートアップだ。
エイジング(老化)も注目のトピックである。大量かつ充実したデータを集められるテクノロジー、機械学習がエイジングへの取り組みを後押ししている。BioageLabsとInsilico Medicineは、アンチエージングの薬の発見のために機械学習を用いる
リハビリも成長中のトピックで、長期間のコミットメント、繰り返しの動き、継続的なフィードバックループが必要であるため、AIを使う利点も大きい。Intendu やPeerwellというスタートアップが取り組んでいる。
医者を仕事を奪うのではなく、医者のエンパワーメントする
こうした疾病のすべてが予防可能になるのだろうか? 医者は必要なくなるのだろうか? それは現時点の関心の中心ではなく、むしろ現在はAIを利用したヘルステックは医者のサポートと、より患者がアクセスしやすいものにすることに注がれている。
コンピュータビジョンを活用する35社の取り組みを見ても、動画の記録、編集、共有のプロセスをシンプルにするためのテクノロジーを開発するByLabsや、「医療従事者と医療提供者をエンパワーする」という目的を掲げるMindshare Medicalという例もある。
通信医療もまたエンパワーメントの取り組みの一つである。調査対象の218社のうち39社が通信医療に関わっており、医療知識の提供と初期の仮診断をするBabylonやYourMD、モニタリングツールの提供するSentrian、AiCure、質の高い医療関連情報とアドバイスの提供するZoiHealth、Floといったスタートアップがいる。
こうした動きを踏まえると、メイヨーの掲げる医療のビジョンは、私たちが考える以上に現実に近づいているのかもしれない。疾病が完全に消滅していない現時点では、テクノロジーは医療従事者の仕事を奪うよりもむしろ、彼らに力を与えているといえる。さらに多くの、有望なAIヘルステックが現れることを期待しているし、起業家はこの領域が秘めるチャンスを考慮するべきだろう。
(本記事は抄訳になります。)
(抄訳:佐藤ゆき)
【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】
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