CAMPFIREのICOはまだ「検討中」ーーVALU、Timebankが語るトークンセールが実現する個人評価の時代 #bdash2017夏

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「たくさん株主から電話きたんですがあくまで検討開始です、っていう内容ということで(東京に)帰ったら説明にいかなきゃいけないんです…」。

こう苦笑しながら今朝の報道について解説していたのが、クラウドファンディングCAMPFIRE代表取締役の家入一真氏。国内初となるICO(Initial Coin Offering)プラットフォーム「COMSA」で三番目の「ICOします!」事例として報じられたが、実際はまだ検討中ということなのだそうだ。

さておき。

ここ数カ月で一気に話題になることが多くなったICO。新たな資金調達の手法として注目されているが、まだまだ一部の識者たちが議論している段階だろう。このホットワードについて議論するステージが札幌で開催中の招待制カンファレンス、B Dash Campで実施された。

登壇したのは前述の家入氏のほか、個人評価を可視化するVALU代表取締役の小川晃平氏、時間を取引できるTimebankのリリースを控えたメタップス代表取締役の佐藤航陽氏、森・濱田松本法律事務所の増島雅和氏、モデレートはフリークアウト代表取締役の佐藤裕介氏が務めた。

CAMPFIREはICOする?

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COMSAでの実施は検討中ということだったが、ICOそのものについては真剣に考えており、実際、今年の3月に仮想通貨の取引所「FIREX」を公開した際に独自のトークンについて言及している。

「事業始めて6年ほど。ここにきてICOという流れが一気に顕在化してきました。もともとやってきたクラウドファンディングに対して我関せずとするのは違うだろうと。では何をやるべきかという議論の中で、まずは自分たちがICOをやるべきという結論に至ったのがひとつあります。ただそれを自前でやるのかどうかを協議しているところです。取引所をオープンした際に独自トークンの話はしていたのでようやくこの話ができるのかなと」。

家入氏はクラウドファンディングの可能性と同時に限界も感じており、例えば個数限定のファングッズがすぐに売り切れるような「安すぎる」価格設定はプロジェクトオーナーにとっても不幸なできごとになる。こういった状況をCAMPFIRE独自トークンの発行によって、通常の支援者の購入だけでなく、その権利を二次流通させることで価格の変動を作り出して解決できないか、そんなことを考えていた。

自分たちがICOすることで独自のトークン・コミュニティを生み出し、その流通の上にチャレンジする人たちのプラットフォームを作る、家入氏の話からそういう未来が見えてくる。

「インターネットの本質は声を上げやすくなったということに尽きます。経済状況の格差が広がることが予想されるなか、声があげられない人や社会からこぼれ落ちる人たちのために何ができるのか。購入型クラウドファンディングのような小さな経済圏ではなく、もっと大きな経済圏を目指すべきかなと。(ICOは)ソーシャルセクターやNPOバンクのような活動には相性がいい」。

トークンセールに期待されるネットワーク効果

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ICOは1兆円を超える調達額などの話題先行で盛り上がるがイマイチその全貌は理解されていないかもしれない。増島氏はこう整理する。

「ICOは言わばグローバルのクラウドファンディング。寄付や貸付、購入などがあるが、トークンセールは断然購入型。デリバリがトークン経由であることからグローバルで簡単にできるのが特徴。クラウドファンディングの特徴はいろんなプロジェクト活動を見せることでユーザーが増えることにあります。このネットワークを大きくすることで調達額が大きくなる」。

仮想通貨を持ってる投資家コミュニティから資金を調達することになるのだが、ここで値段が上がれば購買力が強くなり、それをトークンに引き寄せることができる。トークンが流動性を獲得すればさらにユーザーを巻き込めるようになる。お金を稼ぐという価値観からネットワーク全体を評価するという価値観への変化、参加者の増加で利益を得るユーザーが増える、こういったネットワーク効果に強みがあるとした。

盛り上がる個人評価の時代

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ICO「ぽい」事例として話題筆頭なのがやはりVALUだ。ただ、小川氏はこれを直接ICOと重ねて考えている様子はなかった。

「個人をトレーディングカードのようにして上場させるのがVALUです。サービスインで2カ月、想定していなかったのは今時点で5000人ほどのユーザー数予想がその10倍になったことです。週末や夜間はやってなかったのに流入は相当ありました。最初は取引制限つけてなかったので価格が高騰して流入してきましたが、最近ではクリエイターなどが入ってきています。個人が活躍する世の中で評価経済を実現したく、何がベストかそれを考えて作りました。ICOが爆発する直前だったので追い風感はあります」。

個人の魅力を価値として取引させるのがVALUだとして、その単位を時間にしたのがメタップスが今秋に公開を控える「Timebank」だ。

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「空間の売買は不動産があるのに、時間はなぜ固定化されていたのか不思議だったんです。時間こそ時価で決めるべきで、専門家とかそう言う人の働き方が楽になるのかな。不動産の地主と同じように自分の時間を資本にして生きる人が出てくるんじゃないかと考えて作っています」(佐藤氏)。

類型される事例がなさそうなTimebankだが、佐藤氏によれば中国で爆発するインフルエンサーたちの活動から個人の時間や活動が評価される流れを感じ取っていたという。ただ、取引する際の通貨については法定通貨なのか仮想通貨なのかまだ検討中ということだった。サービスインは9月を予定している。

「(サービスイン後にどうなったらこのプロジェクトが評価されたと考えるかという問いに)私の価値と会社の価値どちらが高いかなと比べてみて、会社の時代であれば会社が勝つし、個人の時代であれば個人が勝つ。個人的には個の時代になって欲しいなと思ってます」。

佐藤氏の説明でTime Bankのような価値観が浸透することでより時間を有している若者が評価される世界観というのは、シニアばかりが優遇されがちな現在の経済圏に住む者として非常に強く共感した。

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