
最近「お金を支払う」というこれまで当たり前だった行為を改めて考える機会が多くなった。
きっかけはPaymoやKyash、PAY ID、Japan Taxi Walletといったスマホアプリ系の個人間・少額決済ソリューションの登場だ。特に個人間決済については、正攻法で資金移動業の登録をしたLINE Payが先行していたが、確かに送金は早く便利な反面、個人認証などのハードルから使いづらさがあったことは否めない。
市場の大きさとこの課題に注目した各サービスは、それぞれ独自の視点でアイデアを出して問題をクリアしようとしている。
一方でその分類や狙いを理解するのはなかなか厄介だ。もちろん参考になるのは海外で先行するPaypalやVenmo、Alipay、WeChat Payだったりするのだが、実際、各サービスの向かう先は微妙に違っていたりするし、日本という法定通貨が安定した国での使い勝手や体験性も実際に使ってみると随分と違うものだと気がつくことも多い。
そこで筆者は普段の生活で実際にこれらのサービスを使うことがあるのかどうか、できるだけ自然なシチュエーションで試してみることで、それぞれの使用感についての直感的な気づきをまとめてみることにした。前半の本稿では個人間のお金のやりとりを変える決済・送金について「Kyash」「Paymo」「LINE Pay」の3サービスについて整理してみる。
割り勘シチュエーションでの現金との戦い

まずはPaymoから。割り勘を個人間「送金」じゃなくレシート添付の方法で個人の債権に対する決済代行というアイデアでクリアしたサービス。
とある夜の会食でごく自然に割り勘という流れになったので、まず私がお店にクレジットカードで全額支払って(テスト兼ねて現金所持せず参加だったため)思い切って「Paymoでお願いします!」と伝えたところ、7人中使えたのは1名。後は現金というちゃんぽんスタイルに落ち着いた。
初対面の会食シチュエーションというハードル高めの設定だったので、さすがにお会計の場所でレシートを撮影して云々はやはりやりづらかったが、それでもその使えた1名については「後で送ります」という自然なコミュニケーションができたのは発見だった。こういうことは現金ではできない。
あと実際に使ってみた心理的な障壁として「みんな使ってるのかな」というものが意外と大きかった。使ってない人に使わせるインセンティブがやや弱く、現金を出された瞬間に「それでいいや」となりがちなのだ。特に幹事する人がユーザーでない場合は「それで送るから」と言いづらいし、参加した人数が多い場合、使ってる・使ってないが混在するとどうしても「面倒」が立ちはだかる。あと決済代行なので着金するまでにタイムラグあるのも弱い部分になる。
ありとあらゆるシチュエーションでの割り勘に現金よりスムーズに使える、とまではいかないが、特定コミュニティ(例えば社内の同僚とか)での食事会など準備が整っている場合に真価を発揮する気がした。突発的状況下ではやはりまだ現金に軍配が上がる。
あと送金とは全く関係ないが、Paymoには誰が誰に支払ったかをfacebook連携して繋がりのある友人に表示するタイムライン機能がある。Vemmoのようなコミュニケーションが想定される場合は有用かもしれないが、まだ利用側の文化が整っていない状況では単なるプライバシーの公開になりかねないので、個人的には少し早いのではないかと違和感を感じた。
レシートが複数に別れた時に使ったKyash、家族で使ってるLINE Pay

チームメンバーで食事会をした時のこと。スーパー等でお買い物をし、わいわいと食べて後日に会費を回収という流れに。レシートが複数に分かれて別々の人が持ってたこと、現金でもう既に払っちゃった人がいたということからPaymoでの支払いを断念して別のアプリを使うことに。(Paymoが添付できるレシート写真は一枚)
LINE Payは送金先の幹事が使っていなかったので、ここで初めてKyashが候補として浮上。KyashはPaymo同様に資金移動業者ではないものの、決済代行の手法ではなく、Kaysh内で使えるポイントみたいなものを付与するという「前払式支払手段」を取っている。送ってもらった残高は現金として出金できないがVISAカードとして利用することができる、ちょっと癖のあるサービスだ。
支払い先もたまたま利用ユーザーだったのでfacebookアカウントでの連携からスムーズに相手が見つかり支払い完了。
レシート添付が不要なのでそういった余計な手間をお願いすることも、お願いされることもないのはやはり楽。また、相手が登録していない場合もfacebookのメッセンジャーで送付できるので、私のように友人や仕事関連でFacebookを使ってるユーザーは便利に思えた。着金後すぐにチャージされたVISAカードが使えるのもメリットだ。

しかしやはり送金される側、つまり幹事してくれた友人に現金として引き出せない「ポイント」を送るのはシチュエーション次第。
実店舗利用も準備中ということで、VISAが幅広く使えるのは理解できるがそれ以上に資金移動ができないことから例えば500円だけ残高に残っても使い勝手が悪い。ここが現金として引き出せないKyashならではのデメリットで、また、一度そういう形で送金してしまうと、返金してもらったとしてももう現金に戻ることがないので、この「Kyash独特のルール」を説明するコストが意外と高いかなと感じた。
そして実はここまで使いにくいと書いているLINE Payが個人的には一番利用頻度は高い。というのも普段家族でのお金のやりとりをしているのがこれだからだ。
家族向けの買い物などをした場合に家計管理でこれを使っている。送金の速さや銀行口座との入出金についてはいたってスムーズで、相反するように送金事業者であるが故の個人認証は相当なハードルとしてある。何度でも書くが、実際に登録は面倒だった。
とにかく汎用性の高い現金と比較してなにかと制限が多い。使い始めるまでに免許証などを郵送し、銀行口座や個人アカウントの登録、そしてそのあとにようやく他のサービスで体験したような他のユーザーが使っているかどうかの検索に入るので、極めて用途を限定した使い方(個人的には前述の通り家計管理)に当てはまる場合には使える。
現在はマネーフォワードとの連携も開始されたので、お金の管理を徹底したい一部の人にはすこぶる便利かもしれないが、送金という非常に範囲が広く一般的な行為には向いてない。特に他人とのやりとりは現金の方がやはり便利。
QR決済はポスト非接触の有力候補になるか

ここまでは個人間での決済についてレビューしてみたが、もうひとつ大きいのが店舗での決済だ。モバイルでの支払いは長らく非接触ソリューション(つまりはおサイフケータイ)が鉄板だった。しかし、MVNOが登場して格安スマホが広がりをみせるなか、FeliCaという日本独自のメーカーとキャリアが牽引してきたソリューションも盤石ではなくなってきているように思う。
一方、QRコードによるソリューションは汎用で、どのスマートフォン、デバイスでもアプリとカメラさえあれば利用できる。また店舗側も特定の非接触リーダーや、クレジットカードのスワイプ端末を導入するなどの初期コスト・ランニングから解放されるという大きなメリットもある。これらについてはまた機会あればレビューしてみたい。
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