普通のスマホのカメラをKinectのようなVR/AR対応カメラに変える、Topplus(通甲優博)の新技術「MagicBar」

by TechNode TechNode on 2017.8.22

スマートフォンの性能を語る上でカメラは重要な要素であるが、過去10年ほどで機能も劇的に進化した。顔認識、フィルタ、決済に使える QR コードのスキャンなど、数多くの機能がカメラの性能によって支えられている。Pokemon Go の成功を追い風に、VR と AR の技術は今、スマホカメラの未来の姿を描きつつある。

Topplus(通甲優博)の設立者で CEO の Xu Yidan(徐一丹)氏は、急成長する VR/AR 業界に進出するためには、スマホのカメラ機能を強化することが効果的だと考えている。誰もが持ち歩いているスマホは、ほぼ全ての用途においてもってこいのプラットフォームだ。

Xu 氏は次のように述べる。

今後5年ほどの間、スマートフォンはスマートハードウェアの中でも最大の出荷数を誇り続けるでしょう。ヘルメット型やゴーグル型のAR機器よりもユーザに浸透しています。何より、スマートフォンではモバイル決済サービスが普及しており、VR/AR のコンテンツをマネタイズすることが容易です。

Topplus(通甲優博) CEO の Xu Yidan(徐一丹)氏

中国の成都に拠点を置く同社はコンピュータビジョンのスタートアップで、先進的なカメラ技術を可能とするモデルと SDK(ソフトウェア開発キット)を開発している。これらにより、デプスマップ(被写体との距離を示す情報)、VSLAM(ビジュアルセンシングに重要となる技術で、自己位置推定と環境地図作成を並行して実行すること)、そしてマルチアングルのセンシングといった機能が利用できるようになる。

同社はインテリジェントなカメラモジュールとして MagicBar(MagicBar 魔条)という商品を提供している。これはデプス機能と VSLAM のアルゴリズムをサポートし、スマートデバイス上で広範囲の空間認識を可能にするものだ。3D マップの作成をリアルタイムで実行することもできる。

Topplus の開発キットを使えば、デベロッパはどんなスマホのカメラでも Kinect に似たモーションセンサーに早変わりさせ、ARゲームで使うことができる。同社が披露したデモ用の魚釣りゲームでは、VSLAM とマルチアングルセンシングの技術を最大限に活用し、最大4人のプレーヤーが同じフィールドで同時プレイが可能。各プレーヤーは同じ環境を別の角度から体験し、ターゲットとなる魚を巡って釣りを競い合う内容だ。

ごく小さな市場への割り込み

カメラソリューションの提供は容易なことではない。スマホ製造に関わる各社、つまりカメラ製造企業、チップ製造企業、OEM 工場など全てを巻き込んだパートナーシップが必要となる。

Xu 氏はこう指摘する。

スマホ製造業界は比較的保守的です。競争が激しくマージンが少ないため、スマホ製造企業は故障率が高くなることを嫌い、極めて安定したカメラソリューションを求めています。また、最低でも500万台の出荷能力が必要とされるため、市場への進出は輪をかけて難しくなります。『実験』して危険を冒したがる会社などないのです。

半ば閉ざされたスマホのカメラ市場に進出するにあたり、Topplus は同社が特許を取得している人物写真にボケ味を加える技術を足がかりにした。背景を滲ませ「ボケ」を加える機能は、大きなレンズ口径を生かしてデプスマップを作成し、前景の人物や物体だけに焦点が合ったような画像を生成する。この機能は Apple のスマホに搭載されて以来人気を集めており、将来的には標準機能として全てのスマホに広がることも考えられる。

AppleとHuaweiは業界で特許を保持しており、中小のスマホメーカーにライセンスすることは滅多にありません。私たちはこの技術を比較的小さなスマホブランドに提供しています。中国のスマホ企業が海外市場に打って出る際には、合法的な特許ライセンスの取得がネックになることが多いのです。(Xu 氏)

スマホメーカー各社から特許のライセンス料を徴収できることも大きな恩恵だが、それ以上に意義深いのは、ボケ技術を武器として同社が業界のあらゆる種類の企業と深い関係を構築できる点だ。スマホ製造企業は工場のフロアのデータを開示し、チップ製造会社はワークフローを明かし、モデル製造会社からは各種スペックの情報が得られる。

カメラのSDKのアップデートとモデルへの対応が必要となるため、この業界で活動するにはこうしたデータが欠かせません。こうした情報があったからこそ私たちは業界に進出できるのです。(Xu 氏)

AIスタートアップにとって、正しい方向の見極めはなおのこと難しい

スタートアップが初期の段階で限られたビジネスアイデアに基づいて行動することは良いことだ。Ofo(小黄車)のようなオンラインサービス大手ですら同じようにしている。だからこそスタートアップにとって、方向性の感覚を研ぎ澄ますことは重要だ。しかし、進むべき道の決定は簡単なことではない。どの選択も状況によって好手とも悪手ともなり得るし、時間が経つまでは結果が見えないことも多々ある。

こと AI に関しては業界自体がまだ黎明期にあり、活用できる分野を模索している段階だ。したがって、前述のジレンマは特にこの業界のスタートアップによく当てはまる。

AI 業界では過剰なバブルが起きています。AI のスタートアップの多くは自身で特定の分野を掘り下げて利益を生み出すというよりはむしろベンチャーキャピタルの投資で生き延びている状況です。(Xu氏)

同社のコンピュータビジョンのソフトは数ある AI の中でも注目に値するものだが、Topplus はシェア争いで苦戦してきた。カメラソリューションに転向したのは昨年度末のことで、それ以前は小売店向けのVRメガネの試着体験ソリューションと、物体の追尾およびブレ補正を行うドローン用の技術にフォーカスしていた。

苦難の時代を経験した Xu Yidan 氏は、「良い方向」をこう定義している。

長期的に100億人民元の収益を上げる見込みがあるなら、短期的には辛くとも耐え抜くことができるでしょう。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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