ライブコマース元年と称される2017年、CandeeのLive shop!やメルカリのメルカリチャンネル、MimiTVをはじめとして日本で多くのライブコマースサービスが登場した。インスタントコマースのBASEも数日前に店舗のライブ配信機能「BASEライブ」を公開している。
ライブコマース元年の影響はECやIT業界だけではない。ライブコマースに登場するモデルやタレント、インフルエンサー、それらが所属する芸能事務所もライブコマース事業との業務提携などでこの市場に参画してきている。
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なぜ芸能業界がインターネット業界との取り組みを加速しているのか?ーーこのテーマについて雑誌や芸能事務所との提携をすすめるCandeeのLive shop!事業提携を担当する執行役員鍛治良紀氏とりゅうちぇる・ぺこなどのタレントが所属する芸能事務所スターレイプロダクション執行役員の横山裕之氏に話を聞いた。(太字の質問は全て筆者。文中の敬称は略しました)
芸能事務所がコンテンツプラットフォームを持てる

横山さんはライブコマースの登場で芸能業界に大きな変化があったと感じていますか?
横山:ライブコマースが出てきたことでがらっと状況が変わった、積極的にインターネットコンテンツを攻めていく動きになったかと言われると実際そうでもありません。芸能事務所と一口に言っても多くのタレントが所属する歴史ある事務所から、新参の事務所まで様々です。わたしたちも6年になりますが、業界の中ではまだまだ若く常に新しい取り組みには積極的なので、その中の1つにライブコマースがきている認識です。
インフルエンサーなど発信する個人が多く登場し、個人でも発信が容易になったことでタレントの価値も変わってきているのではないでしょうか?
横山:確かにテレビができた当初に比べて、インターネットの普及により個人の発信が増えました。タレントにとってはアメブロなどが良い例だと思います。結果、芸能事務所も増えて昔よりもタレントやモデルといった仕事に足を踏み入れやすい環境になりました。しかし母数自体が増えただけで、実際タレントで食べて行ける人の母数は変わっていないというのが現状だと考えています。
なるほど、今回Candeeさんとは業務提携という形で取り組まれていますよね。モデルやタレントの発注という形で取り組んでいないのは何か理由があるんでしょうか。
横山:今回の取り組みの狙いにはタレントを出す側だった私たち(芸能事務所)がコンテンツ枠を持ったり、メディア戦略を芸能事務所自体ができるという点があります。ブランドやアパレルメーカーがコラボやプライベートブランドをするイメージに近いですね。いままでのタレントを出す形から、お互い共に取り組んで一緒にいいものを作ってビジネスをしようという流れになっていると思います。
「中国のモデルをそのまま持ってきても流行らない」のは何故か

やはり日本のライブコマースの流れには中国での躍進も背景として欠かせないですよね。今注目されているゆうこすさんなどは中国にいるような1配信で数億ドルを稼ぐファッションインフルエンサーに近いのではないでしょうか。
鍛治:そうですね、ただ中国のモデルは日本にそのまま持ってきても流行らないと思います。
國光氏(Candee取締役会長の國光宏尚氏)も言及されていましたが、具体的に中国と日本のライブコマースの違いはどこにあるんでしょうか。
鍛治:中国のライブコマースでは買い手も売り手も発信者主体です。たとえば配信されるライブコマースでもいくつもの商品を「このセーターは着心地が良いです」など次々と説明していきます。買い手側もその情報を判断して質問をしたり、購入したりします。中国のインフルエンサーたちは自分の意見をはっきり発信することでセルフブランディングを確立しています。
日本では自己主張や発信する文化が中国とは異なるので、商品をどんどん紹介されるよりもライブコマースを楽しく、可愛い!と共感して見れることが大切なのでは、と思っています。
なるほど、日本で流行るインフルエンサーのポイントとして感じている部分はありますか?
鍛治:プラットフォームの使い分けが上手な人は多くのファンに愛されていますね。たとえば先ほど名前があがっていたゆうこすさんであれば、Twitterでは少し真面目なしっかりとした印象のツイート、Instagramでは可愛い!と共感するような投稿と上手に配信する場所を使い分けています。ファンがどちらも見て楽しめるといった内容になっていますね。


鍛治:認知力と人気は違うので、タレントのような認知がなくても人気をつかめるインフルエンサーはいます。
横山:たしかにりゅうぺこもインフルエンサー的な流行り方に近いかもしれません。雑誌などでは憧れの存在、SNSでは撮影裏などのリアルを配信することでコアなファン層を獲得しています。共感を生めるかどうかはミレニアル世代向けに発信をしていく上で重要ですね。
でも個人が上手にプラットフォームを活用してファンを獲得できるようになれば、芸能事務所の必要性も減ってしまいませんか?
横山:そこに関しては個人ではできない企業と企業が組むというメリットがあると考えています。コンテンツの枠を作る取り組みもそうで、取り組みの中でお互い依存関係にならずパワーバランスが取りやすいのです。SRチャンネルでユーザーが集まってきたところでタレントを認知してもらい、タレントを共に育てていくといった取り組みができることを将来的に見ています。
タレントのアメブロが流行っていたときは誰もアメブロをみんなが書かなくなると思っていなかったと思います。しかし、時代の流れと共にライブコマースやyoutuberの活躍するyoutubeといったプラットフォームも変わっていくので私たちは芸能事務所としてその流れをつかんでタレントを輩出すべきだと思っています。
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