インドネシアのチャットボットプラットフォーム「Kata.ai」、シリーズAで350万米ドルを調達——台湾と東南アジアへのサービス展開に着手

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Kata 設立チーム:(左から)Wahyu Wrehasnaya 氏(CFO)、Reynir Fauzan 氏(CMO)、 Irzan Raditya氏(CEO)、Ahmad Rizqi Meydiarso 氏(CTO)
Photo credit: Kata.ai

Kata.ai は、ジャカルタに本拠を構え、インドネシア語のチャットボットを開発するスタートアップ。同社は台湾の Trans-Pacific Technology Fund(TPTF)がリードしたシリーズ A ラウンドで350万米ドルを調達した。

本日(8月29日)発表のリリースの中で、この資金を新しい市場でのサービスのローンチに充てると述べている。台湾を皮切りに東南アジア諸国に展開する予定。これにより Kata は、早期から国際展開に取り組むインドネシア発スタートアップの仲間入りを果たす。前身の Yesboss という仮想アシスタントは2015年に始まったが、同社が現在の形で発足してからはまだ1年足らずである。

今回のラウンドに参加したその他の投資家は、韓国に本拠を置く Access Ventures、インドネシアに拠点を置く Convergence Ventures、インドネシアの国有通信会社 Telkom のベンチャーキャピタル部門である MDI Ventures、VPG Asia、Red Sails Investment、エンジェル投資家の Eddy Chan 氏となっている。TPTF の社長である Barry Lee 氏は Kata の取締役に迎えられた。

Kata.ai は、人工知能と自然言語処理を活用したデジタル・ペルソナを開発している。会話能力を備えており、企業の顧客理解の助けとなるほか、サポートプロセスの自動化を狙っている。今後の国際展開の一環として、標準中国語を始め、多くの言語を処理する方法を学習する予定だ。

インドネシア市場のボットの例としては Jemma があるが、これは Kata が Unilever と提携して開発したものだ。女性のペルソナであり、メッセージアプリの LINE を通じてファッションや人間関係などの話し相手になる。彼女は顧客に名前や誕生日といったデータの入力を求め、お返しに星占いとアドバイスを返信する。

Kata が作成したもう1つのボットとして、Veronika がある。Telkom のモバイル通信子会社である Telkomsel と、国際的なコンサルティング会社の Accenture が提携して開発した。プリペイド携帯の残額のチャージ、データパッケージの購入、最寄りの Telkomsel サービスストアでの予約などの機能を持つ。Veronika は数日前にローンチしており(原文掲載日:8月29日)、LINE、Facebook Messenger、Telegram から利用可能だ。

WhatsApp が市場の流れを変える

チャットボットの技術はまだ黎明期にあると言える。Microsoft が2016年に行った実験では、会話を通じて人々から学習するよう設計されたチャットボットの Tay が、人種主義的発言を行うという不祥事が起きた

また、ボットと会話するためのテキスト入力には時間がかかりすぎるため、ユーザエクスペリエンスの観点から望ましくないという批判もある。批評家の中には、デバイスの音声制御が普及すればボットはさらに有益になるという意見もある。

Kata の共同設立者兼 CEO である Irzan Raditya 氏は、こうした意見に反対の立場だ。インドネシアではまだデバイスは高価であり、現地語の認識もまだ十分進んでいないため、音声制御が根付くまでにまだ数年かかるだろうと考えている。彼は Tech in Asia に対して、インドネシアの人々は文字入力をそんなに煩わしいものとは考えていないと語った。

インドネシアでは、平均して4.2個のメッセージングアプリがスマートフォンにインストールされています。ここでは97%の人々が1日に複数回メッセージングアプリを使用しているのです。

Microsoft が Tay で経験したような過ちを避けるべく、Kata の設計するボットは狭いスコープをターゲットにしており、事前に定義された各種トピックの中で会話を行う。商品の購入や情報の送信など、特定の目的にのみ使用することができる。

現時点でこうした制約はあるが、最終的にはチャットボットは成熟し、企業の業務を効率化したりユーザの生活を楽にしたりすることは間違いないだろう。

Kata には成功の兆しがある。同社のチャットボット Jemma は、140万人を超える LINE ユーザに友達登録されており、チャットセッションは最長で2時間も続いている。平均は約4分だ。Kata が8ヶ月前にサービスをローンチして以来、チャットボットを利用した人の総数は600万人に達している。

開発者がプラットフォーム用のチャットボットを作成できるような仕組みをすでに用意しているメッセージアプリもある。LINE、Facebook Messenger、Telegram などが一例だ。WhatsApp はインドネシアを含む44ヶ国で最も人気のあるアプリだが、チャットボットの機能にはまだ対応していない。「WhatsApp はボットのゲームチェンジャーになる」と Raditya 氏は見ている。

Kata は現在、企業顧客向けのカスタムボットを作成している。さらに、開発者が独自のボットを構築できるよう、ウェブベースのソフトウェアをまもなくローンチする予定だ。このサービスは現在、Veronika の開発でも Kata と提携していた Accenture など、一部のクライアントがテストを進めている。

インドネシア国内でチャットボットを使ったビジネスモデルを試しているスタートアップとしては、その他にも Bang JoniSale Stock が挙げられる。Bang Joni は、LINE 用に開発された仮想コンシェルジュボットだ。航空券のオンラインでの購入を行うことができる。一方の Sale Stock はファッションを中心とした e コマース企業で、ユーザとの関わりの深いメッセージアプリを通じて商品を購入できるようにするチャットボット技術に取り組んでいる。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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