セルフィー撮れば広告が追いかけてくるーー人工知能と顔認識で変わるマーケティング、企業が気をつけるべき4つのこと

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Photo via VisualHunt.com

編集部注:寄稿したのはICF OLSONでエグゼクティブクリエイティブディレクターを務めるDylan Gerard氏

家電量販店でいくつかテレビ製品をチェックして帰宅するとしよう。

この間、あなたは店舗にあるカメラでスキャンされ、その顔のデータはそれを含む他のデータベースと相互参照されることになる。リターゲティングキャンペーンの震源地がここだ。この瞬間からあなたの顔を認識しているカメラ付きのスマートテレビは、他店で同様のサービスを使ってあなたが買うかどうか熟考している間に、検討中の新しいテレビの宣伝を流すことが可能になったわけだ。

この際に次の点を考慮しよう。あなたが今持ってるテレビが違うブランドなのであれば、他のテレビやそのブランドの広告をこれまで一度たりとも見たことがないかもしれない、ということだ。そこにサインアップや同意といった手続きは不要だ。必要なのはあなたが「顔」を持っていて、そして他の大多数がそうであるように利用規約に対して無関心であればOKだ。

これは別にそう遠くないシナリオだ。数カ月以内には実現できるだろう。

例えばAppleは来月出荷予定のiPhone Xで顔認証を取り入れた。彼らは顔のデータを使ってスマートフォンのロックを解除し、かわいい「animoji」を動かすことができるようになる。このアニメーション絵文字は自分の顔の動きに追従してくれるのだ。Appleはこの顔のデータがクラウドではなく自分のスマートフォンに留まると主張しているが、利用規約なんていつ変更されるか分からない。もちろんAppleだけが私たちの「顔」を利用しようとしている唯一の企業ではない。

企業ブランドはユーザーの顔を「変える」遊びを提供しているーー顔のデータをキャプチャし、楽しげな画像やビジュアルエフェクトを作るアレだ。そのためにデータを利用している。顔のデータが保存されるたび、人工知能の機械学習によって再利用される可能性があるのだ。

雑誌「エコノミスト」によるとfacebookだけでも12億の顔がスキャンされて保存され、認識されている。ユーザーは自動タグ付けが便利だということから、その代償として彼らの収益ツールボックスに必要なひとつのデータとして自分の顔データを提供している。そしてこういった状況において利用規約を読み込むことは稀である。

セルフィーやビューティー・フィルタの次はAnimojiであり、これらは無限にも思えるナルシズムを逆手に取ってより正確なマーケティングを実現すると同時に、より厳しいセキュリティや本当に恐ろしい、差別的な可能性のある状況を生み出すことに繋がるのだ。

その次が屋外看板だ。HDカメラを使って通りすがりの人々を撮影してその対象としたらどうだろうか?大量の顔がカメラ付き看板から認識されることになり、特定商品の最大公約数的な情報が看板を通じて表示される。SUVを買う確率は30%、冬のブーツなら15%、足のクリームなら1%、といった具合だ。通りがかりにある看板がライト・ビールから有機ELのテレビまで次々切り替わる。

雨が降ってカメラがうまく認識しない場合?簡単だ。傘と地下室の防水関連グッズに内容が切り替えればいい。

好むと好まざるに関わらず、この技術はもう後戻りすることはない。企業ブランドはこれらのツール類を選択肢として外すべきだろうか?もちろんそうは思わない。しかし、責任を持って活用し、消費者と信頼関係を維持する必要が出てくる。意味ある顧客体験を作り出すキーワードは「信頼」なのだ。

信頼を構築するのには長い時間がかかる。しかし吹き飛ぶ時は一瞬だ。ここに顔認識技術を活用したい企業ブランドが考えるべき項目を挙げておこう。

  • 1:理由を持とう:顔認識は実際の戦略に活用可能だろうか?あなたがそれを必要としているのであれば必ずそこには理由があるはずだ。
  • 2:エンドユーザーに利益をもたらすか:ブランドだけに利益があってユーザーに何もないならそんなものはご遠慮いただきたい。
  • 3:言葉に責任を持つ:データを保有してるかどうかに関わらず、言葉に責任を持ち、信頼を構築する。
  • 4:安全性を確保する:ヘルスケア、フィンテック、サイトのセキュリティ、こういったサービスのために顔のデータを保管している場合はデータセキュリティについては特に厳しい措置を講じること。また、その投資については透明性をもって臨むこと。訴訟は嫌でしょう?

楽しく便利な体験によってユーザーを喜ばせることができるなら、彼らはブランドを信頼し、利益を与えてくれるはずだ。もう単純な理由で顔のデータを無視することはできなくなっている。ーー今からでも遅すぎることはない。鍵は透明性と信頼、だ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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