中国 eコマースの巨頭 Alibaba(阿里巴巴)は市場最高のeコマースプレイヤーになるだけでなく、テクノロジー面での卓越した技量をも深化させようとしている。
Alibabaが10月11日に杭州市で開催した毎年恒例のコンピューティングカンファレンス 2017では、今後3年間で研究開発に150億米ドル投資していく計画を発表しただけでなく、自社開発したテクノロジーを間単に分かりやすく、しかも実際に試せるような形で展示し、来場者は未来を垣間見ることができた。
インターネットカー、スマートロジスティクス、スマートミラー分野での Alibaba のテクノロジー開発は、パートナー各社や Alibaba が以前に後援したスタートアップ各社を活用している。昨年11月11日、中国の独身の日には、同社はロボティクス、AI、AR や VR の開発を展示していた。
Alibaba にとって最大の競合 JD(京東)も自社テクノロジーを押し出しており、初となる完全無人式倉庫を10月9日に上海で正式デビューさせている。荷物を運ぶ人や仕分けスタッフ、梱包スタッフは倉庫のどこにも配置されておらず、また、倉庫は屋根のソーラーパネルから給電され、日中に充電し夜間に電力を蓄えている。
Alibabaのインターネットカー — Banma Network Technology(斑馬網絡)
Alibaba のインターネットカーは Banma Network Technology(斑馬網絡)と大いに関係がある。同社は Alibaba グループと SAIC Mortor(上海汽車)のジョイントベンチャーだ。Banma は新たにローンチしたオペレーティングシステム「AliOS」を出展した。モバイルや産業および IoT デバイス向けの同OSは、商品購入や駐車などさまざまな機能を持つ。現在、中国の3つの自動車ブランド MG (名爵)、Roewe(荣威)、MAXUS(上汽大通)が Banma を使用しており、現在25万台を超える自動車が中国で走っている。Dongfeng Peugeot Citroen Automobile Company(神龍汽車)と Alibaba は先週、AliOS を搭載した自動車のリリースを共同発表し、来年には販売開始予定だとした。
Banma を支えるコア技術は AliOS に基づくデータ集中型コンピューティングだ。Banma のナビゲーションマップは GPS と ADAS(高度ドライバー支援システム)を使用しており、ユーザがあまり運転に集中しなくても良いようにしている。ユーザが行ったことのある場所の GPS データを集めてくることで、車はドライバーの傾向や消費パターンを理解し、どんなお店や場所に行きそうかを知ることができる。しかもそれぞれドライバー向けにカスタマイズされるのだ。たとえば、もしユーザが映画のチケットを買ったとすると、車はドライバーに映画館に行きたいか聞いてくれたり、ドライバーがレストランに向かうとクーポンを送ってくれたりする。また、ユーザの駐車傾向に合ったパーキングのデータを提供したりしてくれる。
Banma のマン対マシンインタラクションシステムは音声認識ベースである。
Siri は電話に基づいており、ユーザはメッセージを自分の手でタイプするしかありません。運転中は両手はハンドルにありますが、声を使えばいろんなことができます。
Banma のシニアビジュアルデザイナー Zhang Li 氏は TechNode(動点科技)にそう話した。
バーチャル試着室 — Haomaiyi(好買衣)
いちいち服を着たり脱いだりする必要なく顧客に好きな回数だけ試着してもらえるよう、Alibaba は上海を本拠とするバーチャル試着室のスタートアップ Haomaiyi(好買衣)と戦略提携している。顧客はオフラインショップに行ってスマートミラー上で試着してみたい服をタップすると、試着した見た目の90%が3Dで鏡に映し出される。スマートミラーは現在2つのグローバルファッションブランドの中国国内の実店舗で活用されており、同社の Haoda(好搭)というアプリを使えば数十店舗もの Tmall(天猫)の商品でもオンラインで同じことができる。ユーザの購入データを集めることで、将来的には顧客に AI によるファッション関連のお勧めを提供することを Haomaiyi は狙っている。
スマートコーヒーロボット
スウェーデン・スイスロボティクス大手 ABB とデータをつなぎ、Alibaba の産業用 ET Brain はロボットのデータを知的にリアルタイム分析し、作業効率性を向上する。まずロボットの動作データを収集し、欠陥予測モデルを構築してダウンタイム率を抑制する。次に、ロボットの大規模共同オペレーションを最適化し、製造ラインの効率を改善する。
スマート物流 - Quicktron(快倉)
ロジスティクスの効率性を高めるべく Alibaba は、スマート注文処理システムを提供する上海拠点の Quicktron(快倉)に投資した。同社の AI アルゴリズムに基づいたソリューションは、モバイルロボットやモバイル棚だけでなく、注文タスクを完了させるための補充・製品処理ステーションから成る。このインテリジェントな注文処理システムは、棚の特定、製品のピックアップ、補充、返品、在庫数のチェック機能を組み込んでおり、ロボットやシステムはインテリジェントなマシンラーニングを搭載している。注文を受けるとロボットは製品を保管している棚への最適なルートを選び、オペレーション環境にシームレスに対応して障害物を避けるようになっている。このシステムは、ロボットの独立した意思決定能力や在庫のコンバージョン率、顧客の注文の最適化、倉庫の最適化を向上する役割を果たしている。同社は現在、Alibaba、JD(京東)、vip.com(唯品会)と協業中だ。
VR – Kujiale(酷家楽)
顧客がオンラインでなかなかすぐに買おうとしない製品のカテゴリーの1つは家具だ。なぜなら単にサイズの話だけでなく、自分の家に合っているか分からないからだ。Alibaba のパートナーでソリューションプロバイダの Kujiale(酷家楽)はインテリアデザインV R 企業で、オンラインの 3D インテリアデコレーションレンダリングソフトウェアを提供している。同社のソリューションを利用すると、ユーザは VR ヘッドセットを着けてバーチャルハウス内で簡単に家具をブラウズでき、購入できる。杭州市を本拠とする同社は独自のレンダリング技術「ExaCloud」を持っており、レンダリングが10秒以内と高速なのでユーザはインテリアプランニングを5分で完成させられる。クラウドベースの分散コンピューティングとコンピュータグラフィックスに特化し、ユニークなオンサイトユーザ体験を提供することで、同社は小売店の家具販売高を向上するとしている。
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